指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『春泥尼』

2019年05月19日 | 映画
アンコール特集、阿部豊監督と言えば、かつては大監督だったらしく、山際永三監督も助監督時代、阿部のゴルフのキャディーをやらされたと書いていた。
阿部と言えば『足に触った女』だが、見たことはない。フィルムはないのだから仕方がない。日活のサイレント時代の作品はほとんどない。映画は、芸術でも文化でもないと思われていたのだから仕方ないのだが。

大阪河内の貧困農家の筑波久子は、村の和尚小杉勇の紹介で、門跡寺の尼僧になる。
そこの不思議な実態を描くことが眼目だが、後の「尼寺マル秘もの」のようにすぐにレスビアンにはならない。
ナンバー2らしい左幸子は、ややその気があるが、金持ちのボンボンの岡田真澄にも惹かれているが、なんと彼は筑波に求婚してきて、妊娠してしまう。
寺を出て岡田に会うと岡田は非常につれない。
この時の台詞が最高で、「尼と言うユニフォームがなくなった君に魅力はない」



実家に戻り農作業をしていると流産してしまう。
左が、亡くなった門跡さんの後を継いで門跡になったと聞き、筑波は寺に行く。
左幸子は、筑波を慰めて言う、「私のように恋の楽しみも苦しみも知らずに門跡とされて死んでゆくのか、あなたがうらやましい」と。
なんのことか筑波は分からないが、この「悪人正機説」のような考えは、非常に虫が良いように思える。
なぜなら、監督の阿部豊は、多数の女性遍歴で有名だったからだ。
こうした俺の方が、成仏できると言いたいのだろうか。

小沢昭一が、警官として出てくるが、寺の尼僧の下着も泥棒されていたと言ってくるのも非常におかしい。
筑波久子は、日活初期のスターで、石原裕次郎が出てくるまでの最大のスターだった女優。
後にアメリカで『ピラニア』を作って成功するが、頭の良い女性なのだろう。
国立映画アーカイブ小ホール

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