ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

文在寅の戦略とマルクス

2018-09-23 18:01:33 | 日記
首脳会談に向け、文在寅韓国大統領は意欲的に平壌に赴いた。この北朝鮮訪問
に、サムスン電子や現代自動車の副会長など、韓国財界のトップクラスが何人
も同行したことが、メディアの注目を集めている。

この会談に当たって、文在寅大統領がどれだけマルクスの思想を意識していた
のかは判らない。だが今回の彼の行動は、「下部構造が上部構造を規定する」
というマルクスの思想に基づいたものだったように、私には思える。

北朝鮮の上部構造ーー好戦的な思想体質ーーを変えるためには、この国の下部
構造ーー経済的基盤ーーを変える必要がある。経済的基盤が改善すれば、北朝
鮮はおのずとその好戦的思想体質を変え、アメリカの非核化要求にも応じるに
違いない。

文在寅大統領が韓国財界のトップを何人も同行したのは、北朝鮮の下部構造を
変える、その地ならしのためだったと私は読んでいる。韓国財界人との交流を
北朝鮮側が望んだのだとすれば、北朝鮮の指導者も、己の下部構造の改変を望
んでいたことになる。

今回の首脳会談がこうした企図の実現に向けた具体的な第一歩だったとした
ら、これは経済制裁の緩和や解除などと比べれば、はるかに積極的で実質的
な、重要な意味を持つ会談だったと言えるだろう。

ところが、そうは問屋が卸さなかった。南北間の経済協力の、その実施計画に
対して、アメリカがさっそく強い反発を示したのである。南北間の経済協力に
待ったをかけたアメリカの、その懸念も解らなくはない。「衣食足りて礼節を
知る」という言葉があるが、南北の経済協力によって、北の経済が回復し、北
の国民が「衣食が足り」るようになったとき、北の指導者が国民と同様に「礼
節を知る」ようになるかどうかは判らない。

文在寅大統領が希望的に構想するように、北の指導者がこれによって好戦的思
想体質を改め、核を放棄する可能性もあるが、反米的思想体質を維持したまま、
核を放棄しない可能性もある。アメリカは、北朝鮮が経済的復興を遂げ、「第
二の中国」になることを恐れているのだ。

このアメリカの懸念に、憚りながら私も同感を禁じ得ない。今、北朝鮮は、国
民の大半が「衣食が足りない」困窮状態にあるものの、一部の支配層は裕福な
「衣食が足りている」状態にある。この国の経済が回復すれば、たしかに国民
は「衣食が足りる」ようになり、「礼節を知る」ようになるだろう。

だがこの変化は、あくまでも一般国民に限られている。一部の支配層は、相変
わらず「衣食が足りた」裕福な状態のままであり、彼らの下部構造になんら変
化はない。したがって彼らは、上部構造を変えずに、相変わらず好戦的な反米
思想を持ち続けるかも知れないのである。

文在寅大統領がどう動こうと、米朝鮮層の火種は消えない。この対岸の火事の
火の粉は、きっと我が国にも降りかかるだろう。へそ曲がりの爺には、そんな
ふうに思えて仕方がないのである。
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