ツナグ
1,620円
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あなたには死んでしまった人でどうしてももう一度会いたい人はいますか?
私は今のところいません。
「ツナグ」というのは「使者」と書いて「ツナグ」つまり「死者と生者を繋ぐ人」を指します。
そんな人がいたら頼みたい人があなたにはいますか?
この本には4人のそんな人たちが出てきます。
※ネタバレ注意
第1章は「アイドルの心得」。
会いたがっている人は何のとりえもないつまらないOLさん。
会いたい人はその人が崇めるアイドルとも言える人。
死者は死んでから一度だけ生者と合う事が出来ます。
つまり死んでから1度しか生者と会うチャンスは無いわけです。
逆に生者も一度しか死者と会うチャンスはありません。
一度死者と会ってしまうと他の死者には会えなくなります。
そんなルールなんだとか。
それで人気絶頂で突然死したアイドルは何故か何のとりえもないOLと会う事を決めちゃうんです。
不思議に思ってたら、芸能界では「ツナグ」の話は有名だけど誰も死後4か月経っても会いに来てくれなかった事と、それから話を聞く限り、そのアイドルは頭の切れる方で、そのOLが死のうとしているのを見抜いて「死ぬな」という音を伝えるために会ったとか。
実際、会った後のOLは明るくなっていた様に感じます。
第2章、「長男の心得」。
商売を継いだ長男は何でもそつなくこなす弟が憎らしいのです。
自分は憎まれ口ばっかり言ってしまう。
長男の太一もなんか頼りないのに姪っ子や甥っ子は立派に見える。
そんな時、「ツナグ」で祖母に会います。
理由は「口実」に過ぎず、本当はお母さんに会いたかったんですね。
実は甘えん坊さんなのかも。
自分と弟とどっちが愛されていたかなんて気にしちゃって。
母親が「ツナグ」を使った理由を知った時、微笑ましく思いました。
そして頼りない長男なんかじゃない、立派な長男じゃないか、とも思いました。
太一は立派にお店を引き継いでくれるんだろうなあ、と思っています。
こちらもまた微笑ましいお話でした。
第3章、「親友の心得」。
これは後味が悪いお話でした。
何で正直に話して謝らなかったのかなあ?
そうしたら2人とも清々しい気持ちで別れられたのに、って思わずにはいられない内容でした。
それにしても「ツナグ」が普通の高校に通っている高校生とはね。
びっくりしました。
依頼人が同級生なのもびっくり。
悲しい事故。
殺意は確かにあったかもしれないけれど、「親友の心得」って何だろう?
本当の事を話す事じゃないのかな?
この話は好きになれませんでした。
だって後悔が多すぎる!!
これから高校生の女の子が背負っていくには重すぎるよ。
ちゃんと正直に話せたらよかったのに、そこまで親友ではなかった、って事になっちゃうのかなぁ?
第4章、「待ち人の心得」。
失踪してしまった婚約者を7年ずっと待っている男性。
もう亡くなってしまったかもしれない、と「ツナグ」に依頼するとやっぱりその人は亡くなっていて…。
時間になっても足が重くて会いに行けない。
恋人が死んだのを認めるのが怖いのかな?
それはそうかもしれないな。
でも生きててどこかで元気にしてるのも婚約者として待っていた7年は何だったのか?と悲しくならないか?
そして彼は婚約者にあった。
彼女は偽名で、本当の名前を言って、本当の事を言って、謝っていた。
それで全てが解決するわけじゃないけれど、依頼人は救われたんじゃないかと思う。
会って良かったね、と思う。
彼女の方は待っていてもらえた方が嬉しかったかもしれないけれど、「自分を忘れても先に進んでほしいから」という苦渋の決断をして会う事を決めた。
死者にとって会う事は辛い事でもあったかもしれないけれど、ずっと本当の事が言えなかった事よりはすっきり出来て良かったのではないかな、とも勝手に思ってみたりして。
難しい事だけれども、待ち人はもう待たなくて済むようになった訳で、先にすすめるって事だ。
これはきっといい事なんだ。
という事でこの話も私は嫌いじゃない。
でも切ないな、って思う。
最後、第5章は「使者の心得」。
高校生の「アユム」がどうやって「使者」になって行ったかを綴った章。
これは第1~4章とリンクしている。
なんで会う場所が病院だったのか、とか。
衝撃的だったのは彼の両親の「死」についてだった。
祖母の後悔も前向きなアユムに救われたと思う。
以上がこの本を読んでみての感想。
久し振りにミステリーじゃない本で面白いな、と思った本かな。
この「辻村深月」という人は今やベストセラー作家だけれど、その、一番最初の作品を読んでみました。
また違う作品も読んでみたい、と思える作家さんでした。
お終い。
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