岐伯は、紙を持ってきて、絵を描きました。

 

「王様、ご覧下さい。

人の体は、このように、層になっております。

一番浅いのは、皮膚から生えているうぶ毛で、

一番深いのは、骨の中にある髄です。

 

医者はまず、どの深さに病があるのか、見定めます。

そして、鍼を刺す時には、正しい深さでなければいけません。

 

うぶ毛と毛穴の浅さに病があるのに、皮膚の深さまで刺してしまえば、

肺にショックを与えてしまいます。

秋に温瘧(王様と瘧の治療8)になり、

水がさかのぼるようにゾクゾクと寒さに震えます。

 

皮膚の深さに病があるのに、肉の深さまで刺してしまえば、

脾にショックを与えてしまいます。

一年で、四つの季節に十八日ずつ、七十二日ある土用の日に

お腹が張れて、胸が苦しくなり、食べたくなくなります。

 

肉の深さに病があるのに、脈まで刺してしまえば、

心にショックを与えてしまいます。

夏に心痛の病になります。

 

脈の深さに病があるのに、筋の深さまで刺してしまえば、

肝にショックを与えてしまいます。

春に熱が出て、筋がゆるむ病になります。

 

筋の深さに病があるのに、骨の深さまで刺してしまえば、

腎にショックを与えてしまいます。

冬に腰が腫れて痛む病になります。

 

骨の深さに病があるのに、髄の深さまで刺してしまえば、

金属が溶けてなくなるように、脛骨がやわらかくなり、

体の締まりが無くなります。」

 

王様はおどろいて言いました。

 

「鍼を深く臓まで刺してしまったために、

五臓がショックを受けるのだと思っていたら、そうではなくて、

正しい位置より深く刺すことが、五臓にショックを与えて、

後に大きな病にしてしまうのだな。」

 

岐伯はうなずきました。

 

王様は、足の脛をさわってみました。

掴んで押すと、しっかりと固い骨が触れました。

この骨が溶けてやわらかくなるなんて、こわいなあと思いました。

 

(王様と鍼の深さ 終)

-----------------------------------------------

読んでくださり、ありがとうございました。

ここで一旦、しばらくの間、ブログをお休みさせていただきます。

 

実は、新しい絵本冊子を作り始めています。

 

私の、東洋医学の絵本を作る活動は、

お金をかけないことを家族と約束して、取り組んできました。

 

去年、イベントをきっかけに、一度だけという約束で、自費制作に踏み切ったのが

陰陽五行 まわるき」です。

 

この本が、ありがたいことに、たくさんの方に買っていただけていて、

とてもとても感謝しています。

 

そして、その様子を見ている家族が、

「もう一冊ぐらい、作ってもええんちゃう?」

と言ってくれました。

おそらく、最後のチャンスです。

全力を注いで、伝えたいを込めた本を作りたいと思います。

 

作る絵本のテーマは、未病です。

「東洋医学は、生き方」が、絵本で広まってほしい、と考えています。

 

黄帝内経素問は、この後、51刺斎論、52刺禁論、53刺志論、と

鍼の刺し方の話が続きます。

なので、すごく中途半端なところで区切ってしまうのですが、

絵本が完成したら、戻ってきますので、

どうか、あたたかく、待っててもらえるとうれしいです。