コンプレックス読書会の帰り道、文学談義を沢山したことで文学コンプレックスを刺激され、本屋へ寄りいろんな文学作品を爆買いした。

メーテルリンク『青い鳥』は今年の新潮文庫の特装版になっていたので購入。
きっとこの夏の読書課題でたくさん読まれるのだろうなぁと思いつつ読んだ。

手に取ったのはたまたまだったが、ドストエフスキー『罪と罰』からの振り幅がすごかった。笑
地下5階からいきなり地上30階まで上がってしまって気圧の変化についていけない気分になった。笑

メーテルリンク「青い鳥」は、清い心をもつ兄妹が「幸福」を探す物語。
 
時はクリスマスイブの夜。ふたりの家は貧しく「今年はサンタさんは来ない」と両親から言われていた。
ふたりはさびしい気持ちで窓から裕福な家のクリスマスパーティをながめていたのだが、突如あらわれた「妖女」から
 
「(中略)お前たちには、これからわたしの欲しい青い鳥を、さがしに行ってもらわなけりゃいけないよ。」
 
と言われ、「青い鳥」を探しに行く。
なにやら妖女の娘が病にかかっていて、それを治すために「青い鳥」がいるのだそう。
妖女は身動きがとれず、どうしてもふたりに頼みたいと言う。
 
いやいや、夜中に突然あらわれて、こんなことを言われても……。
これから寝ようと思ってたところなんですけど……。
明日はクリスマスだってのに、うちにはサンタさんは来ないよと親にいわれて気持ちがふさがってるから、余計外に出たくなんかないんですけど……。
 
わたしがふたりの立場なら、こう言って追い返してしまうに違いない。
しかしふたりはひねくれず、文句もたれずに青い鳥探しの旅へ出る。
 
妖女は青い鳥探しの助けになるように、家にあるものに魔法をかけ、「イヌ」「ネコ」「パン」「水」「火」「光」などの精を生み出し言葉が話せるようにする。
先導役の「光」の指示に従い、ふたりは青い鳥を探すための不思議な世界へもぐり込む……。
 
さまざまな出会いと別れ、たたかいを経て、ふたりは「青い鳥」を意外なところで見つける。
そして彼らは不思議な旅路を経て、「幸福」の本質を身に染みて感じるのだった……。
 
「青い鳥」を読んで、自分の心の汚れ・ひねくれ具合に愕然とし、チルチルとミチルの心の清さに心が洗われた。
もっと幼いころに読んでおけば……と思わずはいられない。
 
そして「青い鳥」を読みながら、最近「ありがとう」っていつ言ったっけ? とふと思った。
仕事で言う「ありがとう」は、なんというか、あいさつみたいな心のこもっていない「ありがとう」な気がする。
本当に、心から「ありがとう」とか「ありがたい」とか思うことって、最近なにかあったっけ?
 
……すぐに思い出せない時点でわたしは傲慢な人間だなと痛感した。

健康であること。
毎日じゅうぶんな量のごはんが食べられること。
仕事をさせてもらえてること。
東京で暮らせていること。
大切な家族や好きな人がまわりにいること。

どうやらわたしはいろんなことを「当たり前」だと思って、「ありがたい」ことをスルーして生きてきているようだ。
どうしてこんなことを思うのかというと、チルチルとミチルは旅路の果てに「当たり前」の「幸福」に気が付いて、貧しい家庭ながらも豊かな心を持って生きていくからだ。
 
「当たり前の大切さ」ってよく言うよね~、と侮ってはいけない。
結局、自分はなんて罪深い人間なんだ……!!と「罪と罰」同様に悶絶したのだった。笑

大人が読んでもハッとさせられる、いつまでも忘れないでいたい物語だった。


岩波少年文庫版もいいな!
未来の子どものために集めたくなってきた……。笑