★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇リヒテルのシューマン:ピアノ協奏曲/ロストロポーヴィッチのシューマン:チェロ協奏曲

2020-11-19 09:37:27 | 協奏曲

シューマン:ピアノ協奏曲
      チェロ協奏曲

ピアノ:スヴャトスラフ・リヒテル

指揮:ヴィトールド・ロヴィッキ
管弦楽:ワルシャワ国立フィルハーモニー交響楽団

チェロ:ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ

指揮:ゲンナディ・ロジェストヴェンスキ
管弦楽:レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

LP:日本グラモフォン MG 2202

録音:1958年10月11日~12日、ワルシャワ,ナショナル・フィルハーモニー(ピアノ協奏曲)
   1960年9月12日、ロンドン、ウィンプレイ・タウンホール(チェロ協奏曲)

 このLPレコードは、シューマンのドイツ・ロマン派を代表するピアノ協奏曲とチェロ協奏曲を1枚に収め、しかもスヴャトスラフ・リヒテル(1915年―1997年)とムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ(1927年―2007年)という、当時の演奏家の頂点に立つ2人が演奏している、これ以上は望めないというほどの内容が充実した録音である。シューマン:ピアノ協奏曲は、1845年に完成された、シューマンの遺した唯一のピアノ協奏曲で、初演は、1846年にクララ・シューマンのピアノ独奏によって行われた。その後、クララ・シューマンの人気とも相まって、このピアノ協奏曲は、多くの支持を集めることになる。この背景には、当時リストやパガニーニに代表されるヴィルトオーゾ風の曲の全盛時代であり、シューマン:ピアノ協奏曲の曲想は、これらとは正反対の、内省的で夢想的な、正にロマン派そのものの曲への期待が挙げられよう。一方、シューマン:チェロ協奏曲は、1850年に作曲された曲。通常3つの楽章は途切れなく演奏される。曲風は地味ながら、ピアノ協奏曲にも増してロマンの香り高い名品で、現在でもしばしばコンサートで取り上げられる曲となっている。このLPレコードにおいてリヒテルのピアノ演奏は、通常のリヒテル特有の力強いピアノタッチは鳴りを潜め、代わりに詩情豊かな柔らかいピアノタッチが響き渡る。テンポも緩やかで、思う存分シューマンのロマンの世界に浸ることができる。ベートヴェンなどで見せるリヒテルの男性的な演奏とは一味違って、ツボを心得た詩的な感情表現が誠に見事だ。わざとらしさは微塵もなく、シューマンの内省的で夢を見ているような世界を表現し、リヒテルの懐の深さを思い知らされる録音だ。一方のチェロ協奏曲は、ピアノ協奏曲が明るい夢想の世界とするなら、暗く沈み込むような夢想の世界が辺り一面に漂う曲だ。オーケストラの結び付きは、さらに緊密ととなってくる。ロストロポーヴィッチの演奏は、あたかもヴァイオリンのように軽々とチェロを奏していることにまず目を見張らされる。辺り一面に静寂さが漂い、その中をチェロとオーケストラが相互に絡み合うように曲を進める。ここには、単に技巧だけで曲を盛り上げるといった雰囲気は皆無。汲めども尽きぬ透明な泉から、真水がこんこんと自然に湧き出してくるようなみずみずしさが魅力的な演奏だ。ロジェストヴェンスキ指揮レニングラード・フィルの伴奏も、ロストロポーヴィッチのチェロ演奏に一歩も引かぬ高みに達していることが、この録音の価値を一層際立たせている。(LPC)


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