・ 絶頂期のS・マックイーンを味わえる復讐西部劇。
ハワード・ヒューズをモデルにした「大いなる野望」(64)でネバダ・スミスを演じたのはアラン・ラッドで、彼の遺作となった。
本作はそのスピンオフ作品で、主演は「大脱走」(63)、「シンシナティ・キッド」(65)でトップスターとなったスティーヴ・マックイーン。同年「砲艦サンパブロ」でも主演した彼の絶頂期でもある。監督は「ナイアガラ」「勇気ある追跡」のヘンリー・ハサウェイ。
1890年代ゴールドラッシュに湧いたアメリカ西部。16歳のマックス・サンド(S・マックイーン)はある日現れた3人のならず者に白人の父と先住民の母を惨殺され、深い悲しみと激しい憎しみを背負い復讐の旅へ出る。
世間知らずの少年が、復讐のために様々な出来事を重ねながら大人への成長物語を辿るマックイーンの魅力満載アクション西部劇に仕上がっている。
序盤、30代半ばで16歳の少年を演じるのは流石に無理があるが、ドラマ進行と共に馴染んでくるのは彼独特の風貌と身のこなしの若々しさだろう。
「拳銃無宿」TVシリーズや「荒野の七人」(60)でガンマンのイメージが濃い彼が、鉄砲鍛冶屋のジョナス・コード(ブライアン・キース)に銃の扱い方を教わるシーンはファンにとってとても新鮮。コードに出合い処世術のイロハを教わったマックスは、何度も危ない目にあいながら犯人を一人づつ追い詰めて行く・・・。
S・マックイーンはスタントを使わずアクションをこなすことで有名だが、本作でも牧場の柵を外し牛を暴走させるシーンではあわや下敷きになるのでは?というシーンや、牛若丸のように柵の上を跳び回るなど本領を発揮している。
さらに刑務所でのシークエンスはのちの「パピヨン」(77)を連想させる泥まみれの演技をみせ、終盤は颯爽としたガンマンの姿で幕引きとなる。
大人への成長物語には序盤のジョナス・コードを始め、それぞれ大切な出合いと別れがあった。
先住民の娘ニーサ(ジャネット・マーゴリン)やルイジアナの農民の娘ピラー(スザンヌ・プレシェット)との出逢いと別れは仇を討つことしか念頭になかったマックスには恋愛感情を持てない非情さが滲み出ている。
命が危ういとき助けてくれたザツカルディ神父(ラフ・ヴァローネ)に<人としての在り方>を諭されたマックスは、ネバダ・スミスと名前を変えて最後の主犯トム・フィッチ(カール・マルデン)の悪党仲間となっていた。
トドメを刺さなかったのは<殺す価値もないから>と言ったのは本音だろうか?
「アラスカ魂」(60)、「西部開拓史」(62)、「エルダー兄弟」(65)など数々の西部劇を手掛けたH・ハサウェイがS・マックイーン主演で監督するとこうなるだろうと思える集大成の130分だった。
その後、晩年の「トムホーン」まで彼の西部劇作品が観られなくなったのも頷ける。
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