side kazunomiya



ひょんな流れから、ついに智と俺は関係を持ってしまった。
京に二人で越してきてから、俺自身はそうなる事を何処かで望んでたところも有った。
智は俺に和也って人の面影を重ねて見てしまうからか、なかなか躊躇って
踏み切れなかったみたいだけど、我慢の限界って言ってたから
きっかけなんて、この際俺にはどうでもイイっていうか・・・
急に好きだった人の事を忘れられる筈もないだろうし、俺としては
今は身代わりで抱かれたとしても、最後まで関係を持ってしまえば、
智は俺だけのもの。

それからというもの、まだ正式に求婚された訳でもなかったけど、
智は俺の事を凄く大事にしてくれたし、毎日が幸せだった。

ところが、そんな幸せな毎日を送っていたら、突然この俺に、
御勤め先の神社の神主から縁談の話が舞い込んで来た。

『和之宮、此度、其方の事を是非とも婿養子に迎え入れたいとの
 申し出が有るのだが、一度お顔合わせの都合を着けてはくれぬか?』

和「婿養子・・・でございますか?」

『さよう。京の都でも有名な香の老舗の主の一人娘なのだが
 祭りの時、其方を見て一目惚れされたらしいのだよ。
 綺麗なお嬢さんだから、其方も一目見れば必ず気に入ると思うが。』

和「わ、私は結婚など考えてはおりませぬが・・・」

『そう言うと思うて、一度はお断りしたのだが、あまりにも熱心に
 何度も足を運ばれて、私も困っておるのだよ。何とか一度だけでも
 逢ってやっては貰えぬか?』

神主は、本当に困ってる様子だった。
世話になってるから、簡単に断れなくて

和「お会いするだけであれば、構いませんが・・・」

と、軽はずみにも返事をしてしまったのだった。
返事をしたら、早急に話が進んでしまい、翌日には近くの料亭で
お見合いさながらの顔合わせをする事になってしまった。
勿論、俺は最初からそんなもの断るつもりでしかなくて
神主の顔を立ててやる為、という程度の心積もりでその顔合わせの場に姿を現した。


『これは、これは、和之宮殿、御足労をお掛けしましたな。
 紹介します。うちの一人娘の雅です。』

和「あ、初めまして。和之宮です・・・」

雅「雅と申します///」

見合いを意識してか、物凄い高そうな着物を着てて
恥ずかしそうに、俺の顔もまともに見られないといった感じで
視線を合わすことなく頭を下げた。

『何分、母親が早く亡くなりましたゆえ、父親の私が一人で
 育てて参りましたもので、行き届かない所も有りますが
 何卒宜しくお願いします。』

和「えっと・・・あの・・・」

『年寄りはお邪魔でしょうから、後は二人でゆっくり食事でも楽しまれて下さい。
 雅、和之宮殿に尺を・・・』

雅「あっ・・・はい。只今・・・」

和「いや、酒は結構です。」

『まあ、そう固くならずに。そうだ、これは私の店の香でございますが
 手土産にとお持ち致しましたので、どうかお受け取り下さい。』

和「あ、ありがとうございます。」

御香か・・・智が喜びそうだな。
だけど、今日の見合いの話は、まだ智には一切してなくて、
勿論、最初から断るつもりだから、言う必要も無いと思ってたし。

『それでは、そろそろ私はお暇致します。後はどうぞごゆっくり。』

雅の父親は、そう言って部屋を出て行ってしまい
俺と雅という娘は料理の膳を挟んで向き合い
二人っきりになってしまったのだった。





つづく
















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