リチャード・ジュエル | ヤンジージャンプ・フェスティバル

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…遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん…
  

去年観た映画の感想もまだ何作か書けてないのですが、今回は数週間前に観たこちらの感想文。

この日は『パラサイト』『ラストレター(→感想はコチラ)』、そして本作と映画漬けな1日だったのでした。

 

 

【あらすじ】

「グラン・トリノ」「運び屋」の巨匠クリント・イーストウッド監督が、1996年のアトランタ五輪で大会期間中に起きた爆弾テロをめぐる実話を映画化したサスペンス・ドラマ。警備員として多くの命を救ったヒーローから一転、容疑者とされた男リチャード・ジュエルの過酷な運命を、捜査機関とマスメディアの暴走によって冤罪が生み出されていく恐怖とともに描き出す。主演は「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のポール・ウォルター・ハウザー、共演にサム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、オリヴィア・ワイルド、ジョン・ハム。
 1996年、オリンピックが開催中のアトランタ。高齢の母と2人暮らしの不器用で実直な男リチャード・ジュエル。警備員をしていた彼は、多くの人でにぎわうイベント会場で不審なリュックを発見し、中身の爆発物に気づいたことで大惨事を未然に防いだ。マスコミはこぞって彼を英雄として報道するも、捜査に当たるFBIは次第に第一発見者のリチャードに疑いの目を向け始める。その動きを地元メディアが実名で報道したのをきっかけにマスコミ報道は過熱し、リチャードは全国民から激しいバッシングを受けるようになっていく。そんな窮地に陥ったリチャードを、息子の無実を信じる母親と弁護士のワトソンだけが懸命に支えていくのだったが…。

allcineme onlineより)

 

これが実話ベースの作品だとは・・・・。

このところアメリカの闇を描き続けている、イーストウッド監督。

今作もまた恐ろしい問題を我々に突き付けてきました。

 

本作の主人公は高齢の母親と2人暮らしの「クソ」が付くほどに真面目で実直な男。

アトランタオリンピック関連イベントの警備員をしていた彼は、会場内に不審なバッグがあることを発見。

持ち前の正義感と「基本に忠実」な仕事ぶりにより、その荷物が爆弾であることを見破り、被害を最小限に食い止めることに成功!

メディアは彼を英雄として褒めたたえるが、FBIは「英雄願望のある法執行者志願の男」が犯人・・・というプロファイリングにより、主人公:リチャードを第一容疑者に!

それがマスコミにリークされたとたん、リチャードは世間から大バッシングを受けるのでした・・・というのがこの映画のおはなし。

 

オリンピックという一大イベントで発生したテロ事件を起こされたことを侮辱だと感じて、何としてでも犯人を逮捕しようと躍起になるあまり、法律も道理も捨ててリチャードを追い詰めるFBIの恐ろしさ。

そして、ライバルよりも先にスクープをゲットしようとするあまり、倫理観も正義感も捨てて、リチャードを追い詰めるマスコミの恐ろしさ。

 

そんな、現代アメリカの問題点を描き出す社会派サスペンスでありながらも、普通に映画としてめちゃくちゃ面白いというのは、さすがのクリント・イーストウッド監督作品。

「社会の闇を描き出す、実話を基にした社会派ドラマ」とか言われると、どうしても身構えてしまいそうなところですが、こういう語り口で語られると、そのテーマが自然に心の中に入ってくるよなぁといったところ。

 

今年で90歳を迎えるイーストウッド監督。

よくもまぁ、毎年毎年すごい作品ばかり撮り続けられるものだ・・・と感服してしまいました。

 

それにしても、アメリカという国は恐ろしい国だなぁ・・・と思う一方で、もしこれが日本で起こっていたとしても、きっと同じような事態になることが容易に想像できそうなあたりが恐ろしいし、もしそうなった時に自分が公平な目で容疑者のことを見ることができるか?と問われると、それも自信がない部分もあったり・・・・。

 

折しもオリンピック・イヤーであるニッポン。

今作を通して、我が国と自分自身を、改めて見つめ直すことのできた、そんな作品でした。

(2020年2月10日 109シネマズ湘南にて鑑賞)