わずか6年で閉館した「鎌倉水族館」とは!?

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こんちわ!

今回は、鎌倉にわずか6年しか存在しなかった「鎌倉水族館」に関する記事になります。

超有名な新江ノ島水族館

鎌倉周辺の水族館といえば、今や全国区で人気となっている”えのすい”こと新江ノ島水族館が知られているとは思います。でもですよ、その新江ノ島水族館からすぐの鎌倉の海岸沿いにも、今から60年ほど前には水族館が存在したんです。

かなり昔の話ですし、6年しか営業していなかったこともあって地元民でもあんまり知られていないんじゃないかと思われるこの水族館、どんな過去があり、何がきっかけですぐに閉業してしまったのか、これは大変気になるわけですよ!

ということで、今回は神奈川県内の図書館へ向かい幾らかの資料は見つけることができたので、その辺をまとめて鎌倉水族館の歴史に迫ってみたいと思います!

本記事のポイント

・鎌倉水族館は、1953年に鎌倉坂ノ下で開業した素人経営の水族館
・最終的には江ノ島水族館にお客をとられ、わずか6年で閉業
・真鶴水族館など、神奈川には知られざる水族館があったようだ

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鎌倉に水族館ってあったの?

鎌倉の人気スポット「鶴岡八幡宮」

今回の舞台は、日本を代表する観光地である鎌倉であり、知の冒険の管理人である私が15年間暮らした街でもあります。

そんな鎌倉と言えば、鶴岡八幡宮や鎌倉大仏に長谷観音、あとは海だったりアジサイだったりの自然もあるわけですが、私のブログで紹介するのはそんなメジャーな場所ではないのは読者の方であればご存じかと思います(;・∀・)

前回の記事も鎌倉が舞台でしてですね、鎌倉駅前にたたずむ近代建築のホテルである『ホテルニューカマクラ』に関して紹介させていただきました(*´▽`*)

んで、今回紹介するのは、今から60年近くも前に閉館した「鎌倉水族館」に関する記事になります。

「えっ、鎌倉に水族館ってあったん?江ノ島水族館のことじゃなくて?」

と思いの方がいるかもしれませんが、鎌倉にもあったそうなんですよ、こじんまりとした知られざる水族館が!

ということで、おそらく多くの鎌倉市民ですがご存じがないと思われる鎌倉水族館の背景を図書館にて資料を漁りまくって、その歴史を発掘してみたいと思います!

パンフレットを図書館で発見!

鎌倉水族館が閉館したのは1959年ということで、今から60年近く前のこと。そのため、あんまり聞き込み調査をしても進展はないだろうな~と思い、今回の記事は図書館で資料を漁りまくって記事を書こうと目論んでおりました。

そこで、鎌倉市立図書館へと足を運び、探せるだけ探してみることにしたわけです。

図書館に行き、自分なりに資料を探してみるとちょこちょこ鎌倉水族館について書かれているものを発見。さらに、図書館の方にも聞いてみると「あ〜そういえば昔あったって聞いたことがありますね、ちょっと待ってくださいね!確かパンフレットがあったはずなので!」と言ってくださり、これは大当たり!

パンフレットが残ってるってのは結構意外だったのですが、図書館の方が見つけて持ってきてくれました!

鎌倉水族館のパンフレット

それがこちらっすわ!

お〜これか、パンフレットを見ると「本当にあったんだ!」と実感がもてますわ。誰かが図書館に寄贈してくれたものなのか、かなり貴重なものだと思いますよ!

鎌倉水族館の料金表

パンフレットには当時の入館料も書かれていました。

これを見ると大人が30円で子供は20円なわけですが、もちろんこれは当時の額なので今とは全然違いますよん。この時代、江ノ電の藤沢〜鎌倉間の運賃が35円(現在は310円)であり、安いラーメンが一杯30円(現在は600円くらい?)でした。

今の時代、水族館だったら小さいところでも1,200円とかそのくらいはしますよね。なのでこの頃でラーメンと同じくらいの値段だったら割と安い方だったのではないでしょうかね〜。

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鎌倉水族館の館内

館内はこんな感じだったようです。なんだかやたらと照明が低いっすね!

鎌倉水族館にいた生き物たち

水族館で見られたお魚たちはこんな感じ。大型水槽があるようなガチな水族館ではなかったため、小さな水槽に泳いでいるような小さめな生き物が中心という感じですね。

とはいえ、いろんな種類の生き物がいたんですな~。

収容人数40名の食堂座敷

パンフレットにはこんな写真も載っておりました!

畳ということもあって、なんか全然水族館っぽくない雰囲気ですが、鎌倉水族館にはこんなお座敷の食堂もあったそうですよ。

しかしこれも時代ですね。今だったらお座敷なんて足腰弱い方からしたらかなりしんどいため、昔からある老舗料亭でも座布団からテーブルにするお店も大変多い今のご時世。でも、60年前はお座敷が普通だったんですね。

まさかの素人が作った水族館

そんなパンフレットも含めると、鎌倉市立図書館では鎌倉水族館のことが書かれている資料を四つほど発見。その中でも、鎌倉水族館の背景に関しては、三浦文化研究会発行の『御浦 第九号』の地域資料に詳しく記載されていました。

鎌倉水族館は日本水産観光株式会社という会社が設立したようで、この会社は横須賀で進駐軍相手の商いをしていた金子家が、その店の利益を主たる資金として鎌倉市の後援もあり1953年4月頃に水族館建設運営のために興した会社とのこと。

そして水族館をどこに作るかという話になった時、坂ノ下の埋立地の一部に市が所有している箇所があり、六ヶ月に及ぶ交渉の末に1,500坪ほどを借用できることになったそうです。

1953年10月18日に開館した

1953年の4月頃に会社が設立すると同時に水族館の建築が始まり、半年ほどの期間で建物と設備を完成させて、1953年10月18日の開館となりました。

そんな鎌倉水族館の大きな特徴としては以下の二点!

鎌倉水族館の特徴
1. 三浦半島の近海魚類を収集して展示
2. 砂で濁らない綺麗な鎌倉の海水を利用
3. 来館した小中学生には、はく製の標本を寄贈
4. 全くの素人による運営

こんな面白い特徴があったようなんですが、まずは2番目に紹介した「鎌倉の海水を利用していた」という点に触れてみることにしましょう!

相模湾の海水を水槽に循環させていた
鎌倉水族館で用いていたのは左の循環式

この水族館はですね、海水をポンプで濾過槽に引き込んで一度ろ過した海水を高い所まで汲み上げた(高架層に送った)あと、その高架層から各水槽に送っていたそうです。海水は循環させていたようで、使用した海水は海に捨てまた新しい海水を引き込むという仕組みです。

こうした海水を循環させる仕組みとしては、上の図のような」「開放式」と「循環式」の二通りがあるようなんですが、鎌倉水族館で取り入れていたのは開放式とのこと。

へぇ~なるほどね~!

あと、この水族館の特徴としては素人が運営していたという点!

市当局や博物館協会や水産研究期間などと連携することもなく、マジで素人が独学で運営したんですからビックリ仰天!

生き物を扱う以上、どのような状態で展示するかなど専門家の意見をもとにしないと水族館を運営するなんて到底難しいとは思うのですが、なんの知識もない素人が「とりあえずやっちまうか!」と思って始めたのか。。まぁ開館した1953年といえば、戦争が終わってこれから戦後復興に向かっていった時代。

とにかくなんでもやってみるという雰囲気が、当時にはあったのかな〜なんてね。

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江ノ島水族館に客をとられた。。

1953年に開館した鎌倉水族館でしたが、1958年度になりその経営は大きな岐路に立つことになります。何でかというと、1954年7月に開館した江ノ島水族館にお客を奪われたんですね。

超有名水族館「新江ノ島水族館」

それまで、鎌倉の定期観光バスコースには鎌倉水族館が入っていたそうなんですが、1958年に入ると鎌倉水族館はコースから外れてしまい、代わりに江ノ島水族館がコースに組まれることになったのです。江ノ島水族館にはイルカショーがあるし、観光地である江の島のそばというだけでなく1957年には江の島マリンランドが開設されたことが大きな理由だったとのこと。

これにより、鎌倉水族館の入館者数は目に見えて減ってしまい、具体的な対策が打てぬまま、1959年10月に閉館することになったのです。

閉館後、水族館だった建物はそのまま残されてサーフボード製造販売等の若者に利用されていたようですが、1970年頃に火事によって消失してしまったようです。

ということで、鎌倉水族館の概要をまとめると以下になる感じですかね!

鎌倉水族館 概要
開館:1953(昭和28)年10月18日
閉館:1959(昭和34)年月日
場所:神奈川県鎌倉市坂ノ下33−6付近(現在の鎌倉パークホテル)
開館時間:8:00〜18:00
運営母体:日本水産観光株式会社
設立背景:鎌倉は観光地であるものの、科学知識を養う施設がないため、その分野を担うべく水産分野と観光を結びつけたかった。
閉館理由:定期観光バスコースから外されてしまい入館者数が激減したため。

鎌倉水族館はどこにあったのか?

続いては、鎌倉水族館がどこにあったのかという点。鎌倉水族館というだけあって鎌倉市にはあったわけですが、その具体的な場所がどこなのかというのは気になりますよね??

もしかしたら、水族館だった建物が別の何かの施設になっていたらなおさら面白いわけですがそれは期待薄ですけどね( ;∀;)

鎌倉亜水族館があった場所

先ほど紹介した鎌倉水族館のパンフレットには、あった場所が描かれたデフォルメマップが書かれておりました。この地図によると、相模湾沿いの稲村ヶ崎にあったようですね。住所で言うと「鎌倉市坂ノ下」と書かれていますが、坂ノ下と言われるとあんまピンとこない・・。

稲村ヶ崎だったら、サザンオールスターズの歌詞にも出てきますからこっちの方が馴染みありません?

サザンの『君こそスターだ』の歌詞にも「稲村ヶ崎は今日も雨・・」と出てきますし。

とはいえ、デフォルメマップだと厳密な場所がわからないっすよね。。

んで、どうやって調べるかですが、まず思いつくのが住宅地図。水族館が存在していたのが1953年〜1959年ということで、そのいずれかのものがないと地図には記載されていないとは思いますが、鎌倉市図書館の蔵書を調べてみると一番古いもので1959(昭和34)年のものが存在するとのこと。

んで、実際にその地図を見てみると、、、

鎌倉市明細地図(1959年)

あったあった!!

「水族館」としか書いてないですが、パンフレットのデフォルメマップの場所に合致するので、ここで間違いないでしょう。

鎌倉水族館があった場所

Googleマップで示すと、ココになりますね。金曜や土曜の夜になると、今でも夜な夜な暴走族が爆音を鳴らす光景も見られる国道134号線沿いにあり、鎌倉と江ノ島の間くらいって言ったほうが多くの方にはピンとくるでしょうか。

そんで、どんな記事でも必ず現地に足を運ぶということをモットーにしている知の冒険ということで、一応、鎌倉水族館があった鎌倉市坂ノ下へと行ってみることにもしました。

ホテルが建っていた

それがココ!

ここか~。今から60年ほど前、こんな場所に水族館があったんですね。今では1975年に開業した鎌倉パークホテルがあり、水族館があったなんて痕跡は全くもって皆無。痕跡はなくても、資料などを漁って調べることで歴史を辿ることはできるんですね。

いつもなら、周辺にいる方に聞き込みをするのが日課に放っていますが、今回はこの場所に水族館があった時代のことを想い、そっと後にしたのでした。

消えて行った数々の水族館・・

という感じで今から60年前にあった水族館のお話を書いたわけですが、今回の鎌倉水族館だけでなく、相模湾沿いには今までにもいろんな場所に水族館があったそうなんです。

その一例が真鶴水族館。

真鶴水族館のパンフレット

真鶴半島の先端あたりに位置する亀ヶ崎という場所は、入り口に竜宮城をイメージした真鶴水族館がありました。

真鶴水族館のパンフレット

屋外の天然水族館には、イルカ、鯛、ヒラメ、ブリなど数々の魚が遊泳しており、さらには釣り堀、グリル、売店、休憩所などあらゆる設備が整っていたそうです。

なかなか斬新な造りをした水族館ですよね!

真鶴半島の崖に囲まれた海岸沿いに作られたこちらの水族館。入り口には竜宮城をイメージして作られた建物があり、

ただこの水族館、いつ誕生していつ閉館してしまったのかはよくわかんないんですよね。。探しても資料が見つけられずでして。。とはいえ、地元住民の漁師のおっちゃんが言うには、海岸沿いということで度々の台風被害を受けたことが原因で復旧に目途が立たなくなり閉業してしまったとのこと。

確かに台風の時は雨風だけじゃなくて、波も荒れまくりそうだしな。。真鶴半島という風光明媚な場所に作ったものの、自然災害にはなす術(すべ)がなかったんですかね。。

江ノ電も作ろうとしたらしい

あとは、江ノ電も水族館を作ろうとした経緯があったようです。吉田克彦著の『湘南讃歌』によると、この辺の経緯が書かれていたのでちょっと抜粋してみますね!

昭和26年8月16日付けで江ノ電から神奈川県知事宛に提出されている「江ノ島水族館設置許可願」によりますと「神奈川県の代表的な観光地江ノ島は、本年、平和塔(旧展望灯台)の竣功と共に画期的な活況を呈し、観光客も急増し、今後ますます発展の可能性を約束されるものとして御同慶退いたりと存じます。・・・」

吉田克彦著『湘南讃歌』

結局この計画は実現することはなかったわけですが、この計画からわずか三年後の1954年に、日活の手によって近代的な江ノ島水族館が誕生することになります。今の新江ノ島水族館である”えのすい”ですね。

この辺に水族館があった?

とはいえ、江ノ島水族館に関しても突っ込んで調べてみると面白い歴史がありましてですね。これまた吉田克彦著の『湘南讃歌』によると「かつては江ノ島の参道辺りに明治35年に『江ノ島水族館』と称する水族館が開館しており、大正14年には、同じく『江ノ島水族館』の名称で江の島の北緑地あたりに施設が設けられていた」とのこと。

これらの時代の江ノ島水族館に関して詳しく書かれた文献は特に見つかっていないものの、どんな経緯があって誕生したかなどは結構気になるんですよね〜。

という感じで、相模湾沿いの海岸に関する水族館の歴史ってのも、調べてみると結構面白い歴史があったりするわけです。江ノ島水族館とか油壺マリンパークに関しては、またいつか記事にて歴史をまとめてみたいな〜なんて考えておりますよん( ̄▽ ̄)

おわりに

以上ですかね。

今回は、たまたま資料を漁って発見した鎌倉水族館に関してまとめてみましたが、多分まだまだ知られざる面白い歴史っていろんな場所に眠ってるんだろうな〜と思いますよ。

そして水族館ってのも調べるとなかなか面白いものですね。今回は相模湾沿いに関してさらっと書きましたが、伊豆半島とか千葉県の海岸沿いなど、いろんな場所で計画頓挫やしれっと閉館していった水族館はたくさんあったんでしょうね。

これからも、今回のように資料が見つかれば発掘していこうと思っております( ̄▽ ̄)

では、今回はこのくらいで!

参考文献

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詳細・地図

住所 神奈川県鎌倉市坂ノ下33−6
アクセス 極楽寺駅から徒歩12分ほど

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