漫画、小説、映画などの感想

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エスパー魔美 藤子・F・不二雄大全集2巻 感想

1巻の感想に引き続き2巻の感想です。1巻とくらべると全体的にギャグ色が強いような印象をうけました。それではいつものように気になったエピソードをいくつか紹介していきます。

黒い手

かなり重い話です。交通事故で子供を失った父親が加害者の青年を殺そうとするお話です。加害者の青年は刑期を終え社会復帰していますが、反省の色はありません。罪に対する量刑の軽さなどについて作中で触れられます。
復讐するために青年のもとに向かう父親の取り憑かれたような描写はSF短編集の「四畳半SL旅行」に登場する主人公の少年を思い出しました。魔美と高畑くんの機転で復讐は失敗に終わりますが、なんとも苦いエピソードでした。

うそ×うそ=?

ギャグ回です。魔美が母親のマフラーを超能力で動かしたことで、世の中にカマイタチ騒動がおころます。世間がカマイタチの話題で持ちきりになっている描写が面白かったですね。どうやら、ドラえもんたちも魔美と同じ町内に住んでいるらしく、スネ夫がのび太たちにカマイタチを見たと熱弁していたり、夫婦喧嘩で「カマイタチに月給とられた」なんてやりとりもあります。
最終的に交響組曲の「キージェ中尉」からヒントを得て、魔美が騒動を終わらせるのですが、藤子・F・不二雄先生ご本人もキージェ中尉から着想を得てこのエピソードを作ったのかもしれませんね。

電話魔はだれ?

魔美の家に「お前の家は呪われている……」とシャレにならないイタ電がくるようになりました。
犯人はお隣に住むクレーマーの陰木さんです。陰木さんには息子がいたのですが、ヤクザになってしまい、心が歪んでしまったようです。心を入れ替えた息子が、刑務所から帰ってくることで陰木さんの心が晴れ、イタ電がやむだろうといったところで物語は終わります。直接、佐倉家に謝罪の言葉がなくても陰木さんの口から、イタ電の後悔や懺悔の言葉が聞きたかったです。

エスパークリスマス

貧乏な兄妹のために魔美がサンタになってあげる話です。とてもいい話でした。サンタの格好をしていっしょに遊んだだけで、超能力などは使っていないのですがそれがよかったです。兄妹の飲んだくれの父は、魔美の姿に心を打たれ改心します。父親の心境の変化をもう数コマ使って描写してほしかったなぁとは思いましたが、傑作エピソードのひとつではないでしょうか。妹のチコちゃんが無邪気でとてもかわいかったです。兄のほうの妹をかわいがりつつも、父を憎悪している感じがさりげなく描かれているのもうまいなと思いました。