第253回 遠田潤子 『冬雷』

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内容
大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが…。


古来からの因習を守り続ける町で苦しむ人間たちを描いた傑作小説。


主人公の生い立ち、境遇、報われないストーリーに読んでいて苦しさを感じる。

それでも読まずにはいられないのが遠田作品なのかもしれないです。



伝統を守ることが悪いことではないけど、
その周りの人間たちを狂わせ、縛り付け、苦しめる辛さを見事に表現していると思います。


後半はもはや愛憎がまみれすぎて読んでいてオカしくなりそうでしたが、
救いのあるラストで景色が晴れるようでした。


主人公や同級生の不良など、男性のキャラクターは、

女性が描いた男性という感じで、

少し正義感や義務感が強すぎてちょっとキツかったんですが、
多分女性が読んだらすんなり呑み込めるんだろうなと思います。
個人的に男はもっと清濁あわせ呑むと思いんだけどなー。


それでもこの愛憎劇はハイレベルで後半は特に引き込まれて一気読みでした。


特に女性にお勧めかなー。