(共同DIY)アルミフレームで室内栽培用ラック棚を製作


1.はじめに

フレームDIYラボではアルミフレームやアルミパイプを使ったDIYを紹介していますが、

興味がある人と一緒に「LINK YOUR DESIGN」という共同DIYも行なっています。

これは実際にアルミフレームやパイプを使ったDIYを一緒に協力しながら行う活動です。

アルミフレームやパイプはとても便利な材料ですが、残念なことにあまり身近にありません。

そのため1人で初めて使おうとした場合、部品選定や使い方などに不安があります。

そこでそのような方と一緒に考えて部品選定から設計、図面作成を行うことで

安心してアルミフレームやパイプのDIYを楽しんでもらうための活動です。

これまで行なってきた共同DIYの様子はこちらから見る事ができます。


(共同DIYサポート事例集)

アルミパイプやアルミフレームを使ってみたいという方と一緒に共同DIYを行っています。これらの材料はとても便利ですが入手性の悪さからあまり知られていません。そのため部品選定や使い方、加工、組立方法など初めての人はわかりにくいです。そこで共同DIYでは誰もが扱えるようにサポートしています。


今回は一般社団法人イノプレックスと一緒に室内栽培用ラックを製作しました。

こちらの法人では主に室内用植物工場や施設園芸を扱われています。

特にLEDや光に関する技術をお持ちで植物栽培における重要性を紹介されています。

この度、体が不自由な方が栽培される室内用栽培ラックを作られることとなり、

その栽培ラックをアルミフレームで製作したい旨のご相談をいただきました。

個人的な趣味で始めたフレームDIYラボが社会貢献している感じがして嬉しいですね(笑)

今回のDIYは作業者に危険が及ばないようにラックの強度が大きなポイントとなります。

そこで今回、初めて構造計算を導入して事前に強度をより正確に検討してみました。

それではどんなラックが完成したのかご覧下さい。




2. 栽培用ラックの仕様

これまでも何度かラックを作られていたのでしっかりとした仕様書を戴きました。

普段はイメージや写真から始ることが多いので、詳細な資料を貰えるととても助かります。

使用する材料はアルミフレームです。

アルミは錆びないので湿気が多い場所や水がある所でも安心して使う方ができます。


(家庭DIYで利用できるアルミ材料)

 家庭DIYで主に使用される材料は木材で金属を使われることはあまりありません。それは金属が使いにくい、加工が難しいという誤った印象があるためです。しかしアルミ材料は加工性がよく、水に濡れても錆びず、軽くて強いというとても便利な性質があります。ここでは簡単に利用できるアルミ材料を紹介します。


アルミフレームで3段の棚を作り、その棚に発砲スチロールでできたバス(容器)を置きます。

そしてこのバスに水を入れて栽培するそうです。

またラックの各段には栽培で必要な光を供給するLEDライトが取付き、

ラックの横には水を入れるための塩ビ配管を取り付けます。

私の役割は強くて安いラックの設計とLEDライトや塩ビ配管を取り付ける部品などを

選定することになります。

アルミフレームでラックを設計する事は簡単ですが、十分な強度を持たせて、

かつ安く作る事が難しいですね。

特に身体が不自由な方に安心して使ってもらえるようにしっかりと設計しないといけません。

そこで今回はモデルを作ってメーカに強度計算を依頼して最も適したラックを考えます。

3. 栽培用ラックの設計

3.1 ラック設計の概要

棚の強度設計では

  ①アルミフレーム自体の強度

  ②フレーム接合部の強度

を考える必要があります。

アルミフレームは非常に多くのラインナップが用意されています。

アルミフレーム断面サイズも(15×15)mmから(90×90)mmまで幅広く、小さい棚から

大型のカーポートまで作れるようなサイズが用意されています。

アルミフレーム断面形状も正方形だけでなく長方形や弧形状など多くの種類があります。

そのため用途に適したアルミフレームを選定することができます。


(アルミフレームの種類)

 アルミフレームは断面サイズで分類されており、(15×15mm)から(90×90mm)まで幅広いラインナップとなっています。断面形状も正方形だけでなく、長方形もあります。そのため用途に応じて使い分けが可能で、例えばカーポートから小さな棚まで幅広いDIYに適応できます。フレームサイズと一緒にブラケットなどの部品もそのサイズ専用となるので注意が必要です。


アルミフレーム自体の強度では梁スパン長さとフレームサイズがポイントです。

費用を抑えようとした場合、材料の使用量をなるべく減らした設計となるため

梁スパンが長くなってしまいます。

スパンが長いとその分たわみやすくなり、変形量が増えます。

そのためフレームサイズを増やして強度を上げるか、それとも小さいサイズのまま

補強を入れて強くする必要があります。

アルミフレームの強度についてはこちらの記事に詳しく説明しています。


(アルミフレームの強度計算)

 アルミフレームを使ってDIYする際、構造強度は①単体強度、②BOX強度、③接合強度の3つを考える必要があります。その全ての強度が想定荷重よりも高ければ安心して使うことができます。


次にアルミフレーム接合部の強度ですが、こちらはブラケットの接合強度になります。

ブラケットとはアルミフレームどうしを連結する際に使用する部品です。

ブラケットは種類や使い方で強度が変わり、モーメント荷重に対して弱くなるため

構造と一緒に考える必要があります。


(ブラケットの種類)

 アルミフレームはブラケットと呼ばれる部品で連結されます。ブラケットは2つのネジ穴を持ち、ここにボルトを差し込んで専用ナットと締め付けることでアルミフレームに固定されます。フレームどうしを直角に連結することが多いですが、別の角度に固定するブラケットもあります。ブラケットは使い方によって連結強度が変わるので注意が必要です。


棚で最も壊れやすいのがブラケット接合部なので余裕を持った強度を持つように考えます。

フレームサイズを上げて梁スパンを長くしてもブラケットが耐えきれずに

外れる事がないように考える必要があります。

ブラケットは種類や使い方に応じて接合強度が決まっており、必要な強度が得られるように

選定と使い方を考える必要があります。

今回、相談戴いたラックの大まかな仕様は次の通りです。

・ラックは全部で4段で上から3段目までに栽培用ベッドを設置する。

 各段の間隔は400mmで1段目だけ600mmとする。

・ベッドの重量は約65kgでそれを各段に設置する。

・ラックの幅と奥行きは2,440mm×1,300mm。

・ベッドに光を当てるためLEDライトを設置できるようにする。

これまでは特定の相談者向けで部品選定、構造を自分で考えて提案してきましたが、

今回は体の不自由な不特定の方々が使われます。

そこでより安全性を確保するためにメーカに依頼して構造計算を行いました。


3.2  ラック設計モデル

アルミフレームのサイズやコストを考慮して次の3つの設計モデルを考えました。

設計ポイントは栽培ラックのコストと強度です。

両者の間にはトレードオフの関係があるため求められる強度を満足して、

かつ費用を抑えた設計を考えます。

設計モデル①ツ   強度が最も強い設計

求められた耐荷重を満足するためにはフレームサイズを40mm以上にして、

梁のスパンを1m以下にすれば安心です。

そこでフレームサイズを40mmにして柱が6本ある構造を考えました。

こうすれば梁のスパンが1m以下になり、梁中心のたわみが少なくなります。

更に柱を増やすことでブラケットの数も増えるため接合部強度も高くなります。

設計モデル②   構造変更によるコストダウン

設計モデル①をベースに構造を少しアレンジしてコストダウンしたモデルを考えました。

フレームサイズはそのままで中間の柱をなくして梁を長くした構造です。

こうすれば柱の本数が6本から4本に少なくなり、ブラケットの数も少なくなります。

これでコストは下がるものの、梁が長くなったためたわみ量が増えて強度が低下します。

設計モデル③   フレームサイズによるコストダウン

これまではアルミフレームサイズを40mmで考えてきましたが、

これを30mmにすればもっとコストダウンが可能です。

そこで設計モデル①のフレーム断面サイズを40mmから30mmに変更してみました。

フレーム単体の強度は大きな低下しますが、

柱を6本設けることで梁のスパンを短くたわみ量を少なくします。


3.3  計算結果

これらの3つモデルで構造計算、費用計算を行い、費用対強度の関係を調べました。

構造計算は自分ではできないのでメーカに依頼します。

メーカの忙しさによりますが、約1週間で回答が届きます。

計算ではラックの各段に均等荷重を想定し各フレームや接合部にかかる応力を計算して、

最も弱くなる部分を求めます。

この結果に費用を合わせて考えて表にまとめました。

設計モデル費用を1.0として他のモデルの費用を計算しています。

最大たわみ量費用
設計モデル①0.7mm1.0
設計モデル②2.8mm0.8
設計モデル③2.3mm0.6

やはり設計モデル①が最もたわみ量が少なく、費用も高くなっています。

設計モデル②で柱を減らしてスパンを長くする構造よりも柱はそのままで

フレームサイズを小さくして造った方が安くて強いという結果になりました。

このように同じラックでも作り方や材料によって強さと費用が全然異なるため

十分に検討しながら設計する必要があります。

この結果を踏まえて相談者の方と話し合い、今回は安全面を重視した設計モデル①を

製作することに決めました。

4. 栽培用ラックの製作

設計モデル①の栽培用ラックを製作することになりましたので、必要な部品をまとめて

お見積りして部品を発送します。

アルミフレームはメーカ営業所から直接発送されるため運送費用はメーカ負担です。

例え4mのフレームや100本まとめて購入されても運送費が別途かかることはありません。

これは大変ありがたいサービスです。


(アルミフレームの購入方法)

アルミフレームやパイプの欠点は入手性の悪さです。ホームセンターでは販売されておらずほとんどネット販売のみです。一般的にはミスミやモノタロウなどのweb商社経由で購入しますが、個人では難しいです。しかしメルカリなどでも購入でき、必要部品を一括購入できる方法がここにはありますよ。


部品が届けば、後は相談者の方が組み立てて完成です。

アルミフレームの組立作業のほとんどは六角レンチで行えます。

基本的な作業は六角レンチでボルトを締めこんでいくだけの単純作業です。

取付位置は自由に変更可能で、フレームどうしを直角に取り付ける際もブラケットが

直角を出してくれるので意図的にずらさない限りは斜めになることがありません。

ここが木材を使ったラックとの大きな違いで作業の慣れや技術を必要としません。


(アルミフレームの組立て方法)

 アルミフレームやアルミパイプの組立ては六角ボルトを締めこむだけの簡単作業です。六角レンチ1本あれば全てを組み立てることができます。ウチの小学2年生の子供でもこの通り。誰が作っても同じように組みあがるので技術が要らず、初めての方やDIYしない人も安心して利用できます。


相談者の方はこれまでアルミフレームを使った経験があったので数時間で完成したそうです。

簡単に組み立てられますが、初めて見た時に部品の種類や使用場所はわからないので

私の方で組図や簡単な組立方法をご連絡するようにしています。

「LINK YOUR DESIGN」では一緒にDIYを完成させることを目標としているので、

設計だけでなく製作時もできる限りアドバイスするようにしています。

詳しいやり取りはこちらからご覧いただけます。


(相談者とのやり取り内容)

 相談者とはメールと専用ページを使ってやり取りを進めます。設計をする際に図や写真を多用するため私からの回答はこの専用ページにまとめるようにしています。相談者からはメールで回答がくるため、このページだけ見ると一方通行で分かりにくいですが、大体のイメージはつかめると思います。



5. さいごに

何気なく始めた共同DIYですが、社会貢献となるようなことができるとは思いませんでした。

普段の仕事は工場作業なので事務経験がなく領収書などを初めて作成して勉強になりました。

棚やラックは色んな構造で作ることができますが、コストや強度が大きく変わることも

改めて知ることができました。

私自身、色んな事を学べた共同DIYだったと思います。

これからも「LINK YOUR DESIGN」を通じて相談のあった共同DIYを紹介していくので

もし興味がありましたら、気軽に声をかけて下さい。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。


アルミフレームやパイプを使ったDIYを一緒にしてみませんか?

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そんな方にも安心で手間がかからず欲しい物が手に入る共同DIYです。

一人で考えるよりも複数人で考えた方がよりいいアイデアも生まれます。

まず設計や構想は御自分で考えて欲しいものをイメージしてください。

もし自分で加工から組み立てまでされる方は必要に応じてアドバイスを致しますし、

手間な部品手配や加工をしたくない方はこちらで実施して組み立てる状態の部品を

お送りすることもできます。

初めて使う材料で不安な方も安心してチャレンジすることができますよ。

気に入った物が見つからない場合は試してみては如何でしょうか?

サポートやアドバイスは無料で実施しているためできる事、できない事があります。

詳しいサポート内容や進め方はこちらで説明しています。

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 「フレームラボショップ

またこれまでのサポート事例はこちら。

 「サポート事例集





これまでアルミパイプやアルミフレームでDIYした事例です。

気になるDIYがありましたらご覧ください。


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