岐伯はこたえて言いました。

 

「それは、風の邪気というものの、性質を知れば分かります。

 

まず、体の中に入った風の邪気は、

皮毛と肌膚の間に入り込んでしまえば、自分で動くことが出来ません。

内に行くことも出来ず、外にも出られません。

 

たとえば、風の邪気が、足の太陽膀胱経の流れに入って

どこかの経脈の兪穴から出て、肉と肉の間に散らばります。

そこに、邪気から体を守るために、衛気がやってきます。

しかし、邪気は動けないので、じっと動かず、

衛気と邪気の戦いは、持久戦になり、にらみ合いが続きます。

こうして衛気がとどまると、

気がつっかえて通れなくなるため、

痛みも痒みも分からないところがあったり、

肌肉が丸くふくれて、中身がいっぱいにつまったおできが出来ます。」

 

 

王様は、体をさわって、感じが分からないところが無いか、

たたいたり、なでたりしてみました。

どこも、分からない所はなさそうです。

岐伯は続けて言いました。

 

「また、風の邪気は、同じ邪気でも、、

腠理が開く時には、顔を洗ったような顔で寒がり、

腠理が閉じる時には、イライラとして熱がる、というように、

寒の症状も、熱の症状も、現れます。

 

風の邪気が体の奥深くに入って、

内臓を寒くすると、食べたり飲んだりするのが衰え、

内臓を熱くすると、肌肉が消耗します。(寒がりの王様5

 

これは、寒熱という病で、

食べ物の味覚が分からないことを、とても恐れて、食べることが出来なくなります。

風の邪気と寒邪が居座っていなくならなければ、

はげしい熱によって栄気が腐るため、気がきれいではなくなり

鼻の柱が崩れ、顔色が無くなり、

おできがつぶれて汁や膿が出るようになります。

寒熱のうち、はげしい病を、癘風といいます。

 

そして、風の邪気は、体の中でよく動くので、

いろんな変化が起こり、変化して他の病になります。

 

このように体は、

風の邪気によって、様々な症状が現れます。

その数とても多く、たくさんの病が、原因は風の邪気であります。

だから、『風(の邪気)は百病の長』と言われています。」(王様と真臓脈14