はじめに

TRPGという言葉を聞きなれない人もいると思いますので、簡単に説明すると

「紙とサイコロと即興演技を使ってみんなで物語を紡いでいくゲームです。」

即興演技で物語を紡ぐといっても、キャラになり切る必要とかはなく「キャラクターがこういう動きをすると思うので〇〇します。」のような宣言でも構いません。

キャラをみんなで作成して、オリジナルのRPGゲームを自分たちで作ろうというアナログゲームです。

今回はおおもとの世界観を【シノビガミ】というタイトルを使用していますが、シリアスな忍者の世界観ではなく、今回のセッションのようによくある日常的な世界観でもプレイできるようになっております。

簡単なあらすじ

とある大型複合型商業施設「シャドル」、1月の初売りの日。毎年恒例の福袋の販売が行われ、多くのお客でにぎわっていた。
そこに現れた4人のシノビ「アリサ」「リーシェナ」「ヴァルツ」そして、「ファフニール」。
彼ら4人(3人と1頭?)は昨年も販売された福袋を様々な理由で買いそびれていた。
そのため、全員「今年こそは・・」という意気込みで戦場に向かう。
果たして、福袋を購入できるのか?

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本セッションのPCの使命

セッション終了時にプライズ「福袋」を所持していること。


第1幕「アクセサリーショップの福袋争奪戦」

今日は頑張らなくっちゃね♪

そう張り切る少女「リーシェナ」は今、大型スーパーマーケット「シャドル」の前にいる。

ここシャドルは、毎年の年度始めに福袋を販売している。中身が非常に豪華という事もあり、人気は非常に高く、中々購入する事が出来ない。
そんなリーシェナも、去年買いそびれてしまった1人である。

「今年も人が多くて大変ね〜」
去年の無念はあるのか分からないが、人混みに紛れながら開店を待つ。中にはドラゴンも買いに来てるようで、今年もそう簡単に買えるようには思えない。

「んー………!!?」
何か嫌な予感を察知したリーシェナは辺りを見渡す。
後方にオバチャン達に紛れて、1人背の高い好青年が居た。
リーシェナは彼の事を知っている。

(……去年私に腹パンしてきた奴じゃない!)

アイドルに対して顔じゃないだけマシだが、その腹パンによって去年は購入を断念してしまっている。
(あの人にだけは、渡せない!!)
静かに花火を散らすリーシャナ。
 ※リーシェナの秘密:ヴァルツをゲームから退場させること。

しかし……それ以外の輩も同じく火花を散らしてたとは思いもよらなかったのだ………。

「そっかぁ、居なくなった友達の分まで買うつもりなのね」
「うん……ロザリアの為にも、頑張らないと!」
似た年齢、女同士と2人はすぐに仲良くなった。
彼女はアリサ。現代に珍しいエルフの種族で、最近行方不明となった友達を探す少女だ。

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女の子同士、どうしてもオシャレな店を見てしまう。
行き着いた先はアクセサリーショップだった。
足を止めてアクセサリーを眺めようとしたその時。ショップに鐘の音が響き渡る。
「みなさまお待たせしました!ゲリラ福袋!入荷いたしました!お一人様1つ限定です!」
店員が叫ぶと、売り場に福袋をドン!と置いた。
その瞬間周りの客が目の色が変わり、一斉に取りにかかった。

いち早く気づいたリーシャナは、売り場の方へ急いだ。
(ゴメンねアリサちゃん、先に頂くよ!)
アリサの事情を知ってるが、欲しいのは自分も同じ。
リーシャナは肉壁の如く並ぶ人の山を掻き分けて進む。

袋が残り1つ、リーシャナの目の前にあるものの、手を出す前に他の手が伸びる。

(間に合わない……!!)

しかし、別の手は福袋をつかむことはなかった。その手の行く先には矢が刺さっていたのだ。
 ※リーシェナとアリサはゲーム内で感情を結んでおり、福袋を購入する判定をアリサが補助しました。結果リーシェナは福袋を手にしています。

リーシャナは福袋を手に何とか人混みから出てくる時、チラリと何かを見かけた。
商品棚に着いた”鉤爪の痕”。
(もしかして……アイツも)

「リーシャナちゃん!取れた!?」
走り寄ってくるアリサ。手には弓を携えていた。
「もしかしてあの矢は……」
「出遅れちゃったから今回は諦めてたんだけど、せめてリーシャナちゃんは取れて欲しいなって」
「アリサちゃん……ありがとう!」

友情を確かめつつ、2人はアクセサリーショップを後にした。

………その様子を見た1人が、睨みつけていた事に2人は気づかなかった。



第2幕「人狼とドラゴンの遭遇」

ヴァルツは、早々に福袋を手にすると店内を模索し始めた。

去年の屈辱を晴らさなくては!!

(奴は何処にいる……)
人の姿でウロウロしている彼は”人狼”である。
が、あの姿は人前で晒す訳にもいかないので、今は窮屈な姿で動いている。
彼の標的は1人。去年の開店してすぐに”絡みつく蔦”を足に受けてしまい、足元がおぼつかなくなってしまったのだ。
視界に捉えた先に見えた金髪エルフ……。アリサへの復讐だった。
 ※ヴァルツの秘密:アリサをゲームから退場させること。

が、どうも見当たらない。
「……いっそレジ前で待つか?」

思考を変え、動こうとした。
足元が去年と別の意味で動けなくなったのはこの後だった。

「グオォォォォォ!!!」

目の前に龍が、ヴァルツより少し大きめの龍が暴れていた。

「」
あまりの事に言葉を失う。
さらに驚きは加速する。

「福袋がえ”な”い”!!奴も”見逃じだ!!」

この龍、話すことができたのである。

「お、おい、みっともないぞ」
話せるといっても落ち着いてもらわなければならない。ヴァルツは龍をなだめようとした。
今にも火を吹きそうな龍は眼光を鋭くして彼を睨みつけた。
「フン!貴様に我の辛さなど分かるものか!!福袋は買えぬし、あのアイドル擬きを吹き飛びせれぬし……」

アイドル……もどき?
何となく身に覚えがあるような気がするヴァルツ。
「あぁ、俺も復讐したい奴が居る」

遠くの方で、アナウンスが鳴り響いた。
「福袋をお買い上げのみなさま。こちらの特設レジの方にお並びください!」
この日は大変売り場が込み合うため個々のテナントではなく、合同の集中レジで会計することになっているため、多くの福袋を手にした者がレジに向かって並んでいた。
当然その列には2人の少女も並んでいたのである。

「「居た……!!」」

声を揃えた2人は目を合わせる。ニヤリと口を揃える。

2”体”は、2人に殴りかかった。
「我こそはファフニール!!去年の屈辱を今晴らすぞ!!」



第3幕「クライマックスフェーズ、レジ前の争奪戦」

「いやぁ……今年は大戦果だったわ……」
満面の笑みを浮かばるそのシノビは、数分前の事を思い出していた。



「天地を焦がす!」
「私の矢が!あなたを貫く!!」
襲うブレスに反撃の矢の嵐。
「私の歌をきけぇ!」
戦闘に集中させまいと、得意の歌で妨害をかませる。
だが、アリサの目の前に鋭い爪が襲い掛かる。

レジ前ではじまったシノビたちによる壮大な福袋争奪戦は、正月早々のイベントと居合わせたお客を喜ばせた。
特に母親や姉妹の付き添いで来ていた荷物持ちの男たちには相当ウケたらしい。
そのおかげで、人が人を呼び雑踏の中お互いの技や回避が思うようにできない状況が続く。

※戦闘場面:雑踏

「……ッチ、逃したか」
「今よ!」
歌を取りやめ、マイクスタンドで応戦。
マトモに喰らったヴァルツは倒れかけたが……
「………ククク、今宵は良い月だ」
ブラッドムーン……隠された力の1つ、人狼の力を一時的に付与する力で耐えることが出来たのだ。

全員が疲労困憊。
ついに、終わりの時が迎えた。

「これでおしまい!」
アリサの放った白銀の矢が、ファフニールとヴァルツの心を捉える。
「我らは決して・・・」
不死身の能力も二度は通用せずヴァルツはその場に倒れこんだ。
「ううううわあああああ!だが、最後に我が業火を受けよ!」
ファフニールが最後に放ったブレスがアリサを捉え、1人と1頭もその場に倒れこんだ。


…………

「あれ?私だけ生き残ってるじゃない」



生き残ったシノビはリーシェナであった。
去年してやられたヴァルツが都合良く福袋を持っていたので、仕返しとばかりに奪取。
あまりにも派手にやりすぎたため、警備員の姿も遠くに見えるが雑踏の中、歩みを進めることができない。
リーシェナはアリサに感謝の言葉を告げ、足早にレジへ向かったのだ。

「開封が楽しみね♪」


エピローグ「シノビが存在する世界」

「なんだなんだ!この騒ぎは!正月早々・・・」

騒ぎを聞きつけた警備員や商業施設のスタッフたちががレジ前に集合していた。

しかし、その場にはたくさんの矢と鉤爪の痕、そしてところどころにある焦げた跡があるだけで騒ぎを起こしたと周りが口々にいう2人の少女、人狼に変身したという青年、そして龍の姿はどこにもなかった。

彼らは途方に暮れる。「またか・・・」と。

この世界では時折、不可解な事件が起きることがある。
この商業施設も、去年似たような騒ぎがあり店内を蔦や鉤爪でボロボロにされた経験があるのだ。

ひとりのアルバイトがぼそりと呟く。

「たぶんもうすぐだな。」

するとどこからともなく煙がフロアを覆う。

レジに並んでいる客は、新たなイベントでもはじまるのかと思い歓喜の声を上げる。

煙に包まれたフロアの中では、複数の黒い影が動いている。


煙が晴れると、商業施設の店長の手には1枚の紙きれが握らされていた。

「ショッピングセンターシャドル様」と書かれた小切手である。

「1・・・10・・・・1000万円!?」

スタッフたちが驚いたのはそれだけではない、矢をはじめとした戦闘の痕跡はすべて消えていたのである。

先ほど呟いたアルバイトがもう一度呟いた。

「今回もうまいことやってくれたね。【比良坂機関】さん。おかげでシノビの存在が表に出ないんだけど。」

彼もシノビを育成する【私立御斎学園】に通うシノビであった。

シノビは影の存在、彼らは決して表に出てはいけないのである。

例え福袋が原因の小競り合いだったとしても、その証拠は綺麗に消さなければいけないのであった。



ゲーム結果と彼らの秘密

PC1 リーシェナ 福袋2個所持 使命達成
           秘密:PC2のヴァルツをゲームから退場させること。

PC2 ヴァルツ  福袋1個獲得するも、PC4アリサの攻撃に敗れ敗退。
           秘密:PC4のアリサをゲームから退場させること。
PC3 ファフニール PC4アリサの攻撃に敗れ敗退。
          秘密:PC1のリーシェナをゲームから退場させること。
PC4 アリサ   PC2とPC3の猛攻に体力を削られ敗退。
          秘密:PC3のファフニールをゲームから退場させること。


あずき視点での感想

私はアリサのPCとしてプレイしたのですが、自分の秘密を握った時点で誰かと組もうと思い。
都合よくリーシェナと組むことが出来たので、戦闘を有利に進めることが出来ました。
しかし、最後の最後のサイコロに嫌われ目的のひとつであるファフニールを退場させることはできたものの自分もやられるはめになってしまい。結果リーシェナの一人勝ちになってしまいました。
今回も面白かったです。GMを務めてメインのストーリーもまとめて執筆してくださったミスドさんありがとうございました。