黄砂アレルギーとは

「黄砂」という言葉は、ニュースなどで何となく耳にしたことがあるのではないでしょうか。
まず初めに、黄砂とはどのようなもので、なぜアレルギーの原因となるのか、黄砂アレルギーになりやすい時期はいつなのか、について解説します。

黄砂とは

中国やモンゴルの砂漠の砂やちりが、偏西風にのって日本まで飛んでくる現象を「黄砂」といいます。
中国での砂漠化などの影響により、黄砂の飛散量は年々増えています。
飛散量の多い日は、車や建物、洗濯物などに黄砂が積もっているのが確認できるほどで、とても厄介です。
黄砂の飛散量は、気象庁のホームページなどで確認できます。

どうして黄砂でアレルギーが起こるの?

日本へ飛んでくる過程で、黄砂には大気汚染物質やほこり・ゴミ・ダニなどが付着します。
こうしたものが体内に入り込むことで、アレルギーを引き起こしてしまうのです。
黄砂の粒子の大きさは約4μmと大変小さいため、体に取り込まれやすく、アレルギー症状が重症化しやすい特徴があります。

黄砂アレルギーになりやすい季節は?

黄砂は一年中日本に飛んできていますが、例年2月ごろから増え始め、飛散量のピークは3月から5月となります。これはスギ花粉症の時期とちょうど重なります。
これまで花粉症ではなかったのに、突然花粉症のような症状が出始めた、花粉が少ない日なのにアレルギー症状がある、というような場合は花粉症ではなく、黄砂アレルギーかもしれません。
また、黄砂はそれ自体がアレルギーを引き起こすだけでなく、花粉症を悪化させるということも分かってきています。

黄砂アレルギーの症状

次に、黄砂アレルギーの症状について解説します。

黄砂アレルギーの症状は?

黄砂アレルギーでは、花粉症と同じような症状が出ます。

・目のかゆみ、皮膚のかゆみ
・くしゃみ、鼻水、鼻づまり
・のどの痛み
・咳
・頭痛

また、黄砂はスギ花粉よりも粒子が細かいため、肺の奥まで吸い込まれやすく、気管支炎や喘息の原因となってしまうことがあるために注意が必要です。

黄砂による皮膚炎と金属アレルギー

黄砂によって皮膚のかゆみや湿疹などの症状が出る方は、金属アレルギーの傾向があるといわれています。
黄砂に含まれる金属物質に反応し、皮膚の炎症が引き起こされている可能性があるからです。
顔や首などの露出の多い部分だけでなく、頭皮がかゆくなる場合もあります。

黄砂で皮膚炎を起こしてしまう方は、外出時はなるべく肌を露出させないようにすることが大切です。
帽子をかぶることも効果的です。外出先から帰ったら、顔や露出部を優しく洗うようにしましょう。

黄砂アレルギーの検査

現在のところ、黄砂アレルギーかどうかを検査する方法はありません。
基本的には、「黄砂の飛散量が多いときに症状が悪化する」という状況から判断します。
また、花粉やダニ、ホコリなどのアレルギー検査の結果から、黄砂アレルギーかどうかを推測することができます。

黄砂アレルギーの治療

黄砂アレルギーの治療は、薬によって症状を和らげつつ、黄砂をなるべく排除する生活環境を整えることが大切になります。
黄砂アレルギーの治療や対策方法について解説します。

黄砂アレルギーに効く薬はある?

黄砂アレルギー自体を治す薬はありませんので、薬での治療は症状を緩和させる対症療法となります。
目や皮膚のかゆみ・鼻水・鼻づまりには、抗ヒスタミン薬という飲み薬を使います。
目のかゆみがひどい場合には点眼薬、皮膚症状にはステロイドの塗り薬が処方されることもあります。

黄砂から身を守るための対策

黄砂アレルギーの対策として最も重要なのは、できるだけ黄砂を体に付着させない、吸い込まないことです。
そのために、次のような対策を行いましょう。

・黄砂の飛散状況を確認し、飛散量が多い日はなるべく外出を控える
・黄砂をブロックできるフィルターを使ったマスクを着用する
・外出の際は、黄砂が付着しにくいナイロン製の服や上着を着る
・帽子をかぶり、頭皮や髪に黄砂が付着するのを防ぐ
・帰宅後は手洗い、洗顔、うがいを行う
・洗濯物は部屋干しにする
・空気清浄機を使う
・濡れた雑巾やウェットタイプのシートでこまめに床を拭く

人の動きで黄砂が舞わないよう、床掃除は朝一番に行うのがおすすめです。

黄砂アレルギーかなと思ったら

黄砂は粒子が細かく体の奥まで入り込みやすいため、症状が重くなりがちです。
放っておくと日常生活に大きな支障が生じてしまいます。
黄砂アレルギーかもしれないと思ったら、悩まずに医師へ相談することをおすすめします。

黄砂アレルギーで来院された方の当院での診療の流れ

1. 問診

症状について詳しくお話を聞きます。黄砂アレルギー以外の病気の可能性がないか判断します。
(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)

2. 身体診察

呼吸の音に異常はないかなど、医師が丁寧に診察を行います。

3. 検査

黄砂アレルギーを調べる検査はありませんが、参考のためにスギやダニ、ハウスダストなどのアレルギー血液検査を行う場合もあります。
アレルゲンを調べる血液検査は、結果が出るまでに1週間ほどかかります。

4. 処方

アレルギーの症状を緩和させるための薬を処方します。
今までスギ花粉症を指摘されたことがないのに花粉症の症状が出る、スギがそんなに飛んでいない日にもアレルギー症状が出るといった場合には、黄砂アレルギーの可能性があります。
黄砂アレルギーは適切な薬を使用することで症状を改善させることができます。


 

 

黄砂とは?

黄砂とは中国をはじめ東アジアのゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などの砂漠地帯や、黄河流域の黄土が堆積した黄土地帯から発生する砂やちりのことです。黄砂は強風によって巻き上げられ日本などの周辺大陸まで偏西風に乗って飛散し黄砂現象を起こします。
黄砂が日本に影響を及ぼすのは毎年2月頃から春にかけて、花粉の時期と重なることが多いです。黄砂が発生する地域や強風の程度などによってその年の飛散量は変化します。日本では中国大陸に近い九州、西日本、北陸地方で多く観測されますが、飛散量が多いと空が黄褐色に曇るほど目で確認することができます。
黄砂は発生してからおよそ48時間で日本の上空にたどり着くとされています。数十μm以上の大きな粒子の黄砂はそのまま落下するのですが、1〜30μm以下の小さな粒子の黄砂は偏西風に乗って遠くまで飛ばされます。飛ばされる過程で黄砂は微生物の死骸や金属類を巻き込み、特に工業地帯を経由してくると汚染物質など様々なアレルギーを引き起こす有害物質を含んでいます。黄砂は昔から存在する自然現象ではあるのですが、近年の森林伐採や砂漠化といった人為的な要因によっても被害は増大しているといわれています。

黄砂と花粉の関係

花粉症のメカニズムとして、花粉の表面に付着したアレルゲン物質(Cry j1)、花粉内部にあるアレルゲン物質(Cry j2)、それらが体内に侵入することでアレルギー症状を引き起こします。花粉そのものは30μm程度の大きさなので、肺までたどり着くことはありません。ところがアレルゲン物質の大きさは1. 1μm以下ですので、呼吸器の奥深く、肺にまで到達してしまうのです。
花粉は自然に浮遊している状態で割れるのは20%程度と言われています。ところが黄砂や大気汚染物質などに接触すると80%も割れてしまうのです。また、黄砂はPM2.5など有害な化学物質を付着させているので、PM2.5の主成分である硫酸塩や硝酸塩などにより、花粉が破裂しやすくなることがわかっています。さらに最近の研究により、黄砂などに含まれたアレルゲン物質は、花粉のアレルゲン物質をさらに変化させ、より強力なアレルギー症状を引き起こす可能性があることもわかってきました。
今年のように花粉症が酷くなる原因には純粋な花粉量の増加というよりも、例年にない程の黄砂によって大量に破壊された花粉との相乗効果が考えられます。今までの花粉症の時の咳や喘息、呼吸器症状などがより悪化するため特に注意が必要です。

PM2.5とは?

 

PM2.5は「Particulate matter2.5」の略で、大気中に浮遊している2.5μm以下の微小な粒子、微小粒子状物質のことです。1μmは1㎜の1000分の1なので、髪の毛の太さや花粉と比べて遥かに小さい物質ということがわかります。PM2.5の主成分は炭素成分、硫酸塩、硝酸塩のほか、アンモニウム塩、ナトリウム、アルミニウム、ケイ素など様々な成分が含有されています。
PM2.5の発生源は、一次生成粒子と二次生成粒子に分けられます。一次生成粒子は、焼却炉やボイラーなどの煙を発生させる施設や、自動車、船、飛行機などの乗り物、火山灰など自然発生のものやタバコの煙なども含まれます。二次生成粒子は工場から発生される窒素酸化物や硫黄酸化物などの物質が大気中で化学反応を起こして生成されたものです。発生する地域や季節によってその素性は変動し、国内では例年冬から春先にかけてPM2.5の濃度が上昇されると報告されています。

黄砂とPM2.5が咳に及ぼす影響

 

黄砂もPM2.5もその粒子の細かさから、粒子が肺にまで入り込み、気管支などの呼吸器系や循環器系に影響を及ぼします。黄砂・PM2.5のアレルギー検査項目は現在はありませんが、花粉症ではないのに鼻水や咳、目のかゆみのようなアレルギー症状が起きる人は、黄砂・PM2.5の影響が考えられます。
花粉に黄砂・PM2.5が付着すると、含有されている化学物質によりアレルギー症状をより悪化させてしまいます。特に喘息や気管支炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のある人は、呼吸器症状の悪化、肺機能の低下がみられます。
PM2.5の環境基準値として、環境省では「1年平均値が15㎍/㎥以下であり、1日平均値が35㎍/㎥以下であること」と定められています。ただし、呼吸器疾患のある方や高齢者、お子さんにとってはこれより低い基準値でも健康被害が出る可能性もあるとされています。

黄砂とPM2.5の対策

黄砂もPM2.5も花粉と同様に吸い込まない、体に付着させないことが重要です。ただし黄砂・PM2.5は花粉よりも粒子が小さいので通常のマスクでは完全に防ぐことは難しいです。最近ではPM2.5も防止するマスクが販売されているので、できるだけ細かい粒子を防ぐフィルターのついたマスクを選ぶと良いでしょう。メガネやゴーグル、帽子の着用をし、粒子が落ちやすいように衣類もツルツルとした生地のものを選びましょう。外出から帰った際には家に入る前に払い落とすことが大切です。部屋の換気も最低限の換気で済ませ、侵入してきた黄砂・PM2.5は拭き掃除で取り除くようにしましょう。花粉症の方や喘息を持っている方はお薬をきちんと飲み、咳やアレルギー症状が酷くならないようにコントロールする必要があります。
環境省や気象庁、お住いの自治体のホームページなどからリアルタイムで黄砂・PM2.5の飛散状況を調べることができます。濃度の基準値が超えている場合は不要な外出は避けることも大切です。