コロナで思う「田舎って生きにくいな」

子どもの頃、母の実家に行くと、互いをあだ名(？）で呼びあっていた。

権左衛門（ござえもん）、久右衛門（きゅうえもん）、七兵衛（しちべえ）、

あと他にもたくさんいた。

ところが、権左衛門、久右衛門、七兵衛さんは、どこにもいない。

あの呼び名は一体、なんだったのだろう。

また、ひい婆さんのことを「トショさん」と呼んでいたのだが、

これもまたよくわからない。

彼女は「フミ」という名前で、トシヨでも、トシコでも、なかったからだ。。

疑問に思ったこともあったろうが、皆があまりに普通に使っていたからか、

どうでもいいことだったからか、質問することもなく、この歳になった。

今、ネットで調べてみると、権左衛門や久右衛門は初代当主の名が由来のようで、

トショさんは千葉県東部～茨城県南部の方言ということのようだ。

田舎というのは、互いをよく知っている。

生まれた時から大人になるまで一緒なのだから当然だ。

結婚にしても、親世代までは地元で恋愛をするか、紹介がほとんど。

そうした狭くて密なつき合いが延々と続いてきた。

母はそんな田舎に嫌気がさした。

地元の醤油屋の跡取りと結婚させられそうになり

「このまま結婚したら一生田舎から出られない。

　とにかく東京に出よう。東京の人と結婚する」

というわけで、親父と結婚したとか。

愛があったのかは知らない。笑

さて、母の実家には離れがあり、一人暮らしの女教師が住んでいた。

学校の先生には転勤があるのだが、当時の田舎に単身用のマンションはない。

いつしか、離れが独身教師用の住居になっていたのだ。

僕は東京に住んでいたのだが、小学校の高学年までは母の実家に預けられる

ことが多く、転勤によって若い先生が入れ替わるのを見てきた。

僕は可愛がられ、しばしば遊んでもらった。

今にして思えば、彼女たちからすれば地元つき合いをするより

よそ者である僕の相手をする方が、よほど楽だったのではないか。

祖母の家には、いつも人が集まっていた。

目的があるわけでもなく、お茶や酒を飲みながらいつまでも話す。

そうした場面に先生がいるのを見たことがない。

僕は幼少期から過ごしていたし、母の実家という繋がりがあるから

それなりに慣れていたが、よそ者には馴染めない雰囲気があったと思う。

田舎の人に言わせると「東京の人は冷たい」ようだが

僕からすれば、東京の方がよほど居心地がいい。

東京はよそ者の集まりだから、初めから適度な距離感がある。

誰かと馴染まなかったら、別の誰かとつき合えばいい。

ところで、今年の盆休みは実家に帰らない人が多い。

毎年里帰りするスタッフに「今年は山形に帰るの？」と聞くと

「いやいや、やんわりと断られました。田舎ってそうなんですよ」と。

東京から帰ってくる人がいると、近所でウワサになる。

そこで万が一、コロナにでも感染したらエライこと。

「下手したら住めなくなるんですよ」

「マジで？」

「いや、マジですよ。会社を退職することになったり、

　家に石を投げられたり、ハンパじゃないですよ」

信じられない話だが、ウソをつくような奴ではないから

本当なのだろう。

村八分。

江戸時代に生まれた言葉だが、決して昔の話ではない。

「田舎に移住して、のんびりと農業でもやりたい」と

長野県に移住した人がいる。

しかし、１年ももたなかった。

村八分にあったからだ。

理由は本人にもわからないから、些細なことだったのだろう。

よくは覚えていないが、町会に入れないことでごみ捨て場を利用できず、

遠くまで捨てに行っていた、とのことだった。

　

田舎は大変だなぁ。

俺なんか田舎に住んだら、すぐに村八分にされるな。。