少しづつ崩壊していく世界
怪物と戦う者は、その過程で自らも怪物と
ならぬよう心しなければならない。
深淵を覗くとき、深淵もまた―――
「ドキドキ文芸部」をプレイしていたイギリスの
15歳の少年が精神崩壊して自殺した、という
ニュースを見かけた。しかし、どうやらその
ニュースの内容はかなり誇張された表現らしく、
デマではないかというのが専らの噂だ。
このゲームは昨年発売されたゲームで
一見すると普通のギャルゲーだが、
登場人物が次々と死んだり、なぜか勝手に
セーブデータが消されたり、文字化けや
ブラウザクラッシュの演出で肝を冷やされ、
しまいには登場人物が第四の壁を越えて
プレイヤーの本名まで言い当て、攻略するには
ゲームのシステムファイルをいじるしか
ないという、途轍もなくメタい内容の
ホラーゲームである。製作者の才能に嫉妬…
「ゲームくらいで死にゃしないだろ」
その思いは今も変わらないし、実際イギリスの
少年が自殺したこととゲームとの因果関係は
稀薄であると言わざるを得ない。
それはさておき、第四の壁を超えてくるゲーム
という代物は本当に恐怖以外の何物でもなく、
僕はこのゲームの話題を初めて聞いたとき、
「こ~こはど~この箱庭じゃ?」
というあるFlashのゲームを思い出していた。
もう10年以上も昔の話だ。
当時はまだ、あのフレームアクションの悍ましい
化け物であるFlashの全盛期であり、MADや
ゲームもほとんどがFlash製のものばかりで、
誰しもがFlash倉庫に入り浸り、2chネタ動画で
馬鹿笑いしたり、感動系動画で時に涙したり、
それぞれがインターネッツライフを満喫していた
あの古き良き牧歌的時代。
それが今では「Flash黄金時代」と呼ばれる過去の
遺物となり果てた。著作権問題やのまネコ騒動、
そして決定的だったのは動画共有サービス
「YouTube」の誕生である。iPhoneもFlashの
テクノロジをサポートせず、ひっそりと歴史の
陰に埋もれていくことになる。まぁ、Flashが
Adobe社に買収されたあたりから、衰退への一途を
辿っていく命運は決まっていたと言えるだろう。
話を戻そう。
「こ~こはど~この箱庭じゃ?」というゲーム。
「行太」が作成したホームページにアクセスし、
キリ番を踏むところから物語は始まり、
ホームページを操作する感覚で対話的に
進行していくメタ構造ホラーゲームである。
(しかし、キリ番とかなついな)
ネタバレ上等で書くと、管理人である行太の
PCはインターネットに接続されていないにも
関わらず、なぜかホームページにアクセスできて
いることが発覚。しかも、サイトの掲示板の
常連である「まなみ」「JUN」と交流できている。
実は、まなみとJUNは同一人物であり、行太の
PC内に巣食っている人物であった。最終的に
行太はPC内の世界に取り込まれてしまう。
上記画像のシーンで第四の壁を破壊されたときは
恐怖のあまりプロの絶叫をあげた記憶がある。
ネタバレしといてなんだけど、多少の時代錯誤感を
気にしないのであれば、今プレイしても結構面白い
ゲームだと思うので、気になる方はぜひ。
(PCでのプレイ推奨、つかPCじゃないと無理)
怪物と戦う者は、その過程で自らも怪物と
ならぬよう心しなければならない。
深淵を覗くとき、深淵もまた―――
こちらを覗いているのだ。
…なんつって。
ニーチェ好きなんです、すみません。