グリコ・森永事件をモチーフにしたミステリードラマ映画『罪の声』

実際の事件でも脅迫電話に子供の声が使われたそうですが、この映画も、スーツの仕立て屋を営む主人公が父親の遺品から出てきたカセットテープに当時の自分の声で録音された内容が過去に日本を震撼させた未解決事件の脅迫電話の内容と全く同じだったと言うところから、自分の父親が事件に関わっているのではないかとすでに時効を迎えた事件を調べていくお話です。
事件に巻き込まれた子供(星野源)の目線で展開していくのと並行して、当時犯人に翻弄されたマスコミ側から事件を振り返って調べていく記者(小栗旬)がいつしか繋がり、誰があのテープを録ったのか、他の脅迫電話の声の主の子供達は今どうなっているのか、事件に隠された悲しい真実を解き明かしていく、犯罪ミステリー。
実際の事件もご存知のとおり未解決で、”かい人21面相”(映画では”くら魔てんぐ”)を名乗り、青酸入りのお菓子や脅迫状などで世間を騒がしながらも要求した大金は結局手に出来なかった犯人グループは実は事件で脅迫した会社の株価を操作が目的だったという説を本作では取り入れられていますが、犯人グループの正体よりも、時効成立後も事件の呪縛から逃れられずに、人生を振り回された関係者達が、35年の月日を経て解放されていく姿を描いた内容は、ミステリーというよりヒューマンドラマという印象が強く、張られた伏線がきれいに繋がっていく、思った以上に心に響くストーリーでした。
★★★★☆90点
身代金目当てだろうが、なんらかの大義名分があろうが、犯罪では世界は変えられない、むしろ巻き込まれた人々が被る代償の方が大きいことに当の犯人達は気付く事もなく、利己的で同情の余地は無いし、その報いを受けて当然と思うのですが、罪もない人達が巻き込まれるのだけはホント気持ちのいいものでは無いですね。時効が成立しているとはいえ、勧善懲悪とならないのが何かもやっとします。。。