今年、ドイツ新聞にChristianのインタビューが掲載された。話の内容は、彼らしいユーモアが感じられる話題もあれば、読み手である私自身が心配してしまう告白もあり、土日祝の3日間ずっと考え続け昨夜はダウン。芸術家の中には、自分自身を追い込み形にする人がおり、又、日本で生まれ育った指揮者の有り方とベルリンで生まれ育った指揮者が同じとはいかず、想像を絶する「人知れず」な日々を送る姿が今回の語りより知ることが出来た。

 

インタビューの質問は長編で、最初は一気にドイツ語翻訳機にかけたが、珍しい日本語に生まれ変わる箇所が幾つもあり、ワーグナー愛好家様でドイツ語が堪能な御方にお骨折り頂き、私自身が極めて重要と思う13の質問と答えを正確な日本語に訳して頂いた。深読みしたり勘違いしたり、頭の中を整理するのに10時間以上はかかったか。

 

クリスティアン・ティーレマン氏は、練りに練ったプログラムと共に音響芸術を御客様に届ける使命感が強い御方。彼の拘りようは、他のジャンルの芸術家にも言えることで、分かる人や分かりたい人の心には特に響くかもしれない。懐かしのドキュメンタリー『神々の黄昏~バイロイト音楽祭の新世紀』にも、「バイロイト音楽祭の最大の特徴は全体の雰囲気だ。意欲がそそられる雰囲気。これぞ本場の空気。望まずにここへ来る人はおらず、望んでも来られない人も多い。参加した人々がより輝ける場所だから」とある。「ワーグナーは客席に共鳴を生じさせたかった。それに貢献出来れば、レパートリーで得られる最高の栄誉となる。エベレストの初登頂に挑んだ人の心境だ。“敬意を持って取り組むべき壮大な課題”、そう言う姿勢の聴衆には私も敬意を払う」と言うのは、バイロイト以外の全ての公演に共通する彼の流儀ではないかと。

 

そう感じずにいられない心境になったのは、思い切った言葉が惜しげもなく織り込まれていた今回のインタビューを読んでのこと。もともとドイツ人が時間厳守と言うのは、ドイツ人の友人や知人を通じて20代の頃から感じていた。でも、彼は特に厳格な人だと思う。成功させる為の習慣は相当なもので、普通の人では成し得ない徹底した儀式と呼べるかもしれない。

 

又、私自身まだまだ彼が指揮する公演に接する数が100回を超えていないので説得力はないけれど、毎回どのように答礼し始まるか、その姿を具に拝見している。何時も深々と、時には眩しい笑顔で、又ある時は10秒くらい瞼を閉じ、その閉ざされた瞼の中で瞬きをせず、どのような気持ちで今日の公演を客席に届けようか、閃きやアイデアやインスピレーション、そして集まった全員と奇跡の時間を経験するのでしょう。

 

音楽家について。知り過ぎて不安にさせられることは過去になかった為、9月のインタビューは一撃を食らった感がある。ただ彼にとって、言いたかったことを口に出来たことは、私の経験上ふと「心身に良きこと」と捉えることが出来る。何とか気持ちが落ち着いた今日、色々と言葉を掛けて下さったTwitterフォロワーの皆様に心から感謝申し上げます。