リン・ラムジー監督、『少年は残酷な弓を射る』以来5年ぶりの新作はさらに研ぎ澄まされたソリッドな1本だ。ジョナサン・エイムズの小説を原作にあらゆるムダが削ぎ落された語り口は強固な意志を持った作家のそれであり、そんな彼女に相応しい共犯者はホアキン・フェニックス、そして音楽ジョニー・グリーンウッドである。イラク帰還兵の殺し屋ジョーが巨大な陰謀に巻き込まれる、と書けばハードボイルドの定型だが、先達のどの作品とも本作は似ていない。ハンマー1本で繰り広げられるバイオレンスは常に引きで撮られ、直接的な描写は一切なし。ジョーの抱えるトラウマが語られる事もなく、観客に提示されるのはまるで彼の脳裏にこびりついたかのような断片的カットバックだけだ。
そんなジョーを衝き動かすのは死の影だ。他人を殺せても自分は怖くて殺せない。じゃあ、あと何人殺せば死ねるんだ?クライマックスを救いと見るか、破滅と見るかは原題“You were never really here”の噛み締め方次第だろう。コンテンポラリーな1本である。
そんなジョーを衝き動かすのは死の影だ。他人を殺せても自分は怖くて殺せない。じゃあ、あと何人殺せば死ねるんだ?クライマックスを救いと見るか、破滅と見るかは原題“You were never really here”の噛み締め方次第だろう。コンテンポラリーな1本である。
『ビューティフル・デイ』17・英
監督 リン・ラムジー
出演 ホアキン・フェニックス、エカテリーナ・サムソノフ