今回の見所は、織田裕二さん演じる甲斐の怒りでした。
鈴木(中島裕翔)と蟹江(小手伸也)の遺産分割の案件に、自分の置かれている状況を重ね合わせ、今までの余裕のある態度をかなぐり捨てて怒りを爆発させる甲斐の姿は、このドラマで初めて登場人物の発する素の心情を見せてくれたように思います。
今までがあまりにも芝居がかりすぎていたというだけのことかも知れませんが、織田裕二さんのあの演技はやはり称賛されるべき迫真のものだったと思います。やはり彼は余裕を見せて気取っているより、腹の底からの感情を爆発させている演技のほうが、視聴者の心を揺さぶるようです。
三角関係やら、偽弁護士やらで泣いてみせたり怒ってみたりしても、薄っぺらくて共感も同調も出来なかったんですよね。エピソードがつまらないというのも薄っぺらさに一役買ってはいましたが、俳優の力で面白くないエピソードであっても心を揺さぶるシーンというものは出来るのだと改めて感心しました。
案件自体は相変わらず雑でした。
グループ企業の遺産相続争いで、会社の所有権を争うんですか?どういう企業グループなんでしょう。これとこれはお姉ちゃんのでこっちは妹のって分けてしまえるほど小規模な会社なんでしょうか。上場していないんでしょうか。株のやり取りの話なんでしょうか。雑で描写も曖昧で何がなんだかよくわかりません。
案件自体をしっかり作り込んでいないので、嘘くさくて薄っぺらくて寒々しいんです。もちろんドラマですので実際上の完全なリアリティーはなくてもいいんですが、少なくとも作品世界内でのリアリティーは担保してほしいものです。
例えばリーガルハイの法廷シーン。実際の法廷であんな踊るような大仰な演説をする弁護士なんて存在しませんし、やっても無意味です。でもそれはあの作品世界の中では成り立っているので問題ないのです。
この日本版SUITSにはそこらへんの強引なまでの説得力というものが終始欠けている気がします。ややこしそうなところは適当に曖昧にごまかしてスルーしてしまっているのです。それでは物語に入り込めません。
最後の事件は冤罪の殺人事件のようです。甲斐も鈴木も最後の案件の覚悟を持って臨むようなので、詳細をしっかり詰めた説得力のあるエピソードであることを望みます。