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自己免疫性膵炎の原因究明

2018-08-19 10:41:30 | 健康・医療
国が指定している難病の一つである「自己免疫性膵炎」の原因の一端が分かったと、京都大学の研究グループが発表しました。

患者本人の抗体が、膵臓の細胞周辺にある特定のタンパク質を攻撃していることを突き止め、新しい診断法や治療法の開発につながる成果と期待されています。

自己免疫性膵炎の患者は国内で推定5千~1万人とされており、患者本人の免疫システムの異常で膵臓が腫れ、肝硬変や糖尿病を引き起こすほか、画像診断で似た症状の膵臓ガンと誤診され手術されるケースがあるようです。

2014年難病指定されましたが、発症の仕組みは不明でした。この病気は胆汁が十二指腸に流れにくくなり、閉塞性の黄疸を生じることが多いのですが、腹痛は感じないか軽いことが多いためなかなか診断がつかないようです。糖尿病の発症や悪化がきっかけとなり診断されることもあり、まれに急性膵炎を伴うことがあるとされています。

研究グループは、患者から抽出した抗体を投与したマウスで、ヒトと同様の膵炎が発症することを確認しました。抗体が膵臓内の細胞の周辺組織で接着剤的な役割を持つタンパク質「ラミニン511」を攻撃することを突き止めました。このタンパク質を認識する抗体を人工的に作らせたマウスも膵炎を発症しました。

ラミニンは、細胞外マトリックスの基底膜を構成する巨大なタンパク質で、多細胞体制や組織構築とその維持、細胞接着、細胞移動、細胞増殖を促進し、ガン細胞とも関係が深いとされています。

この基底膜の構成分子は、コラーゲン、プロテオグリカンとラミニンからできていますが、組織中の含有量が少なく形態学的手法ではなかなか存在の確認は難しいものでした。

ラミニンが細胞接着分子であることから、この細部表面のレセプターの探索が行われ、インテグリンという部分がラミニンレセプターであることが分かっています。このあたりは非常に面白いメカニズムがあるのですが、ここでは省略します。

なお現在ではこのラミニンは色々な種類の幹細胞(iPS細胞、ES細胞)などの動物細胞培養の基幹剤として使用されているようです。

研究グループはこの膵炎の患者51人の抗体を調べたところ、26人がラミニン511の抗体を持っており、患者自身の抗体がこのタンパク質を攻撃することが、発症の原因の一つだと結論付けました。

研究グループは、この抗体の有無が新しい診断基準になりうるし、現在はステロイド治療しかないが、副作用の少ない治療法の開発にもつながると期待しています。

この抗体を持った患者が約半数というのは、やや少ない気もしますがこういった抗体検査で患者の診断がつけば、簡単に判定できすぐに適切な治療ができるような気がします。

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