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非常に「辛い」成分が鎮痛薬に

2018-12-13 10:26:01 | 
世界一辛い唐辛子よりも10,000倍も辛いとされる植物の成分が、医療用の鎮痛剤として注目されています。

関節痛の患者に注射すると痛みを伝える神経端末が破壊され、痛みを感じなくなるようです。動物実験でも効果が見えてきたこの手法は、痛みに苦しむ末期がんの患者への応用だけでなく、蔓延するモルヒネなどのオピオイド中毒から救う新たな可能性を秘めています。

モロッコに分布するサボテンに似たある植物は非常に辛く、この植物の活性成分であるレシニフェラトキシン(RTX)は、辛さの指標である「スコヴィル値」で160億もの値を示します。

これは世界一辛い唐辛子として知られるキャロライナ・リーバーの10,000倍に相当します。とても食べることはできませんが、このRTXが鎮痛剤として注目されています。

ヒトの体には様々な種類の感覚ニューロンがあり、様々な刺激に反応しています。RTXはこうしたニューロンのうち、痛覚神経末端に特化した分子量の大きなイオンチャンネル「TRPV1」に結合します。

RTXは辛み成分であるカプサイシンに似た物質ですが、500~1000倍の活性を持ち、TRPV1に結合すると、神経細胞のイオンチャンネルをこじ開け、大量のカルシウムを流入させます。

これは細胞にとって有害であり、痛覚神経末端の不活性化が生じます。RTXの特異性は高く、他の感覚ニューロンには影響がないため、触覚や歩行行動を損なうことなく、痛みだけを選択的に除去できます。

動物の実験では、痛みで足を引きずっていた犬たちが、元気に走り回るようになり、この効果は中央値で5か月続きました。こういった局所的な痛みだけではなく全身性の痛みに対しても研究が進んでおり、非常に強い痛みを発症する骨ガン患者を対象に、NIHはRTXの臨床試験を実施しています。

この方法は脊髄麻酔を注射する場合と同じで、脊柱の周囲の液体に注入する処置が取られています。この場合は中枢神経に近いため、鎮痛作用は全身に働くようです。現在は他のすべての選択肢を試して、効果がなかった痛みを抱える患者にこの方法を適用しているようです。

現在末期ガンの痛みには、モルヒネなどのオピオイドが使用されていますが、これには強い鎮静作用や呼吸障害といった副作用と依存性(麻薬)があります。RTXは特異性が高くこういった副作用も出ない(ただし熱さを感じなくなるようです)というメリットがあり、使用量などの難しさはあるようですが、モルヒネの代わりとなることを期待されています。

私はこの物質のことは全く知りませんでしたが、まだまだ自然界にはヒトの役に立つ化合物が存在しているようです。

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