★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇モーツァルト:ピアノと管楽器のための五重奏曲K.452/ロンドK.617/三重奏曲K.498

2020-11-23 08:35:03 | 室内楽曲

モーツァルト:ピアノと管楽器のための五重奏曲K.452
       チェレスタ、フルート、オーボエ、ヴィオラ&チェロのためのアダージョとロ
       ンドK.617
       ピアノとクラリネットとヴィオラのための三重奏曲K.498
 
リリー・クラウス(ピアノ/チェレスタ)
ピエール・ピエルロ(オーボエ)
ジャック・ランスロー(クラリネット)
ポール・オンニュ(ファゴット)
ジルベール・クールジェ(ホルン)
ジャン・ピエール・ランパル(フルート)
フランソワ・エティエンヌ(クラリネット)
ピエール・パスキエ(ヴィオラ)
エティエンヌ・パスキエ(チェロ)

LP:東芝音楽工業(仏ディスコフィル原盤) AB-8102 

 このLPレコードのジャケットの帯には、「フランス第一線の巨匠一堂に会す!!」と書かれているが、このキャッチフレーズは、このLPレコードの本質をずばりと言い当てている。ピアノのリリー・クラウス(1903年―1986年)は、最高のモーツアルト弾きとして定評があったし、皆いずれ劣らぬ名手揃いであり、当時のフランスの演奏家の最高峰を形成していた人々が名を連ねている。このLPレコードに収められたモーツァルトの室内楽3曲は、知る人ぞ知る的な名曲であり、聴き応え十分な曲ばかり。1曲目の「ピアノと管楽器のための五重奏曲K.452」は、1784年3月30年に書き上げられ、4月1日の演奏会で“まったく新しい大きな五重曲”として紹介された作品。曲は全3楽章からなっており、当時、モーツァルトは貧困にあえいでいたが、そんなことを感じさせない、明るく軽快な曲に仕上がっており、それぞれの楽器の持ち味ををよく発揮させた曲となっている。2曲目の「チェレスタ、フルート、オーボエ、ヴィオラ&チェロのためのアダージョとロンドK.617」は、もともとグラス・ハーモニカのために作曲された曲だが、このLPレコードのように現在ではチェレスタで演奏される。これは、グラス・ハーモニカの音色とチェレスタが似ているため。グラス・ハーモニカは、一時、その響きが人体に悪影響を及ぼすのではという誤った認識があり廃れたが、最近では復活の兆しもあるようだ。この曲はモーツァルトが世を去る半年前の1791年5月にウィーンで作曲された。作品の内容は、晩年のモーツァルトの作品に共通した、宗教的な浄化とでもいえる奥深さを垣間見せる室内楽作品となっている。3曲目の「ピアノとクラリネットとヴィオラのための三重奏曲K.498」は、1786年8月にウィーンで作曲された作品で、1曲目の「ピアノと管楽器のための五重奏曲K.452」に少々似た曲想を持った全3楽章からなる曲。この曲は、“ケーゲルシュタット三重奏曲”と呼ばれることがある。ケーゲルシュタットとは、ボーリングに似た九柱戯という球技を楽しむための広場のことで、モーツァルトは九柱戯をしながらこの曲を書いたと言われることから名づけられたが、その真偽は不明。これら3曲の演奏内容は、名に違わぬ名演で、特にそれぞれの楽器同士が打ち解け合いながら、モーツァルトの室内楽の世界を表現する様は見事というほかない。この繊細さと詩的な雰囲気を持つ演奏は、ドイツ・オーストリア系の演奏家のそれとは明らかに一味違う。当時のフランスの演奏家のレベルの高さが聴き取れる貴重な録音だ。(LPC)


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