「獣になれない私たち」最終回感想 | 感想亭備忘録

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最後は幸せな気持ちになれましたね。

いや、ぶっちゃけると最後の最後だけしか幸せな気持ちになれなかったドラマでした。

 

徹底的に不愉快な気分になるように脚本も演出も練りに練った、そういう印象です。終わりよければすべてよし、とも言いますが全10話のうちの大体8話分不愉快な展開を続けられては、エンターテインメントとしては評価しようがないですね。

 

そして全てが好転したこの最終回ですら、不愉快な展開はありました。

晶(新垣結衣)と恒星(松田龍平)が5TAPで一夜をともにしたことについて話し合う場面です。

再三再四言って来たようにこの二人の会話はすごく魅力的で、その二人があの夜のことについて何をどう語るのか、期待が膨らんだ状態で、晶のかつての同僚で1回中断、京谷の登場でもう一回中断、最終的に呉羽、カイジ夫婦の呼び出しで終了。

嫌がらせかと思いました。

こういうタイミングで割り込んでこられると、同僚も京谷も呉羽もどうだっていいしイライラさせられるだけで興味もわかなくなってしまいます。

 

もちろんその中でも、素敵なシーンはありました。二人の携帯が同時になった時の意地の張り合いはかわいかったですし、獣の中の獣である呉羽の会見を見て、わだかまりが溶けていく二人も良かったと思います。

 

でもとにもかくにもバランスが悪いんですよねぇ。

嫌な気持ち、不愉快な気持ち99に対して、幸せな気持ち1ぐらいの割合なので本当にストレスが溜まりました。

 

「獣」というのはやはり、自分の思うがままに自由に生きることができる人のことでした。周囲への遠慮や気遣い、自分の立場を守るための保身なんかよりも自分の意志のみを大切にする人。そしてその結果起きる全ての事に自分で責任を取ることを自然に構えずにできる人。

そういう意味で呉羽とカイジは紛れもない獣カップルでした。

京谷は以前ネガティブな獣だと書きましたが、結果に対する腰の引け方を見るに獣になりきれないひ弱な獣って感じですね。

朱里は獣なのかと思っていたのですが、逆に晶と同じく獣になれないタイプで、獣になれなすぎてぶっ壊れてしまった人なのかも知れません。

晶と恒星はタイトル通り「獣になれない」二人です。ですが「ちょっとぐらい獣になってもいいじゃないか」と開き直ってほんの少し変化したのかも知れません。

 

終盤、座って待つ恒星に歩いてきた晶がガラス越しに気づくシーンは素敵でした。絵になる。その一言です。

たくさんの9 tailed catsを前にして、軽口を交わす二人は見ていて幸せな気持ちになりました。

かつて鐘の音が鳴り響くのを聞こうとして聞けなかった二人が、ようやく聞くことが出来たラストシーン、手をつなぐ二人には幸せになってほしいと心から思いました。

 

でもここまでフラストレーションの嵐だったドラマの最後なので、鐘が鳴るのか鳴らないのか、わからない終わり方でも良かったかも…ってそれだと炎上しますね(笑)

 

晶と恒星の会話が魅力的なのに余り見せてもらえなかったので、できればカップルになった二人がどんな会話を交わし続けるのか、その後を見てみたいです。1時間無駄話と軽口の応酬だけでもいいぐらいです(笑)

 

ストレスフルでしんどいドラマでしたが、それなりに楽しんでいたのでしょうか。まだ自分の感情が整理されていない気がします。今この時点で1話から見直したいか?と問われると「見ない」と即答ですが(笑)

もう少し時間が経てば変わるのかも知れません。

成功したかどうかはともかく、かなり挑戦的なドラマだったことは間違いないでしょう。