松本佐保『バチカンの近現代史 ローマ教皇たちの「近代」との格闘』(中公新書 2013年)読了。
「バチカンだって? 教皇が何個師団持っているというんだい?」(p244)
ヤルタ会談にて、チャーチルがポーランドの共産化に関連してカトリック教会の影響力について触れた後の、スターリンの言葉だそうである。
確かに、バチカン市国はローマ市内にある、世界最小の国土面積の国家であり、当然軍隊は持っていない。
しかし、本書を見ると、バチカン市国の統治者であり、全世界のカトリック信者の頂点に君臨するローマ教皇の影響力は、国際政治や外交を考える場合には無視することのできない絶大なものであることがよく分かる。
そして、ローマ教皇自身が自らの信念に基づいて行動した場合の外交力。
軍事力は持っておらずとも、それに匹敵するだけの権威の影響力。
その力を外交において遺憾なく発揮している。
翻って、未だに軍事を忌避する風潮が蔓延し、防衛努力を怠っているどこかの島国はどうか。
軍事と外交は車の両輪というが、軍事がきちんとできないなら、せめて外交をきちんとやらなければならないはずなのだが、その外交もさっぱり…。
我が国とバチカンの政治力・外交力の違い、また影響力の行使の仕方というものを考えさせられた。
それから、バチカンが一貫して反共である、という点も非常に重要である。
世界有数の信者を持つローマ・カトリック教会の頂点に立つローマ教皇がいかに共産主義と対峙してきたのか。
そんな教皇たちの近現代史を学ぶことができる一冊である。
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