定年後は旅に出よう/シルクロード雑学大学(シルクロードを楽しむ会)長澤法隆

定年後もライフワークのある人生を楽しみたい。シルクロード等の「歴史の道」を調べて学び、旅して記録する楽しみ方を伝えます。

キルギスの国立オシュ大学に日本語の本を寄贈 横浜の方が協力

2018-09-16 19:37:14 | シルクロード中央アジア
  

中央アジアのキルギス共和国、南部にある国立オシュ大学へ日本語の本を寄贈してほしいとの呼びかけを行ったのは、9月11日のことだった。

そして、9月14日には、国立オシュ大学の日本語学科へ日本語の本を寄贈したいとのメールがあった。百科事典2揃いと松本清張の文庫本数十冊にもなるとのことだ。送付代金は負担してもらうことを納得してもらった上で、私の自宅へ送ってもらうことにした。オッシュ大学の担当者やキルギスのビシケクで日本との国際交流を行っているNPOと相談して、送付する時期や方法を決めることにしている。ありがとうございます。


スキャナーが壊れたので立川へ行ったついでに古本屋に入った。オシュ大学へ寄贈する本のことが頭にあったのだろう。本を買う気はなかった。

お店に入ると、「南洋一郎著」の文字が目に入った。タムガに抑留された武内栄さんの言葉が頭に浮かび、宮野泰さんのお宅で見せてもらった手紙が重なった。

キルギスのイシククル湖南岸にあるタムガ村には収容所があった。一般的にシベリア抑留と言われているソ連に抑留された元日本兵が2年間を過ごしたのだった。その収容所には125名の元日本兵がいたが、全員が無事に帰国している。

帰国した彼らは、自分たちの抑留された様子を記録した本を作ろうと準備していた。戦後間もない時期で、今と違って本を出したくても印刷する紙がない。

その時に、作家の南洋一郎氏に相談して紙の手配をしたものがいた。望月さんといい、大学で教えていた人だったという。東京都の世田谷に住んでいた武内栄氏が事務局役となり、タムガ村に抑留された仲間にハガキや手紙、あるいは電話でタムガ村での体験を書いて送ってほしいと連絡をした。

だが、原稿は集まらなかった。手紙やハガキでの呼び掛けにナシのつぶての人がほとんどだったという。電話をしても「タムガ、そんなところへ行った覚えはないよ」とそっけない抑留仲間もいたらしい。戦後は、日本国内ではただでさえ働く口がない上に、「シベリア帰り」というと『アカ』だと決めつけられて、ますます働く先は細るばかりだったという。

そんな時代だけに、抑留体験を書くことよりも、まずは食うために働く。次に結婚や子育てで時間に追われて、1円にもならない原稿を書く仲間はいなかった。その結果、キルギスにも日本人の抑留者がいたことは60年間も歴史の舞台から消えていたようだった。

「南洋一郎」の名前を目にして、まずはタムガに抑留された人たちのことが頭に浮かんだのは、上記のような話を聞いていたからだったと思う。

 

では、なぜタムガの事を調べるようになったのか。玄奘三蔵やアレキサンダーが好きで、シルクロードを自らの脚力で旅したいと思っていた。そして、自転車で西安からローマまで巡ることにした。一人では挫折しそうなので、仲間と一緒に旅することにした。西安を出発したのは1993年の事だった。毎年少しづつ進んでローマをめざした。

中国のカシュガルからキルギスへと進むには、天山山脈を越えなければいけない。峠のトルガルト峠は標高3752mで富士山ほどの高さだ。洪水で道が無くなったり、政治的な理由で国境での手続きが遅れたり、民族差別で出国手続きは一番最後とされたり、これまでに3回チャレンジしたが、国境の緩衝地帯約120キロの中、今でも宿題を残したままだ迄も30キロほど。シルクロード踏破はお預けとなってる。

そうこうしている間に、三井勝雄氏が『天山の小さな国 キルギス』という本を2004年に出版し、「若い時に日本人の捕虜と一緒に働いたことがある」といったことを子供にいい伝えているキルギス人が多いことを働いたことがあるを調べて発表した。だが、「キルギスで働いたことがあるという日本人は、今も現れていない」と課題を示していたのだった。それで、2006年にキルギスで捕虜として過ごした体験を持つ日本人を探してみたのだった。日本人が名乗り出たのは、2007年の事だった。

キルギスをサイクリングしながら、国立キルギス民族大学(現キルギス国立大学)、国立ビシケク人文大学へも日本語の本を贈ってきた。そして、今回は、国立オシュ大学でスタートして間もない日本語学科にコミックを主として寄贈することになった。

 

これからどんな展開になるのか。楽しみだ。

尚、長澤は「終活」のために、本を友人や知人にあげて、多くの人が利用できるようにしたいと考えている。
今のところ、自転車関係の本は、大前仁氏。探検関係の本は「モーリー」店主で探検家の坂口篤史氏。シルクロード関係は中国まるごと百科事典の茅森由佳氏にとと考えている。

本は、読み終えても捨てないで自宅の本棚に並べたままのケースが多い。捨てられないのだ。また、亡くなった友人の場合、たいていの奥さんは本の処分に困っていた。それだったら、読み終えた本や資料として使い終えた本は、多くの人が利用しそうな場を持っている人にあげるようにしている。

シベリア抑留の手記や関係する資料は、キルギスの国立図書館に引き取ってもらえるように、キルギス人の友人が交渉している。キルギスJンが日本人の抑留に関して興味を持つ上でも役に立ってほしい。



CYCLE TOURING オオマエジムショ 編集者でありライターでもある大前仁氏の経営するサイクルショップ。休みの日に注意してください。
https://www.velo-apres.com/

探検家の酒場『Bar morrlu』(モーリ―) 大学の探検部に所属し、西安からトルファンまで西安で変速のできない人民自転車を買ってトルファンまで踏破。トルファンでロバを買ってクチャまで踏破した体験を持つ、探検家の坂口篤史氏が店主。お店は神楽坂にある。旅行や探検に関する本も読める
https://www.facebook.com/morrlv/

中国まるごと百科事典 中国への留学経験のある茅森由佳氏が運営しているサイト。中国のシルクロードの情報が豊富だ。

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