★★★

 

「昼のはなし」「夜のはなし」
二部で構成されたミステリー。

主人公は交通事故で両親を亡くした高校生の鈴木茜。
寝たきりの患者を訪ねる「おはなしボランティア」に参加し、そこで29歳の咲子という女性に出逢う。

交通事故の被害者同士、共鳴し合った二人に起きた不思議な現象。

一部ではファンタジーを思わせる展開だが、二部で一気に反転する。

咲子へ抱いていたイメージはどんどん覆され、物語はイヤミスのような空気を醸し出す。

彼女に隠されていた真実と後悔。
誰もが犯す過ちが取り返しのつかない事態を招いてしまう事への恐怖と切なさを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

表紙はコンビニの前で一人ぽつねんと座り込む女の子。
もうこれだけで切ない。

物語は、半年ほど前のある雪の夜に、外で震えている少女に出会った場面から始まる。
少女の名前は眞中ありす(4歳)。

七海未央、青山湊、周東律希、中三の三人は凍死を心配し交番へと送り届け、その行動で後に感謝状を贈られる。

だが彼等の中に引っ掛かっていた事、それが現実だと知った時、ありすの為に何が最善かを考え動き出す。
警察や児相に連絡する事が正しいと思えなくなる社会では意味がない。

見て見ぬふりをしなかった彼等に心打たれ大人がやるべき事を痛感する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

小学校時代からの同級生、歌子・ 厚子・瑞恵。
彼女達はマンション『カーサ・ベラ・ビスタ』の最上階で共に生活する。

68歳の女性3人が暮らすシェアハウスに秘書としてやって来た大学生の速水翔太。
そこに新たに初期の認知症と診断された恒子も加わり悲喜こもごもの日々が始まる。

再就職に苦労したり、ロマンス詐欺に引っ掛かったり、老いらくの恋をしたりと彼女達の毎日は平穏無事とは言い難い。

ギスギスした雰囲気になる時もあれど、歩み寄り助け合う姿が胸を打つ。

翔太と翔太の彼女・美果の存在も良い。

人と人との繋がりに心が温かくなる一冊。