「舞台」は観客席に対して通常180度開けている。
両端には「袖」というスポットライトが届かぬ暗がりがあり、本番前の最後のひとときをアーティストたちはその静かな空間で過ごすのだ。
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フィギュアスケートはよくスポーツと芸術の融合だと言われるが、芸術として見ると、選手たちが舞う銀盤はかなり特殊な舞台と言えるだろう。
試合が行われるアリーナの観客席は360度ぐるりと配置され、舞台袖にあたるリンクサイドは開けた空間だ。ともすると、観客たちの掲げるカメラの山を選手たちは頭上に仰ぎ見ることもあり得る。
本番前の最後のひとときは、いきなり銀盤の中央、ということになる。
試合は数千から時には二万人近くの人々が観客席を埋め尽くす。拍手、歓声、カメラのシャッター音、否が応にも高まる期待と興奮。
そのめくるめく渦の中にあって、本番前の最後の瞬間を迎える気持ちはいったいどのようなものだろう。
平昌五輪を制したバラード第1番。冒頭の結弦くんの立ち姿を見てほしい。
余分な力の一切を身体から放出し、にもかかわらず、凛として立つ美しさは風に立つ一輪の花のようである。
禅語に「調身 調息 調心」という言葉がある。
調身(姿勢をととのえ、)
調息(呼吸をととのえれば、)
調心(心もととのう。)
という意味である。
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彼が首を傾げた瞬間、アリーナを覆っていた闇がゆらぎはじめた。
雲間から射しこめる月の光のまぶしさに、静かにこぼれる花の妖しさ・・・。
私は思わず、息を止めていた。
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