字が………字が小さくて読めない!
愚痴りながらも
目をすがめながら読み通す。

十二夜殺人事件


「十二夜」は
事件には何の関わりもございません。
これはイギリスのプレパラトリースクールが舞台で、
十二夜はそこで少年たちが上演する劇なんです。


最後の最後、
幕切れに舞台は開きます。



ただ、
こんな風情が
関係あると言えばございます。


たいそうな美少年が
登場します。


その美少年に恋してる教師が
上段右、オーシーノ公爵を演じ、
オーシーノが恋するオリヴィアを
その少年が演じるよう教師は配役します。



その教師が少年にふさわしい人物で
互いに恋してるなら
物語の進む方向も違うでしょうが、
そうはならない。


イギリス
良家の子弟
全寮制学校
ってのが
物語の舞台で
その味わいもそこに尽きる感じです。



「そんなこと聞いてるんじゃないよ。
 僕が聞きたいのは
 どうして大人が少年に夢中になるのかってことなんだ。
 コニー(その教師)をごらんよ。
 ジャレッドを見るたびに
 頬を染めて膝をがくがくさせる。」
「原因は尻にある。」とジョスリンが言った。
「かなりいい形をしてるからな」とマクマートリーが言った。
彼は小さな姿見の前で
裸のままクルリと回ってみせた。



みたいな
最年長が14際の集団。
礼節を心得てその身分にふさわしく学業に励みますが、
純情な教師らより一枚上手です。



この学園物語を
スリリングに展開させるのが
教師として潜入した刑事です。


優等生の美少年クラスではなく、
ちょうどタイミングよくノイローゼになって担任が辞めてしまったクラスを
マニュフォールドという刑事が
完膚なきまでに粉砕するところから
学園物語は始まります。




昭和58年発行
集英社文庫「十二夜殺人事件」
だいぶ汚れてしまいました。
この本、
たぶん断捨離したら二度と読めない
って思いまして
ずっと抱え込んでおります。


表紙は外してしまいました。
だって、


こうでしたんで。
あ、
美術2すれすれの3だった分際で
文句言うわけじゃないです。
えっと………どこにこんな女性が?





少年たちに
すっかり馬鹿にされてるコニー(先生です先生)も、
ジャレッドが誘拐される場面では
拳銃をものともせず飛びかかるという勇気を示せて
何よりです。

もっとも
殴り倒されて終了で、
実際の救出はマニュフォールドでしたが、
勇気は勇気ですよね。



さて、
店主、
ほんとに
これ捨てたらそれっきりになると
思いました。




これは整理整頓のたびに
そう思っては
残してきた本です。





イギリスのプレップスクール
しかも貴族の館をそのまま学校としたという舞台設定。
昭和58年でしたら
そこを前面に押し出した表紙で
多くの少女を釣り上げることができたでしょうに、
この表紙絵はあかんかった。

店主は〝十二夜〟に惹かれて棚から抜きました。
表紙が見えてたら開かなかったに違いない。





そして、
この本は主人には勧めません。


主人はミステリーを愛する男なんです。


読んでいて
改めて
おいおい これはさー
と思いますのは、
ジャレッド誘拐のテロリスト登場って
読者に美少年危機一髪のサービスのため???
というあたりでしょうか。


連続少年殺人事件と
イスラエル大使の御子息を狙うテロが
並行してます。


しかも
殺人事件の方、
最後の最後、
テロリスト阻止からどどっと調査開始。


あとがきに
マイケル・ギルバートは推理のための推理小説を書かない
とございます。

実際、
読んでいて、
不思議に〝どの教師が犯人か?〟には
ほとんど興味関心が動きませんでした。

これですと、
ミステリーファンが読まない。

☆聖セバスティアンの殉教
 グイド・レーニ作




今回
大人になって読み返して
テーマに感じましたのは〝サディズム〟です。
プレップスクールを堪能しつつも
繰り返し挟まれる
サディズムを語る言葉が
場面と共に残りました。


ベッドに横になって眠ろうとしながら、
マクマートリーは自らを主役に仕立てて物語をやり直していた。
片手に銃をもって暗闇に立つ。
ジャレッドが倒れる。
背の高い男めがけて銃を水平射ちする。
男が膝から崩れる。
その図を想像した時、
刺すような興奮が胃のあたりに生じ、
下に伝わって太腿を通り、
足の裏から抜け出ていくように思えた。


子どもはみんなサディストだ。
サディズムはやがて性欲に変わっていく。
なーんていう記述には
なかなか頷きたくないものがございます。

ですが、
マクマートリーの興奮は
問答無用で引き付けられました。
いいなというのではなく、
ただその様子を見つめてしまうという感じです。


どなたにお勧めというのも難しい。
が、
字が小さいよー
泣きながら
テロと捜査と学園物語が入り交ざり
うわー速読きかなーい
不親切な構成だよなー
と愚痴りながらも
また読み通してしまうのだから
その魅力がないとは言えません。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。




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