前回の続き⇒
年末年始は事業戦略について考える時間を持てる方が増えるためか、海外法人を手放すことを検討される方も増える時期です。
海外法人の閉鎖は法人設立の何倍も手間暇と費用がかかりますので、撤退コストを少しでも抑えるために、あるいはこれまでに固定費を回収するために、法人の転売を検討したいという相談もよく受けます。
このとき、最初にお伝えさせていただくのは、法人転売は便利な解決策ではなく、法人閉鎖と同じく、法人設立の何倍も手間暇と費用がかかるということです。
法人閉鎖が決まった行政手続きに則って、正解のある作業を粛々とこなす性質のアプローチだとすれば、法人転売は自由意志で動く第三者と、正解のない条件交渉と問題解決に頭を悩ませる性質のアプローチだと言えます。
法人転売の案内を出したとたんに
たくさん買い手候補が現れて
一方的に要求をのんでくれて
すぐに契約も締結できて
売買手続もスムーズで
支払いも滞ることなく
売買完了後もトラブルがない
このような理想的な取引はきわめて稀で、
法人転売の案内を出しても
交渉にまで至れる買い手候補が少なく
現れても一方的な要求しか提示せず
契約にも時間がかかり
売買手続も登記局に振り回されて
肝心の支払いはなかなか実行されず
売買完了後も金融機関や行政機関から調査協力を要求される
こうした事例のほうが現実味があります。
経験から先回りしてリスクを潰せて、効率よく実務を進められるプロの弊社が間に入る場合は、さすがにここまで極端なことにはなりませんが、それでも、100点満点に近い取引はなかなかできません。
何もかもが初めての方同士で、手探りしながら、海外法人の売買を進められるなら、結果は言わずもがなです。こんなことになるなら最初から法人を閉鎖しておけば良かった、と後悔する方が後を断ちません。
法人に不良記録がなく、口座も状態が良好で、口座以外にも企業価値があって、いい買い手が現れるのを待てる経済的そして時間的な余裕がある場合は、海外法人の転売はいい出口戦略になりえます。
しかし、単に閉鎖コストを抑えたいという理由だけなら、閉鎖コストを支払うのが最良の選択だということが往々にしてあります。