ヘリコプターに乗って | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

先月に続いてのりものの話をもうひとつ。

 

何年か前の春と夏の間、いいお天気の平日。

いつものお散歩コースをひとりで歩いていたら。

……なんだか公園のあたりがとても賑やか?人も多い?

公立の学校がお休みになる市の祭日でした。

子供たちがたくさんいてお祭りが開催されていたのです。

そうだったんだー、と思う視線の先に幟がはたはたと。

そしてそのそばに男性がひとり。

「ヘリコプターに乗りませんか?」

公園の入り口にヘリポートがあって、

お祭り価格でフライト体験ができるというのです。

 

飛行機に乗るのが大好きです。

ヘリコプターにも乗ってみたいと思っていました。

普段自宅にいても遊覧飛行で飛んでいる音がバリバリ聞こえて、

なにより近所で乗ろうと思えばいつでも乗れる環境にいる。

それなのに、夫は空飛ぶのりものが大嫌い。

飛行機でも離着陸の時は(誇張ではなく)ぎゅっと目をつぶって、

ひじ掛けを握りしめるほどの筋金入りの飛行機嫌い。

当然「ヘリコプターに乗ってみません?」のお誘いは却下でした。

……確かに安いものでもないので嫌がる人を連れてまで

乗るのはなんだかな、とあきらめていたのです。

だけれども思わぬ場面でチャンス到来!

 

ちょうど今は私ひとり。

そしてお財布にやさしいお祭り特別価格。

えええー、乗っちゃう?乗っちゃう?乗っちゃう!

ここを逃したら多分乗らずに人生が終わってしまうと思って、

普段のお散歩中にまさかのヘリコプター体験をすることに。

 

ヘリポートにぽつんと建っている受付に行くとなかなかの盛況。

でもしかしですね。

周りは当て込んで来ている人ばかりです。

男女ふたり連れやおじいちゃまとお孫さんのようなペアが多くて、

ソロ参加のお方は壮年の男性で立派なカメラを持っています。

私のような女性ひとり参加の人はいません、それもそうかも。

誰かと楽しみを分かち合うわけでもなく、撮影の目的もなく。

携帯もないし、もちろんカメラなんて持っていないので、

写真を撮るのが目的ですという擬態ができない。

中年のおばさんが静かにヘリコプターにひとり。

ちょっと怖いというか気持ち悪いというか……。

なんだか完全に周囲から浮きまくっていますけれども、

でもいいの!だって乗りたかったんだし!

 

乗り込むときには風圧を避けるために体を屈めてください、という

注意事項がいかにもヘリコプターでワクワクする。

機体は想像と少し違って、

操縦席の後ろに客席が向かい合っているものでした。

運よく窓際の席に座らせてもらって大興奮。

そして音はとても大きいけれど、飛び立つときが非常にエレガント。

ふわっと空中に浮きあがるのがたまりません。

飛行機はホントに大きな鉄の塊が一生懸命飛んでいるんだなーと

深く納得です(あれはあれで好きなのですが)。

眼下にはいつもの(というか今歩いてきた)お散歩コースが見えて、

高度が飛行機よりも低い分細かいところまではっきり分かる。

というか、この高さから景色を眺めるのは初めてで新鮮。

うむ、これは楽しい。

うんとお金持ちだったらコースをオーダーして飛んでもらいたいな、

なんて妄想が炸裂します。

どのコースにするかのシミュレーションだけ(しかできない)でも楽しい。

 

港をぐるりと一周してあっという間の5分間。

元の場所に飛び立つ時と同じように(爆音だけど)そっと着陸。

この飛行機の迫力とは違う、

ふわっと浮いてそっと降りるのが本当にとてつもなく好きでした。

……じゃあ静かな飛行船はもっと好きなんじゃ?

そう思って帰ってから調べてみたら、

日本では飛行船の一般遊覧は数年前に廃止になっていたのですね。

いえ、現役だとしてもとても高そうだから無理ですけれど。

でもちょっと乗ってみたかったかも。

そういえば祖母からツェッペリンの飛来を若いころに見たと聞きました。

着陸したのは霞ケ浦だったけれど東京上空を通過して、

それはものすごい騒ぎだったとか。

昭和初期の東京の空を飛ぶ大きな飛行船、私も見たかった。

 

ゆりかもめに乗りに行ったりヘリコプターのことを思い出したのは、

たぶん池澤夏樹の「のりものづくし」と読んだから。

学生のころから欠かさず読んでいる大好きな作家。

随筆は堅めのものが多くてその視点も愛していますが、

これは久しぶりに柔らかい内容で純粋に楽しめました。

自分がのりものに乗るときのときめきがことごとく言語化してあって、

読みながら何度も首を縦にぶんぶん振りまくり。

思考の経路の一致って心地よい。

 

一方で私が絶対に体験できないのりものは自分で操縦するもの。

免許を持っていませんし、自転車にも乗れない(←転んでしまう)。

スキー・スケート(のりもの?)もダメだったし、

ボートも漕いだことがない、やったらできるのかな?

どれもできたらとっても楽しいものなんだろうなとは思うのですが、

こちらは習得できないまま終わりそう。

残念な気もしますがあまり欲張らずに諦めて、

ひとさまに運んでいただく移動を楽しむことにします。

 


人気ブログランキング