【漫画メモ】藤子・F・不二雄「カンビュセスの籤」~想像力の行方

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以前テレビで藤子F不二雄についてやっていたのを見た。

そのときはむぺむがこんなことを言った。

「(あえて分類するなら)手塚は画家、藤子Fは小説家」

 

わかる話だ。

手塚ももちろんストーリーテラーとしては化け物じみているが、彼の場合は絵へのこだわりが凄い。

藤子Fはどうしても絵が一段落ち、だが、そのショートショートとでも呼べるSF作品の数々は目を見張るものがある。

星新一に共通するモノを感じる(←大好き)。

 

 

藤子Fといえば当然その代名詞ともいえるものはドラえもんだが、わたしは個人的に彼の作品にはそれほど興味がなかった、「カンビュセスの籤」を読むまでは。

 

藤子不二雄SF全短篇 (第1巻) カンビュセスの籖

 

件の番組でもやっていたが、ドラを描きはじめる前に苦しんでいた頃、オトナ向けの雑誌にSF短編を描いたそうな。

それが「ミノタウロスの皿」で、「カンビュセス~」に収録されているのを読んだ時のことをいまでも覚えている。

「ミノタウロス~」は人間が家畜として飼われて、おいしく食べられることを喜びに感じる様子を描いた作品。

絵が絵だけに、乾いた凄惨さを伴っていた。

 

 

表題作「カンビュセス~」のほかも、そういった視点で描かれたむき出しの空想の怖さとおもしろさがぎゅうぎゅうに詰められた一冊だった。

わたしの藤子Fの評価は一変した。いまでもときどき読み返す。

 

 

さて、件の「ミノタウロス~」と最近流行の「進撃の巨人」に共通する部分がある。

 

進撃の巨人(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

休載続きだがひっそり人気を保っている「HUNTER×HUNTER」にも、「蟻編」のとき同様の記述があった。

 

HUNTER×HUNTER カラー版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

それは「人間が食われるものである」という世界観と絵。

 

 

「ミノタウロス~」は大人向けだったからまだしも、「進撃~」と「HUNTER~」に関しては思いっきりど真ん中の少年漫画だ。

そんな衝撃的な絵面だいじょうぶなのか?と余計なお世話ながら思ってしまう。

 

 

わたしはなんでも好き嫌いせず読むが、たとえば「進撃~」なんかは食事中にはあんまり読みたくない。

ヒトを食ってるシーンを見ながら豚とか牛を食うってのもどこまで悪趣味なのって話で。生理的に嫌だ。

 

 

怖い漫画を読めば夢にも見るし、暮らしのあちこちで漫画で見たシーンがフラッシュバックすることも多い。

よく言えば想像力豊か、悪く言えば影響受けすぎ、なのかもしれないが。

 

 

漫画だから、と思って割り切ってるせいなのか、単に耐性がついて現実と創作の線引きが上手になったのか定かでないが、そういった表現を子供たちが受け容れ、大人たちもなんとも思わない、という現状がわたしにはいささか不思議でならない。

 

R15指定とかの存在を見れば多少は気にしているように見えるが、実際のところボーダーラインは静かに確実に押し下げられ、そして多くの人はそれに気づいていない、気がする。

 

無感覚は想像力の欠如。

 

刺身を見て魚の痛みを想像するほど繊細である必要はないが、自分の痛み以外すべてのことに想像力を発揮することができない、やり方がわからない、人はたぶん増えている。

 

 

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