幼馴染たちと「パルチザン」というパーティを組み、トップクラスの冒険者として活躍していた主人公。自分が作り、周囲から一目置かれるまでに育て上げたパーティなのに、「幼馴染が勇者に選定される見込みだから」と国から送り込まれた魔術士にめちゃくちゃにかき回された挙句、パーティからも追放されてしまった。装備はパーティの資産だからと接収され、冒険者ランクすら最低に落とされた主人公は、武器屋のお徳用クズ武器の中からとりあえずの武器としてバールを選び、拠点にしていた街を出て辺境都市でやり直すことを決める。そんな中、かつて同じパーティに居た神官と再会。彼女は聖女に選出され、主人公と一緒に冒険するつもりで”パルチザン”への招聘を受けてきたのだが、主人公が追放されたことを知るとパーティへの招聘を蹴って主人公に付いてくる。辺境都市で新人冒険者として再登録し、パーティを組んだ二人だったが、ある日強敵に遭遇したのをきっかけに主人公の武器のバールが変貌。主人公は凶戦士化してしまって…

というわけで、追放されたら変な武器を手に入れちゃった話。追放した側が思惑外れて落ちぶれていくのはお約束です。

この街の冒険者ギルド、貴族の圧力に負けまくりですね。ダメじゃん!”国選”で”貴族”だからというだけの理由で威張り散らす魔術士の方も大概ですが、彼はまぁ…読者のヘイトを稼ぐのがお仕事なのでこんなもんでしょう。ソレをおだてるなり煙に巻くなりして無害化するのがギルドの腕の見せ所だろうに、完全に片棒担いでるんじゃなぁ…。
これ、冒険者が見切りをつけて他の都市に流れちゃう、とかの騒ぎに発展する契機として使われるなら物語での存在感も示せたものを、単発のネタで終わっちゃってますからね。ちょっともったいない。仮にも主人公がそれまで拠点にしてたんだから力量は熟知しているはずだし、主人公の存在感とか冒険者からの慕われぶりを示すためにもギルドネタでもう一波乱あっても良かった気がします。

幼馴染の”勇者”(と言っても実はまだ候補の段階)は分かりやすいクズですね。ヒロインに横恋慕してる立場なのに、本人からどれだけ拒否されても否定されても「自分たちは愛し合う恋人同士」と信じて疑っていなくて、気持ち悪いやら鬱陶しいやらで散々でした。これ洗脳とか催眠とかにかかってるわけじゃなく素での言動ですからね…。主人公は彼のどこが良くて”親友”とか思ってたんでしょうね?主人公の節穴ぶりにもびっくりだわ。

中盤で「バール(武器)に異変が!バール(主人公)にも異変が!」となった時には、いよいよここから物語が動き始めるな!とちょっと期待したんですが…、ヒロインとのいちゃらぶルートに突入するきっかけにしか使われなくて正直微妙。せっかくの設定の扱い、それで良いの??


うーん、舞台装置的には面白そうなのに、内容が今ひとつ設定を活かしきれていないというか…。
「よくある追放ざまぁ」程度に収まりきってしまってますね。もっとバールの謎に焦点が当たっても良かったと思います。タイトルからいってもこの作品のキモはバールのはずだし、そこが他作品との差別化を示す一番の特徴のはずなのに、なんか扱いが軽かったというか、サラッと流し過ぎでした。
後書きによればwebではまだまだ続いているようだし、この先で示すための色々な謎やら解明編やらを残しておくために今回はサワリ程度で終わらせたのかもしれませんが…そのへんが開示されるまで付き合いたいとは思わなかったかな。



同じ作者の別作品 → 落ちこぼれ〔☆1〕魔法使いは、今日も無意識にチートを使う
         → ヴァイケン・オルドの錬金研究室



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