*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.30
◆障害という言葉を使って「理解不可能」と表現する
さて、そんな(精神)医学は先の引用文のなかで、音大生さんのことを「理解不可能」と表現するのに、「思考障害」という言葉を使っていました。
どういうことか。
その引用文中には、応答が途切れ途切れになる音大生さんのことを(精神)医学は「思考障害」と診断すると書いてありましたよね。そしてその「思考障害」なるものについてこう説明していましたね。
考えを纏める力が落ちている状態を思考障害と呼ぶ。思考障害があると、考えがうまく進んでいかず、とぎれとぎれにしか話せなかったり、論理的な道筋に従って話すということが難しい。聞いている者は、とても理解しにくく感じる(岡田尊司『統合失調症』PHP新書、2010年、p.102、ただしゴシック化は引用者による)。
つまり、音大生さんには「思考障害」があって、「考えがうまく進んでいか」ないために、返答が途切れ途切れになっていると(精神)医学は診ていた、とのことでしたね。
そのように「思考障害」と言うときの「障害」という言葉は、「異常」という表現の単なる言い換えにすぎないと以前に確認したの、みなさん、覚えてくれていますか。音大生さんを「思考障害」と診断するというのは、音大生さんの思考を「異常」と診断するということを意味します。
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「障害=異常」はつぎの記事で確認しました。
(注)もっと簡単に確認する回はこちら。
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では、そのように、音大生さんの思考を「異常」と診断するというのはどういうことか。
これもまた以前に確認したことですけど、ひとを正常と判定するというのは、そのひとのことを「理解可能」と認定するということであるいっぽう、ひとを異常と判定するというのは、そのひとのことを「理解不可能」と認定するということであるとのことでした。
- ひとを正常と判定する=そのひとのことを「理解可能」と認定する
- ひとを異常と判定する=そのひとのことを「理解不可能」と認定する
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「異常=理解不可能」は下の記事で確認しました。
(注)もっと簡単に確認する回はこちら。
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したがって、音大生さんの思考を「異常」と診断するというのは、音大生さんの思考を「理解不可能」と認定するということになりますね?
要するに、いま言ったことをまとめて言うと、こうなります。音大生さんを「思考障害」と診断するというのは、音大生さんの思考を「異常」と診断するということ、ひいてはその思考を「理解不可能」と認定するということである、って。
先ほどの引用文のなかで、(精神)医学が音大生さんのことを、「思考障害」という言葉をもちいて「理解不可能」と表現していたことがいま確認できましたよね?
2021年11月9,10日に文章を一部修正しました。
*今回の最初の記事(1/8)はこちら。
*前回の短編(短編NO.29)はこちら。
*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。