お父さんの桜

今日は朝から打ち合わせ１件に、鑑定が２件。

仕事を終えて自宅へと歩いていた時、携帯が鳴った。

「０５３」は、地元である浜松の市外局番。

条件反射ですぐに出ると、浜松水道局からだった。

係の人：あのー、浜松市○○区○○町の水道なのですが・・・

砂智：・・・はい。父の自宅です。

係の人：（言いにくそうに）今月、メーターがゼロなのですが
何かありましたか？

なるべく無機質に、父が亡くなった旨を伝えた。

係の人は、申し訳なさそうに電話を切った。

父がもういない現実を、
またもや突然つき付けられて
涙があふれた。

父が生きている時、夕方になると
どんな思いで電気をつけて
水道を使っていたんだろう・・・

ヤバイ・・・

上を向いて空を見上げても、涙があふれて止まらない。

葬儀を終えて、３月はじめに地元から東京に戻ってきた時、
まだ桜はほとんど蕾だった。

その時、私は、天国にいる父に心の中で呟いた。

「お父さん、もしお父さんが天国にいるのなら
桜の花をいますぐ私に見せて」

その時、目黒川の桜はまだ全然咲いていなかった。

ふと立ち寄った目黒不動尊の境内に
１本だけ、桜が咲いていた。

それを思い出して、今回も祈ってみた。

ほとんどの桜は、もう葉桜だ。

「もしお父さんが天国にいるなら、満開の桜を私にみせて」

１０メートルぐらい歩くと、
なんと１本だけ（！）
満開の桜の木が見えた。

「亡くなってからは、随分素直だね」

私は思わず、心の中で父に呟いた。

だって父は、信じられないほど天邪鬼で
不器用な人だった。

私や弟に、本当の気持ちを伝えられず、
傷付けてばかりいた。

長い間、お互いに苦しかった、と思う。

・・・だから、これから私はなるべく笑顔でいたい。

他人様とコミュニケーションを取って
なるべく分かり合って・・・

あたたかく。

ゆるんで。

淋しい人が、少しでも少なくなる社会にしたい。

そうすることが、私の体のDNAを通じて
父への供養になると、勝手に信じている。

上手くできるか分からないけど。

多分、やらかすことも多いと思うけど。