起きている時間が長いほど脳は疲れる

投稿者: | 2019年11月21日

 

脳は疲れると過敏になる

朝は頭がスッキリしているけど、夜は頭の働きが鈍い感じがする。

そんな方が多いのではないでしょうか。

夜型の方は、その逆だったりするかもしれません。

また、徹夜をすると、翌日はボーッとしていてミスが多くなる。

こういった経験はどなたにもあるかと思います。

 
これ、健常者の感覚だけでなく、臨床的な傾向もあるようです。

起きて時間が経つほど、けいれんが起きやすいとか、幻覚におそわれやすくなるとか。

 
これらは、

 起きてからの時間が長いほど脳の状態が変わる

のが原因だと考えられています。

 
動物実験では、起きている時間が長いほど、脳の興奮性が高くなることが分かっていました。

興奮性が高いというのは、脳が同じように刺激を受けても、過敏に反応するということです。

疲れた方がより敏感になるというのは意外かもしれませんね。

 
例えば、徹夜明けは大きな音に異様に驚いてビクビクしてしまう、なんてことございませんか?

私(武永)は、徹夜明けで風船の割れる音に普段の何倍も驚いた体験があります。

ストレス耐性が低くなっているのでしょう。

しかし、この動物実験で見られた、脳の興奮性の高まりというか、過敏傾向がヒトでも同じなのかどうかがは分かっていませんでした。

 

疲れた脳の反応性を調べる実験

2013年、このことを調べたイタリアの研究グループが論文を発表しています。

脳の興奮性を調べるため、脳を経頭蓋磁気刺激法で刺激して、脳の反応を調べました。

以前のエントリーでもご紹介した方法ですね。

 
刺激する脳の部位はおでこの上辺りで、前頭葉にある補足運動野。

補足運動野(脳科学辞典)

 
先行研究で、断眠(徹夜)の効果が最も強く顕著に現れることがわかっています。

 
脳の反応は、刺激部位を中心として少し広い領域にわたって脳波(EEG)で計測します。

被験者は6名。

実験スケジュールは以下の通りで、初日に時間を置いて3回、その夜は徹夜して、次の日に1回、続いて、睡眠をとった次の日に1回の、計5回です。

 1日目 午前9時
 1日目 午後3時
 1日目 午後9時
 (徹夜)
 2日目 午後3時
 (8時間睡眠)
 3日目 午後3時

 
実験の結果はどうだったでしょうか。

 午前9時 < 午後3時 < 午後9時 < 徹夜明けの午後3時

といった具合に、起きている時間が長いほど、脳の興奮性が高まっていたのです。

このことから、起きている時間が長いほど、脳が疲れていると考えられます。

 

疲れた脳はシータ波が強くなる

実験では、脳波の一つ、シータ波も分析されています。

脳波(Wikipedia)

脳波で一番有名なのは、周波数帯が10Hzのアルファ波ですが、それより少しゆっくりした波です。

シータ波は4~7Hzの周波数帯で、入眠時にうとうとした状態で見られることが知られています。

先行研究で、脳が疲れるとシータ波が強くなるという論文もあります。

 
イタリアの研究グループによる実験では、磁気刺激の場合ほど顕著ではなかったものの、徹夜の翌日にはシータ波が増えていました。

脳の疲労は、脳波のシータ波よりも、脳の興奮性の方が顕著に現れるようです。

 

睡眠で脳の疲れをリセット

睡眠の効果はどうだったでしょうか?

徹夜の次の夜に8時間の睡眠をとると、脳の興奮性もシータ波も1日目の状態に戻ったとのこと。

睡眠で脳の疲れが一気にリセットされたのですね。

 
時間が経つと脳も疲れます。

 ・ 大事な仕事は午前中から午後の早い時間帯にするようにする

 ・ 比較的簡単な仕事は夕方以降に回す

そんな工夫をされるとよいでしょう。

それと、大事な案件がある前日は、睡眠をしっかりとって高いパフォーマンスで臨むようにしたいですね。

 
【原論文】

Huber R, et al (2013)
“Human cortical excitability increases with time awake”
Cerebral Cortex 23: 332-338. doi: 10.1093/cercor/bhs014.

 
脳科学で生活にうるおいを!

では、また!

 

(了)

 

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