長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ゴールド 金塊の行方』

2020-11-28 | 映画レビュー(こ)

 アッと驚く仰天実話だ。1990年代、170億ドルもの金(きん)の大鉱脈が一晩で消え失せ、株式市場を大混乱に陥れた“Bre-x事件”を基にする本作は、脚本に惚れ込んだマシュー・マコノヒーが自ら製作、主演を務め、ますます強烈な“臭い”で映画を牽引している。

 マコノヒー扮するケニー・ウェルズは3代続いてきた採掘会社の社長だが、経営は壊滅的状況にあり、今や飲み屋をオフィス代わりにしている有様だ。ある日、彼は啓示的な夢に従い地質学者アコスタを訪ねてインドネシアへと渡る。既にその学説がトレンドを過ぎ、落ち目にあったアコスタはケニーを連れて新たな金脈を掘り当てようとする。

 見所は何と言ってもマシュー・マコノヒーの怪演だ。ケニーは口八丁、詐欺師同然のヤマ師であり、80年代という劇中設定からやはり同時代を舞台にした『ウルフ・オブ・ウォールストリート』での大怪演が頭を過る。マコノヒーはアルコールまみれのケニーを創造するにあたって体重を大幅に増やし、ハゲ頭になる肉体改造を披露。次から次へと降りかかる危機にアドレナリンはダダ漏れ、終始脂汗まみれ、血走った眼差しはやや平板な映画を2時間に渡って引きずり回すには十分な狂気だ。オスカー獲得後はいまいちヒット作に乏しいが、彼の演技には全くケチが付いていない。そろそろ新しい代表作が欲しい。

 多くの投資家が実際に見もしない金(きん)に金(かね)を注ぎ込み、ウォール街がコロッと騙されたというエピソードにはコンムービーの側面もあるが、むしろ主眼はウォール街の強欲で杜撰な体質が後にサブプライムショックを招いた事への批判だろう。劇中、ウェルズが“Fool's Gold”と評されるが、そういえばマコノヒーもずばり『フールズ・ゴールド』なんて映画に出ていたなと思い出した。彼とは対照的なエドガー・ラミレス扮するアコスタとのエピソードが1つも2つも足りないばかりに、映画ならではの着地を見せる脚色が生きていないのが惜しまれる。


『ゴールド 金塊の行方』17・米
監督 スティーヴン・ギャガン
出演 マシュー・マコノヒー、エドガー・ラミレス、ブライス・ダラス・ハワード、コリー・ストール、トビー・ケベル、クレイグ・T・ネルソン、ステイシー・キーチ、ブルース・グリーンウッド、ビル・キャンプ

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