保守と日傘と夏みかん

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「出入国管理法改正案」が国会で成立した。
これまで「外国人留学生」や「技能実習生」という形で、騙し騙し受け入れてきた「移民」を、これで我が国は正々堂々と受け入れることが可能となったわけだ。
もちろん政府は「これは移民ではない」と説明してはいるが、外国人が数ヵ年、場合によっては無期限に国内で働けるわけだから、彼らを「移民」と呼ぶ他に適当な言葉はないだろう。

ちなみに今回こうして「移民」が法的に認められるようになったのは、偏に「財界」が声高に主張し続けている「人手不足」の解消のためだが、ここであえて繰り返すまでもなく、この法律は、日本に深刻な「禍根」を残すことになる。

まず第一に、移民の受け入れは、日本人の仕事を奪い、賃金の下落をもたらし、結果としてデフレを加速する。しかも、地域社会に混乱をもたらし最悪のケースでは治安の悪化を導く。つまり、移民は主として「保守派」が主張する深刻な混乱を日本にもたらすわけだ。

しかし移民の問題は、こうした問題に留まらない。主として「左派」側が指摘する、外国人の基本的人権の問題も深刻なものとなる。
実際我が国でも既に、超低賃金をはじめとした移民に対する劣悪な労働環境が問題となっている。というよりそもそも、「きつくて汚い仕事の労働者が足らないから、安いカネを払って外国人にやらせよう」という財界の態度そのものが外国人を激しく侮蔑したものだ。
したがってこうした問題は必然的に移民たちの社会的孤立、ひいては犯罪を誘発し、受け入れ国民側からの移民に対する「憎悪」をかき立てる。

さらには、こうした「移民に対する憎悪」は、「移民を憎悪する人々に対する、リベラルな国民たち側からの憎悪」、つまり「この極右め!」という憎悪をかき立てる。
そしてさらには、移民を憎悪する人々は、そうした進歩派を気取るリベラル派に対しても、「この偽善者め!」という憎悪を差し向けるようになる。

つまり、社会的に統合されていない外国人を大量に受け入れれば、社会的混乱をもたらすのはもちろんのこと、それを起点とした「憎悪の連鎖」をもたらし、国民を分断させるに至るわけだ。
英国のEU離脱やトランプ勝利に象徴される各国における世界的混乱も、「移民」によってもたらされたものだし、歴史を振り返ってもアメリカの南北戦争もまた「黒人という移民」によってもたらされた深刻な分断だった。歴史は繰り返しているのだ。

にもかかわらず今回、目先のビジネス的な理由だけで、浅はかにも我が国は移民の大量受け入れを決定してしまった。
一日でも早くこの法律を改定し、移民の受け入れを制限しない限り、我が国はもう二度と、元の「和」を尊ぶ国家に戻ることができなくなってしまうわけだが―そんな法律改定の動きが俄かに始められそうな気配など、我が国には微塵も見られない。

つまり我が国は、今まさに、ルビコン川を渡ってしまったのである。
心底、遺憾である。





『表現者criterion 平成31年1月号』 鳥兜-巻頭コラム