先日の10月14日(日)は、NHK交響楽団のコンサートに出かけました。
演目は下のポスターのAプログラムです。
大好きなブルックナーの9番の演奏をヘルベルト・ブロムシュテットの指揮で聞くことができ、至福のひとときを過ごしました。
上のプログラムには書いてありませんが、コンサートマスターは、ウィーンフィルの元コンサートマスター、ライナー・キュッヒルです。
マエストロ、ブロムシュテットは今年91歳となったクラシック音楽界の巨匠です。
ブルックナーの9番は、老齢となった指揮者ではゆったりとしたテンポでの演奏になることが多いので、ブロムシュテットもそういう演奏をされるのではないかと思っておりました。
しかし演奏が始まると、決して遅くはなく、むしろ速いテンポであるのに、驚きました。おっ速いっ!と。
1995年のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団との録音よりも速い気がしました。
1楽章で最初にオーケストラがfffに向かって突き進んでいくところなど、どんどん加速していって演奏が追い付かずに破綻するのではないかと心配になりそうなくらいの激しい演奏でした。
3楽章の天国的とも表される最後の音が消え入るまで、身体の中からじわじわジーンとわき上がってくるような感動を何度も味わいました。このままこの演奏がずっと終わらないでほしいと。
本当に素晴らしい演奏でした。きっと名演奏として語り継がれるものになるのではないでしょうか。
エピソードをひとつ。
今回の演奏では、フライング拍手が起きてしまいました。
終楽章の最後の消え入るような音が、私のいる2階席からは聞こえなくなって1秒くらいしたところでしょうか、1階席から一人の拍手が勢いよく聞こえ、つられるようにして数人の拍手がパラパラと聞こえてきたのです。
ところが、指揮者のブロムシュテットは静止したまま、指揮棒もまだ上げられたままでした。
ビオラ奏者も弓を弦に触れた状態で構えを続けているように見えました。
拍手はすぐに止みました。
誰かが注意したのか、それとも様子が変だと感じ取ったからなのかは分かりません。
多分心臓が縮み上がるような思いをされていたのではないかとちょっと気の毒に思います。
そのあとさらに3秒くらい間があったでしょうか(長く感じました)、指揮棒が下がり、これに伴い演奏者も緊張を解きました。
でも今回は誰も拍手をしません。
そのときまだ演奏者側を向いていたブロムシュテットは、腰の高さに降ろした左手を身体は後ろ向きのまま観客席側に伸ばし、掌を回してひらひらとさせました。
ここですよ、という合図でした(^O^)
観客はほっとして、その何とも茶目っ気のあるしぐさに一瞬くすぐられたような笑いが漏れると、そのあと続いて嵐のような拍手が鳴り響きました。
演奏が終わった直後にまず観客の笑いが起こったブルックナーの演奏ってこれまで果たしてあったでしょうか?
練習では厳しい指導者として知られるブロムシュテットの優しさとユーモアを感じさせる瞬間でした。
開演前、場内に正確には覚えていないのですが「最後の余韻までお楽しみ下さい」というようなフライング拍手の注意を促すアナウンスが流れました。
しかし、ブルックナーの9番のような曲の場合は、やはりはっきりと、「最後の一音が鳴り終わりましても、指揮者の指揮棒が下りるまでは拍手・歓声はお控え下さい。」などと言った方がよいのではないかと思いました。
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