星の子
今村夏子
朝日新聞出版
2017-06-07


 は~台風続きでやんなりましたね、どうも、私です。(・◇・)ゞ

 今回は図書館で借りました、今村夏子さんの「星の子」です。この本はノータイトルですが、太宰治賞だの芥川賞候補だの、なんだのかんだの、そんな作家さんらしいですよ。今村、って苗字、なんか古い感じがする。まあ、苗字に古いも新しいもなんもないですけどね。
 


 さて、なんつーか、味もそっけもない小説ですわ。こういうのが文学っていうのが昨今の小説界らしいですけども、なんでかね? 昔は味濃い方が文学じゃなかったかい?

 まーよくこういう類の小説の感想として「不感症の」と私は言いますが、まあこれは不感症まではいかないかな、どうかな。けど、分類しちゃえばそんなような作品ではあります。こういう人って、小学生の頃、作文うまかったんだろうなって感じ。オリジナリティーのかけらもない、どんぐりの背比べを勝ち抜いた感じの人なんでしょうね。もうこういうのは有象無象ですわ。はい、すてきですね~次!って感じ。

 すてきっていっても、前回の恒川光太郎となんか比較になりませんよ? 恒川光太郎は「すてき」で独り立ちできるくらいの確かさはあるわけで、「星の子」の「すてき」はそれこそ書かれた時点で埋もれてるみたいなやつです。次元が違うことは言っときます。

 

 で、どんな話かっつーと、新興宗教の話。それをぽや~っとふんわりと作者のごくごくわずかな想像力を駆使して描いてみましたよって感じ。

 え~、主人公の女の子は生まれた時から体が弱く、そこにつけ込まれる形で両親がすてきなお水を使い始めます。水素水です。嘘です。金星の水とかいうんですけど、それを飲んだり塗ったりするとええんやと。で、そんな家庭で育って行く女の子と、ますますハマる両親と、途中で家出しちゃうお姉ちゃんと、ラスト、両親と女の子は新興宗教の中での幸せを生きて行くのかな~というような、ふんわりとした終わり方。

 人は変わることよりも、少し寒いような気がしても、ぬるま湯に浸り続ける方が楽なのです。まぁ別に本人たちが幸せならいいですけど、作中で家族はどんどん貧乏になっていくので、それを「騙されてる」という人の方が多数がでしょうね。金星の水なんてもんじゃなくても、人は誰しも幻想を信じて生きているわけですし、それが水か神かお金かなんて、そんな違いは微々たるもんですよ。

 そういう物語の裏の想像を作者がもっとできていたなら、こんなお話にはならないだろうなとは思いますが(もっと文字がぎゅっと濃くなると思うんですが)なかなかねー。「金色機械」でも言ったんですけど、作者まで表面的な世界にいるのはやっぱ違う。作者ってのは裏も表も全部知り尽くした上で、表さないといけないと思う。

 話が逸れますが、「ゴールデンゴールド」って漫画があるんですよ。




 それも神の話で、「金色機械」の真髄ってのと重なる部分があると思うんですよ。それはある日、神様を拾った島の女の子の話で、それもね~いまは面白いんですよ。でもなぜ面白いかを作者がわかってない気がするんですよ。ちょっとずつずれて来てる感じがある。だから、まだ既刊の数巻を読んだだけですけど、これ、最後までちゃんと面白いかなあってのがあって。物語の真髄をきちんと見極められていないと、迷走すると思うんですよねえ、この先。

 とまあ、いらぬお節介なんですけど、なかなかね~何が面白いかってのをちゃんと理解して、その上で面白いものを描くってのは難しいと思います。難しいからこそ、面白い作家も一握りしかいないんでしょうが……。いつも引き合いに出しますけど、
「火車」とかね、あのラストを宮部みゆきは完全に理解していて、そこへ向かって物語を進めたと思うんですが、もうそのすごさね。鳥肌モンですよ、まじで。もうその道中、一ミリもずれちゃいけないんですから。


 そりゃあ大変だし、最後、ぴたっと合ったときには「やった!」ですよね。もう繋げられた、それだけで傑作間違いなしですからね。スタンディングオベーションですよ。心からの賛辞を送りますよ。ほんとにね、作品に出て来るもんなんて氷山の一角ってくらい、あの下には何倍もの体積の氷があって、それが作品を支えている。だからこそ傑作になる。それを有象無象の方々にわかっていただきたい。限界まで調べて、想像して、それからやでって理解してもらいたい。

 ……え、そんなこと言うのは何様だって? もちろん小説を愛する一読者ですよ。様はつけねーけど。あー面白い小説が読みたい。なんか適当にブックオフで作家発掘プロジェクト!とかいって買って来た本をつらつら読んでますけど、なんつーか、作家の自覚すらないのかなって人もいますからね。自分で設定した場面なのに、登場人物に突っ込み入れさせるとか。

 別に面白いやつじゃないですよ? メタなやつじゃなくて、普通に自信がないから、「こんなとこでこんなことするなんて~」みたいな突っ込みをしておくことで、作家の保身を図ろうとするやつがいるんすよ。もーどーしよーもない。ない。

 

 ああ、そういえばクッツェーのは買ってあるんですけど、がっつり読めるときに読もうと思って読んでません。今月中には読めるかしら。面白いといいけど、そのうちの一冊で不安なのが「夷狄を待ちながら」ってのがあるんですよ。

 ね、タイトル、不安じゃない? 何がって、「夷狄」って古代中国における野蛮人って意味じゃん? ただの野蛮人じゃないでしょ。でもたぶんこの小説は中国の話ではないと思うんですよ(だったらごめんちょ!)。そう思うので、まず訳が不安だーー。まぁ、中国の話だよね、たぶん。たぶんーー。読書の秋に恥じぬ読書をしたいものですが、みなさまはいかがでしょう(突然)。

 まあ、この世で小説を愛する全ての方が最高の小説に出会えますようにと、久々にお祈りしまして、ではまた次の小説で。ばいばい!(*・ω・)ノ