本書の主張

一時、書店で平積みにされ話題となっていた『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。-コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする-』という本が文庫化されていたので、読んで見ました。

デロイト・ハスキンズ&セルズ(現デロイト・トウシュ・トーマツ)、ジェミニ・コンサルティングといったコンサルティングファームで活躍した後、製薬大手ファーザーやジョンソン・エンド・ジョンソンでマネージャー職を務めたカレン・フェランという方が著者です。

刺激的な本のタイトルですが、状況によってはコンサルタントを雇うことの意義を著者は認めています。一方、会社が今後どの様に舵を取っていくのか、というように、考える事自体をコンサルタントに丸投げすべきではないと主張します。

また、コンサルタントは経営のために開発されたツールや経営理論を盲目的に信じる所があるそうで、それによって振り回された企業をいくつも紹介しております。

完全に証明されていない&間違った経営理論

戦略を立てることの有効性は証明されていない

この本を読んで驚いたのが、戦略を立てることが必ずしも企業をいい状態へ導くとは言えないということです。その一例として紹介しているのが、著者が務めていたジェミニ・コンサルティングファームでの経験です。

ジェミニ・コンサルティングの経営陣は、コンサルティングファームとして(業界の人達は「会社」とは言わず「ファーム」と言うようです)次のレベルを目指すために事業戦略を設定しました。

それは、企業のコストを大幅に削減する「ビジネストランスフォーメーション」を、自社が提供するサービスの主軸とする、というものです (この会社はこの分野で成功を収めつつあった) 。

それまでは、定期的に入ってくる小さなプロジェクトが収入源であったのですが、そんなプロジェクトは一切やらないというのです。

しかし、残念ながら(世の中にとっては喜ばしことですが)、景気は回復し、一般企業は大幅なコスト削減をする必要がなくなりました。その頃には、ジェミニ・コンサルティングファーム=大規模なコスト削減をする(ゴーン会長が日産を立て直すために行った工場の売却や人員整理のことでしょう)というイメージが出来上がり、競争入札で「ジェミニ」の名が出てこようものなら、クライアント企業の社員は震え上がったそうです(つまり、ジェミニのコンサルティングによって自分たちはリストラされてしまうのではないかと憶測したのでしょう)。

結果、とうとうジェミニはお家芸ともいうべき人員削減を自社で実施することになりました。正しいとされる経営理論を実行した挙げ句、笑い話の様な結果になってしまったのです。

なぜ戦略を立てることが難しいのか

戦略を立てることの難しさとして著者は「今後の経済状況や、業界の変化や、競合他社の動向や、顧客のニーズを予測できることが前提となっている点」を挙げています。

一方、戦略を実行する事がそのまま問題を解決する事に直結しないとは言いつつも、戦略を策定する上でのプロセスについては重要視しています。

連合国遠征最高司令官としてアメリカを勝利に導いた将軍でもあり、第34代アメリカ合衆国大統領でもあるドワイト・D・アイゼンハワーの「戦闘準備において、作戦そのものは役に立たないことをつねに思い知らされたが、作戦を立てる行為こそが重要だ」 という言葉を引用し、「計画を立てる過程こそ価値がある」と言います。

計画を立てるうえで、「業界の動向や経済シナリオ、競合企業の強みと弱み、規制の変更、消費者の声などをしっかりと把握することにより、洞察と知恵をもって一企業としての意志決定を行うことができる」と述べています。

その他にも、「インセンティブ報酬は逆効果である(出来高による報酬)」は逆にマイナスの効果が出ることを証明する事例などを紹介しています。

内容は以前アップロードした「キャンセル効果とコブラ効果」と似ているので割愛します。そういえば、ゆうちょ銀行も出来高の報酬を得たいがために、不誠実な接客をしたことで注目を集めていました。

最後に、本書の付録として掲載されていた表をつけておきます。

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