久々の政治のお話です。というほど政治の話ではなく、以前も少し書いていた、セクハラだとかそういった類の話になります。

ただいまアメリカはこの話題でもちきりです。

ローカルニュースはともかく、ニュースチャンネルはずっとこの話をしています。

 

米最高裁判事候補、暴行疑惑を全面否定 議会証言で告発女性と主張対立

 

トランプはおそらく自らに優しい、というか大統領権限をこれまでの判事よりも広くとらえようとする傾向のある、

かなり保守派の判事、カバノー氏を最高裁判事に任命しようとしていまして、

この任命により、最高裁の保守とリベラルのバランスが保守よりになってしまうので、

民主党などは「何をしてでも任命阻止」と宣言し、この任命プロセスをいろいろと引き延ばしてきたのです。

 

で、その任命プロセス完了まであとわずかになって、に突然湧きだしたのがこのお話。

36年前の性的暴行未遂容疑。

そして、民主党はこんな疑惑がでたんだから、FBIに捜査をしてもらってからじゃないと最終投票できないでしょう、と言っているのです。

この女性も最初は匿名でしたが、名乗らざるを得なくなり、最初は出たくなかったけれども意を決して先日の公聴会で証言した、という流れです。

 

共和党はこの一連の告発を政治ショーであり、ただの妨害工作、と一蹴しています。

民主党は「勇気をもって告発したこの女性の話を信用しないとは」「とにかく捜査するべき」と述べ、

議事堂外では「強姦魔のカバノー反対!女を馬鹿にするな!」とシュプレヒコールが上がっています。

 

私も先日の公聴会の映像を少し見ました。

この女性の言っていることが100%嘘だとは思いません。

きっと、押し倒されて、服の上から触られて、叫ぼうとしたら口を塞がれた、という恐ろしい経験をしたのだろうと思います。

彼女がそのトラウマに生涯苦しめられてきたのも事実なんだと思います。

 

でも、彼女、この事件が、

正確に、何月何日、そしてどこで起こった(誰の家)のか覚えていないのです。

そして、事件が起こった後にも誰にも話していないと。

それでも、100%自分を襲ったのはカバノー氏だと。

しかも、これは36年前の話です。

 

彼女の擁護者は性的暴力の被害者というのはそういうもの、

記憶に封印をして、忘れようとする、

だから正確な日時・場所等は覚えていないし、誰にも言わないのもよくあること、と言います。

確かにそうだとも思います。

 

でも、この場合、加害者とされた男性はどうしたらよいのでしょうか?

悪魔の証明です。

起こらなかったことを起こらなかったと示すのが一番難しいのです。

 

よって過去の行状によって信憑性を探ることになります。彼は民主党議員に、

高校時代にビールを相当量飲んでいたでしょう、とか

お酒を飲み過ぎて記憶を失ったことは?などという詰問、

大学時代のルームメイトの話として、相当飲んで荒れることがあった、などの証言を突き付けられています。

 

で、ここでカバノー氏が、詰問者に、

あなたは(記憶をなくしたことが)ないのか? 

とやや怒りの混じった応答をしているところなどが何度も報道されています。

 

状況証拠としては、当時その場にいた、と彼女(被害者)が証言している人も、そんな事件(パーティそのもの)があったことを否定しています。

 

それでも、時折声を詰まらせながら話した彼女を信じる、と連帯の声が上がっています。

捜査をせよ、捜査をせよ、と。

 

ちなみに、

彼女はこの性的暴行未遂の告発を7月末ごろに民主党議員に送っています。

彼女は匿名にしたかったのにどこからか情報がもれ、

指名投票直前にこの話が公になった。。

彼女は意を決してワシントンポストのインタビューに実名で応じるしかなくなり、公聴会にも出ざるを得なくなった。

(この公聴会に出る出ないで更に当初のスケジュールが遅延しています)

 

そもそもなぜ民主党議員のところに話を持っていくのか?

最初からFBIにもっていけばいいのでは?

なぜ民主党は直前まで出さなかったのか?

(公聴会によると、出すつもりはなかったのに、漏れた、ということらしい。素晴らしいタイミング!)

 

おそらくFBIに持っていけなかったのは、

前の事件すぎて刑事事件としても時効、証拠がなさすぎる、ということで闇に葬られる可能性の方が高かったからでしょう。

この事件を公にし、かつスケジュールに影響を与えるには、指名投票直前のあのタイミングで大騒動を起こすしかなかった、ということなのでしょう。

 

公聴会の結果、更に1週間をかけて、民主党が求めていたFBIの捜査、がなされることとなりました。

民主党の時間稼ぎ戦略は一応成功しています。

本当は11月の中間選挙まで延ばしたいようですが。

 

カバノー氏は最高裁より下の裁判所の判事などの経歴があるので、生涯に6回もFBIのバックグラウンドチェックを受けているそうです。

そこでもそんな疑惑は一切でなかったのです。

公聴会後にいろいろと取り沙汰されている彼のDrinking habit 酒癖 についても、少なくともFBI的に問題になることはなかったようです。

 

みなさんはこのニュース、どう思いますか?

 

被害者である女性を疑うなんて、人でなし!

強姦魔は判事には向かない!

この白人男性優位社会!

 

なんて声が溢れていますが、私個人としては、

こんなのありですか!

という感じです。

 

この女性を信じるか信じないか、ではなく、

「このようなやり方が許されるのか」という問題です。

 

30数年前の高校生のころの出来事、正確な事件の日時もわからない、証拠もない、

パーティが特定できれば、暴行があったということになるのか?

カバノー氏がお酒で記憶を失ったことがあるなら、暴行があったということになるのか?

おそらくFBIも白黒つけられないでしょう。

白と言えば捜査が足りないと言われ、黒と言い切るには物証はない。

グレーです。グレーの結果がわかりきっている捜査です。

というか、黒を足したい人は何が報道されようと勝手に足すし、白と思いたい人は思う、それだけです。

 

決定的な証拠がでることはないでしょうから、おそらくこのまま彼は判事になるのでしょう。

結局残るのは、「彼は強姦魔、強姦魔は判事にはふさわしくない、やはりトランプが揉み消した、やはり白人男性は守られる、女性の声には耳を傾けてもらえない」 という怨嗟、

「民主党とマスコミの事件のねつ造だ。この女性は嘘つきだ。#Me tooによる男性潰しにはうんざりだ。」という憤懣。

 

この事件はアメリカ社会の分断を深くしただけです。

そして、民主党にある程度の時間稼ぎをさせただけです。

 

日本の政治でもよくあることですが、

野党などの対抗勢力が最後に使う手段が、

金と女性問題 を暴くこと。

これは、日本に限らずどこも同じのようです。

 

不倫報道などは結構ですが、

過去の、30年以上も前の、嘘とも真実とも確認のしようのない、

「性的暴行」の事件を持ち出すのは

卑怯だと思います。

倫理的にこれはとってはいけない手段です。

諸刃の剣です。今回は民主党が使いましたが、共和党だって同じことができます。誰だってできます。

 

あらゆる政治的に邪魔な人物はこれによって排除できることになります。

大昔に多少の関連があったと思われる女性を探し出し、証言させればいいのですから。

大学の成績、キャリアの積み重ね、清廉な人柄との評判、そんなものは関係ないのです。

何度もFBIの捜査をクリアしてきたことも無視されるのですから。

 

だから、今回の女性の証言が真実であったとしても、

このやり方が認められてはいけないと思うのです。

 

最近のアメリカのマスコミは、とにかくトランプを潰したい一心で、禁じ手を使いすぎているように思います。

 

性的暴行は「未遂」であっても個人の名誉に大きく関わる問題です。

女性に人権があれば、男性にだってあります。

被害者も、加害者も証明ができないような事柄の報道にはもっと慎重になるべきだと思うのです。

 

女性としては、女性の主張が受け入れられ、社会が動くことは望ましいこととも思えますが、

もう少し責任をもった主張(証拠や政治的動機を疑われないタイミングなど)をしない限り、

女は面倒くさい、と逆に男性と協働できなくなってしまうのではないかと思うのです。

 

男性も女性も気持ちよく働き生活するために、

お互いにある程度の節度を持つ必要があるのではないか、と思った事件でした。

 

来週には決着がついていると思います。

 

FBIの捜査、指名投票、マスコミ報道に注目です。