「癌 ある内科医の日記から」拘束なしで手術に耐え抜く | 無精庵徒然草

無精庵徒然草

無聊をかこつ生活に憧れてるので、タイトルが無聊庵にしたい…けど、当面は従前通り「無精庵徒然草」とします。なんでも日記サイトです。08年、富山に帰郷。富山情報が増える…はず。

 

247444

← 巴 金 著『寒い夜』(立間 祥介 訳 岩波文庫) 「現代中国を代表する作家・巴金(1904-2005).その到達点を示す長編」とか。 「病に冒され,ゆきづまった生活を送る無力なインテリ.その妻と母親の間には嫁姑の対立がある.誰が悪いわけでもない.だが各人にはどうすることもできない自我とこだわりがある.そこから生まれてしまう感情のせめぎ合い.苛烈な人生のドラマが胸を打つ」。

 

 今日は昨夜来終日、エアコンなしで過ごした。窓を開け網戸越しの風が気持ちよく吹き抜けていく。
 夕方近くには、例によって庭仕事。組合仕事で庭仕事がおざなりになっていたツケがいっぱい溜まっている。
 雨の日以外は在宅の日は毎日、庭仕事。雨がほとんど降らないので、文字通り毎日。

 

 この数年、中国文学にも目を配っている。日本はともかく、海外が欧米ばかりでは視野が狭すぎる。
 この2年ほどのうちだと 莫言の『紅い高粱』『続・紅い高粱』、老舎の『駱駝祥子(駱駝の祥子)』、閻 連科の『愉楽』、莫 言著の『豊乳肥臀』など。
 巴 金も中国の有名な現代作家。その代表作『寒い夜』を初めて読む。

 

61t7zpygsql__sx347_bo1204203200_

← E・ガレアーノ (著)『収奪された大地 ラテンアメリカ500年 新版』(,大久保 光夫 (訳) 藤原書店) 「世界史や官製の歴史が無視、あるいは隠蔽してきた無数の事実をちりばめながら、過去五百年の永きに渡ってラテンアメリカが外国によって開発=収奪されてきたさまを、描き出したラテンアメリカ史の古典」。

 

 E・ガレアーノ 著の『収奪された大地 ラテンアメリカ500年 新版』を読み続けている。


 読むほどに腸が煮えくり返る。中南米諸国の人々(先住民に限らない)に対して為した蛮行の凄まじさ。スペインやポルトガルだけじゃない。イギリスもドイツもオランダもアメリカも、多くの資本家連中も。イギリスが産業革命できたのも、中南米の人々を徹底して貪った挙げ句の資金があったから。アメリカなどは今も。そうでないと、あんな繁栄を持続できるはずない。トランプ大統領は、アメリカの本音を、CIAがこっそりやっていたのを、あからさまにやっているだけ。新しい核戦略を平気で打ち出すあのエゴイズム!

 

 銃社会、覇権主義、核兵器の国アメリカ。


 欧米の民主主義とか正義は、中南米やアフリカや中東などの犠牲の上で成り立っている。日本にしても、アメリカの基地。核戦略の先端。そんな日本にロシアが北方領土を返還するわけがない。せめて、朝鮮半島、北方領土を含めた日本列島を非核化する覚悟を持たないと。
 沖縄に米軍基地の大半を押し付けて恥じない日本の国、日本の国民。本土の米軍基地は、旧日本軍の基地がアメリカ軍に接収されたもの。

 

 一方、沖縄にある米軍基地は、銃とブルドーザーで地域住民の土地を収奪したもの。それが狭くなったとか古くなったからと、沖縄の貴重な自然を破壊してまで新たに米軍の基地を作る理不尽。
 アメリカの体質が露骨に示されているのが、沖縄の現実なのだ。

 

243365

← 『病短編小説集』(へミングウェイ /W.S.モームほか 著 石塚 久郎 監訳 平凡社ライブラリー ) 「病は時代や社会、文化を映す鏡。結核、ハンセン病、梅毒、神経衰弱、不眠、鬱、癌、心臓病、皮膚病など9つの病を主題とする14編」。

 

 結核、ハンセン病、梅毒、神経衰弱、不眠、鬱、癌、心臓病、皮膚病。本書所収の作品は19世紀から20世紀初頭。時代相を反映している。戦争で負傷して下肢を壊死とか、破傷風、感染症も多かったろうなー。

 その『病短編小説集』を読了した。


 どの病気も身につまされる思いで読んでいた。

 本書の中で印象に残った作品はいろいろあったが、中でも、「癌」をテーマとする、「癌 ある内科医の日記から」である。ある夫人が乳癌となり、乳房を切除する手術を受ける。
 驚くべきは、拷問のような外科的処置を受ける場面である。麻酔なしの手術が拷問モドキ?
 とんでもない、当時は麻酔がないのは当たり前。なので、腕や足を縛ったり、押さえつけたりして外科手術を施すのは普通のこと。

 

 昔、初めて映画「風と共に去りぬ」を観ての(当時の自分には)衝撃的な場面。それは、南北戦争である兵士が足を負傷し、壊疽の危険があるため、下肢を切断する手術をすることに。
 麻酔もなく、兵士の体を押さえつけ、足を切断する。その悲惨にスカーレットは、その場を逃げ出し、嘔吐する。


 さて、この作品「癌 ある内科医の日記から」で驚くべきは、手術を受ける女性が、残酷な手術を目隠しも手足を縛られることもなく、酒を飲むこともなく、耐え忍ぶ、その胆力を示す姿だ。男尊女卑の世の中にあって、女性がその毅然とした姿勢を示し得る数少ない機会なのだ。
 この小説の圧巻は、小説の末尾での彼女の一言なのだが、そこは読んでの楽しみにしておきたい。