EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

危険すぎる中国の帝国主義 過剰生産能力をアフリカ・アジアに輸出、「反中国」強まる恐れ

2018-09-21 12:14:33 | 中共日本浸透工作・中共浸透工作・一帯一路・中国経済侵略

危険すぎる中国の帝国主義

過剰生産能力をアフリカ・アジアに輸出、「反中国」強まる恐れ

――筆者のウォルター・ラッセル・ミードは「グローバルビュー」欄担当コラムニスト

 

中国の習近平国家主席が進める「一帯一路」構想の政治宣伝ポスター(8月28日、北京) 


 中国の真の問題はいわゆる「トゥキディデスのわな」ではない。古代ギリシャの歴史家トゥキディデスは、

アテネとスパルタの覇権争いを例に、台頭する新勢力が既存の支配勢力と衝突するのは不可避だと説いた。

だが中国がいま直面する問題を予見したのは彼ではない。その事象を帝国主義と呼び、経済崩壊や戦争に

つながると主張したレーニンだ。


 レーニンは帝国主義について、資本主義国家が国内経済に過剰な資本と生産能力を抱えるとき、

国外に市場や投資機会を見つけようとする試みだと定義。国外で余剰分を吸い上げる新市場を見つけ

続けることができなければ、経済が内部崩壊を起こし、それと共に何百万人もの失業者があふれ、

何千もの企業が倒産し、金融システムが破綻するという仮説を立てた。

そうなれば、革命の力が解き放たれ、既存の体制を脅かすことになる。


 こうした状況下で唯一の選択肢は、拡大を続けることだ。19世紀から20世紀初頭の「帝国主義時代」に

欧州列強がしのぎを削ったのは、余剰品を売りつけ、過剰資本を大規模なインフラ事業に投じることが

できる植民地や保護領の獲得だった。


 皮肉なことに、これは「共産主義国家」の中国が現在置かれている立場にほかならない。

中国は数十年間にわたる補助金と野放図な融資によって、国内市場に過剰な生産・建設能力が

あふれている。北米も欧州も日本も徐々に、中国が生産する鉄鋼やアルミニウム、コンクリートを

購入する意思や購買力を失いつつある。一方で、規模が大きくなりすぎた中国のインフラ産業は

十分な開発案件を見つけられずにいる。共産党指導部はこうした中、広域経済圏構想「一帯一路」を通じて、

アジアやアフリカに「ソフトな」帝国を築こうとしている。


 多くのアナリストは、中国経済が成熟すれば、同国が米国や欧州、日本の姿に近づくだろうと

期待していた。大勢の裕福な中産階級が十分な商品やサービスを購入すれば、産業は順調に回り続ける。

政府の社会保障制度を整えることで、中産階級社会への移行はスムーズに進むはずだった。


 主要な中国当局者は、今やそのような未来には手が届かないと考えているようだ。あまりにも多くの

有力利益団体が現状維持に多くの利害関係を持ちすぎているため、中国経済に痛みを伴う改革を

強いるような政策はとても打ち出せない。しかし大幅な改革を行わなければ、深刻な経済危機への

不安は増すばかりだ。


 一帯一路構想は、経済改革に本腰を入れることなく、拡大を続けることに狙いがあった。

中国の商人や銀行家、外交官は、発展途上地域の隅々まで目をやり、中国株式会社を沈ませないための

市場やインフラ事業を探した。香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストの2014年の記事は、

一帯一路の目的の1つが「過剰生産能力の海外移転」だとする中国当局者の発言を伝えている。

これを「中国の特徴を加味した帝国主義」とでも呼ぼう。


 だがレーニンが1世紀前に気づいたように、国内の混乱を避けるために過剰生産能力を輸出すれば、

いずれ外国との衝突を招きかねない。レーニンの予言によると、競合する帝国の間では市場を巡って

衝突が発生するが、それ以外にもこの戦略を危険にさらす力学が働くだろう。

ナショナリストの政治家らは、自国が帝国主義国家に対して多額の債務を負うことになる「開発」

プロジェクトには断固抵抗する。その結果、帝国主義は破滅への道を歩むのだ。


 中国の現在の問題はこのパターンに沿っている。一帯一路構想で最大規模のプロジェクトを抱える

パキスタンは、合意した融資条件が不公正だと考え、再交渉を望んでいる。

2番目に事業規模が大きいマレーシアは、親中国派政治家が政権から一掃されたのを受け、同構想への

関与を縮小する意向を示した。

ミャンマーとネパールは既に一帯一路関連事業を中止している。

中国への多額の債務返済に行き詰まったスリランカが、ハンバントタ港の運営権を99年間、中国企業に

貸与せざるを得なくなったことから、アジア・アフリカ諸国は自国の契約書の細則をあらためて読み直し、

不平等な取り決めには苦情を言うようになった。


 一方、中国の重商主義的な通商政策――補助金や知的財産権侵害のほか、ターゲット産業を設定し、

中国がその分野で優位に立てるよう国家を挙げて取り組むこと――は、

欧州や日本を(ドナルド・トランプ大統領への嫌悪感にもかかわらず)米政府の味方につける効果がある。


 中国にとって主要な問題は、米国がその台頭を阻止することではなく、同国の経済システムの

内なる力学によって、指導者が次のいずれかを選択せざるを得ないことだ。

つまり痛みを伴う不安定な経済調整をくぐり抜けるか、あるいは国外での衝突や孤立につながる拡張主義の

開発政策を追求することだ。

レーニンは、現在の中国のような立場の資本主義国家は、戦争や革命に相次いで見舞われる運命にあると

考えていた。


 幸いにもレーニンの考えは間違っていた。第2次世界大戦後70年間の欧米の歴史が示すように、

正しい経済政策に基づき、購買力の向上と国際的な経済統合を進めれば、19世紀から20世紀初頭の

帝国主義的な力学を超越することは可能となる。

だが一方で、中国がこうした例から何も学ばなければ、「レーニンのわな」を逃れることはできない。

つまり、国内の安定維持にこだわる戦略が、世界中に一段と強力な反中国連合を生み出すことになる。