私たち日本人は古くから海の幸、山の幸に囲まれて暮らしてきました。
その豊かな食材を日本食として頂いてきたのです。ですから日本食には自然の食材のうまみ成分が摂り入れられているのですね。

日本人が美味しいと感じる味は3つあります。

昆布を代表とするグルタミン酸
鰹節やいりこ等のイノシン酸
干し椎茸のうまみ成分のグアニル酸の3つです。

朝のみそ汁に昆布と鰹節、または昆布といりこだし。煮物にもこの組み合わせが多いかと思います。麺つゆ、そう麺つゆには干し椎茸のお出汁も欠かせません。
このうまみ成分に変化が出てきたのはいつからでしょうか?

およそ100年ほど前に化学者の池田菊苗博士が世界で初めてうまみ成分を発見します。
後の1909年5月、昆布のうまみ成分であるグルタミン酸を原料としたうま味調味料が世に出ました。うま味調味料の歴史は思った以上に古くからあったのです。

うま味調味料の変遷

100年以上の歴史を持つうま味調味料は、後に化学調味料と言われるようになりました。
その頃うまみ成分であるグルタミン酸ナトリウムによるチャイニーズシンドローム(中華料理店症候群)が話題になったり健康に良くないと言われたりで、化学調味料はすっかり悪者扱いされるようになりました。

そこで次に登場したものが、一括表示のできる調味料(アミノ酸等)調味料(核酸等)です。
(一括表示とは複数の添加物をひとまとめに表示することです。まとめて一つの名前で表示されるため、パッと見たところたった1つだけの成分に見えます。しかし中には数種類の成分が含まれています。詳しくはこちらの記事へ↓
一括表示とは!?知らずに健康を損ねる前に知るべきこと

「調味料(アミノ酸等)」のアミノ酸には確かに体に良いイメージがありますが、実際入っているのは複数以上の合成の化学物質です。一括表示なので、一体何がいくつ入れられているかは私たち消費者には全く分かりません。
それでも表示は「調味料(アミノ酸等)」だけで良いのです。

消費者の中に調味料(アミノ酸等)のこの事実を知る人が増えてきたため、次に登場してきたのがたん白加水分解物です。

たん白加水分解物の危険性

調味料(アミノ酸等)の次に登場したたん白加水分解物は食品扱いでありながら、その製造方法から危険性が生じる場合があります。

たんぱく加水分解物は原料の動植物から、酵素を使う(酵素解法)、あるいは塩酸を使って(酸分解法)強制的にうまみ成分のアミノ酸を取り出したものです。抽出したアミノ酸を中和させれることでたんぱく加水分解物は完成します。

 

さて、塩酸を使った製造方法の場合、副産物としてクロロプロパノール類(3-モノクロロプロパン-1,2-ジオール(3-MCPD)、1,3-ジクロロプロパノール(1,3-DCP)など)ができてしまいます。

農林水産省の情報によると副産物のクロロプロパノール類のうち、3-MCPDは健康に悪影響が出る可能性があるとしています。一日の摂取量の最大量は2μg/㎏体重/日とされています。

これは 国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が認めていることです。この設定量は一日に2μg/㎏体重/日以下の摂取であれば、健康に被害が出ることはないであろうという数字ですね。
ということは、これ以上だと健康を害するとFAO/WHO合同食品添加物専門家会議JECFA)が認めている事になります。

3-MCPDによる健康影響
出典 農林水産省 加工して作成

もうひとつの1,3-DCPはラットの実験により発ガン性が認められています。
しかもごくわずかな量であっても遺伝子を傷つける可能性があり、それが引き金となってがんを生じることが否定できないと結論付けています。
一日にこれ以下なら健康に影響が出ないであろうという摂取量も設定されておらず、その点でも不安は残ります。

DCPによる健康影響 クロロプロパノール類
出典 農林水産省 加工して作成

たんぱく加水分解物でも、酵素分解法だとこのような副産物は生成されません。
しかし酵素分解法にすればたん白加水分解物を作るのに時間がかかってしまいます。
時間とコストを考えた場合、上記のような副産物の生まれる塩酸を使ったたん白加水分解物の製造が現実的なのです。



たん白加水分解物が子供の味覚を崩壊させる

化学調味料が調味料(アミノ酸等)に変化し、それが現在はたん白加水分解物となりました。

酸分解法のたん白加水分解物も心配されるところですがもうひとつ心配されるのは、化学的に作り出されたうまみ成分が人の脳に影響を与えるのではないかということです。

特に成長期にある子供や幼児の時期に化学的なうまみ成分を食べれば、味の濃いそれは美味しい物だと脳にインプットされます。すると薄味で仕上げた日本食や天然食材からのお出汁が美味しいと感じなくなります。

人の味覚では薄味より濃い味の方がインパクトが強く、美味しく感じるのです。
濃い味を美味しいと思うようになればなかなか薄味には戻れません。生涯にわたり濃い味の食事だと健康上問題がありますね。

たん白加水分解物は今やあらゆる食品に使われています。スーパーやコンビニで簡単に手に入るスナック菓子にも大量に使われています。
できることならスナック菓子などは口にせず、食事には本物の食材からお出汁をとって調理して貰いたいと思います。

3歳までに食べたものが一生の味覚を決めるのだそうです。
ヨーロッパでは大金持ちは自分の子に一流のシェフの料理を食べさせるのが当たり前だとも聞いたことがあります。

それはもし仮にその子が大きくなった時に大金持ちでなくなっても、本物の味が分かるシェフになれるから(手に職をつけて食べていけるように)だそうです。

この話からも幼い頃の味覚はとても大事だと分かります。
子どもの味覚はお母さんから伝えてあげてくださいね。