世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

米中貿易戦争はWTO体制正常化のための戦いである

2019年05月12日 | 政治
米国は、米中交渉継続中にも拘わらず追加関税を発動しましたが、中国は交渉続行する意志を捨てていません。交渉決裂となれば、北鮮のハノイ首脳会談後のように中国がジリ貧に陥ることを十分理解しているからです。

端的に言えば、現段階では中国は米国に覇権を迫る実力は無く、覇権に挑む体制作りの最中なのです。ですから、もし決裂して体制造りの作業に支障が出ることだけは避けたいのです。国営企業への補助金廃止への抵抗に、それが読み取れます。

覇権に挑めるだけの実力を着けるには、中国は先進国の仲間入りが出来なければなりません。中国は途上国から先進国になるために越えなければならないハードルを未だ越えていません。世界第二位の経済大国になったと豪語しても、未だ中進国レベルなのです。

途上国が低賃金で工業化に成功すると、安い労働力の供給が鈍り出し、賃金上昇が起きて、輸出競争力が弱まり、輸出で外貨が稼げなくなります。そうなるとGDPの成長率が低迷し、一人当たりGDPが一万ドルの水準を超えられず、先進国になれないのです。それが中進国の罠と言われる現象で、いま中国はその罠に嵌まり掛かっているところです。

しかし中国は、この罠から脱出しようとして、知財盗用、輸出補助金、外資の国内市場参入規制、為替操作など、なりふり構わずWTOとIMFの規約に違反する行為を乱発しています。WTOやIMFから特典をを与えられて現在の中進国の水準に達したので、最早特典を受ける資格は無くなったのですが、特典を与え続けないのなら国際規約を破るという暴挙に出ているのです。

トランプ政権がアメリカファーストと言って貿易赤字解消のため制裁関税を中国に課したと言ったものですから、中国はその言葉尻を捉えて、米国は保護主義であり、中国は自由貿易主義だと国際会議で堂々と反論する始末です。一時、西欧諸国の中には、中国に同調する風潮も出るなど混乱もありましたが、ことの本質は、中国の不正を米国が正そうとしている、と言うのが米中貿易戦争なのです。

これを恰も米中の覇権戦争のように囃し立てるのは行き過ぎです。中国にそれ程の実力はなく、小手先の不正行為如きで世界の覇権が握れると思うほど愚かなことはありません。但し、不正を放置すれば戦後築かれた世界の経済体制は崩れていきます。それが覇権の変動に繋がりかねませんから、ここは中国の行動を厳重に食い止めなければなりません。

来る6月の国際会議G20で安倍首相は壊れ掛かったWTOの体制を正常化するため改革しようと提案しますが、これこそが米中貿易戦争を終わらせる決め手になります。
(以上)
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