官能小説(だと思いながら書いているモノ)の続きです。

タイトル…どうしたもんだべ

 

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そのやり方は、事細かに記されていた。

彼はとりあえずそこに書かれている通りに愚直に実践してみることにした。

呼吸を整え、リラックスできるような位置に座り、瞑想するような感じで目をつぶる。

部屋は全体的に薄暗くして、音の刺激がないようにする。

書かれていることを素直に実践してみようと始めたその瞑想。

そうして10分…15分ほど経過した頃。

初めてなのにもかかわらず。目をつぶっているのに、瞼の裏側に映像が見えだした。

最初は暗がりの中に1点の光がぼんやりと見えた。時間がたつにつれ、ぼんやりした光が明確に明るい個所と暗い個所に、そしてそれが形を変え徐々に瞼の裏で大きくなってく。

それから人の顔や風景がランダムに、それこそパッパッと移り変わる――ザッピングしているテレビの映像のような「画」が見え始めた。

そしてまたそれを黙って眺めていると、自分の通っている学校の、しかも自分のクラスの風景が映し出された。

それはまだストップモーションの域を出なかった、いうなれば“写真を撮ってその印画紙を黙って見ているよう”な「画」であった。

『…あれ?なんだこれ?』

自分はどこからその風景を見ているのだろうか。

徐々にではあるが、静止画から動画に変化しだした。その動画も切れ切れの前後脈絡のない映像であったが。

少しして時系列的な映像に変わってきた。しかしまだ全体にぼやけている。

親たちが自分のクラスの後ろに立っているのがわかる。

彼の母親が教壇から見て右奥に立っている。

隣のおばさんと何やら話している。ああ、あのおばさんは近所の幼馴染のお母さんだ。

急に画面が変わり、先日転校してきた鈴村というやつが机の下で輪ゴムをいじっているのが見えた。机の下すぐのところに目線がある。

ここからは斜め上からの映像だ。

川谷がマンガ本を読んでいる。

教科書を立てて別の勉強しているのは藤田だ。あいつは近所の中高一貫の試験を受けるらしい。

そんなことを考えながらその映像を見ていると、いきなり授業が始まっていた。

アイツ、誰かな。先生に当てられ黒板の前に立って答えを書くも間違っていたらしく、クラスのみんなから笑われて引き下がっていく。

藤田の顔が眼前に映る。驚いた顔のようだ。

田崎が怒っている。なんであんなに怒り顔なんだろう。

最初の頃よりもかなり鮮明に映っている。しかし、ダビングを繰り返したビデオのように粗っぽくそしてところどころノイズが混じるような感じに見えていた。

が。

そんなことを考えてる余裕は義男に、ない。

『いやちょっと待て、何だこの映像は』

目をつぶった瞼の裏に展開するサイレント映像。

そう、音は聞こえない。会話も聞こえない。あるのはただ現在起きているような生々しくそして飛び飛びに映し出された映像。

彼は徐々に恐怖を感じ「お」と声を出して目を見開いてしまった。

ハッと思った時にはもう遅い。

その映像は目の前から消えてしまっていた。

『え?なんだこれは?』

もう一度本に目を移す。ページをめくる。

頭はぼやけている。目もなんだかぼやけている。

太字でこう書かれていた。

「みえましたか?」

「正しい呼吸法と正しい姿勢、そして静かな環境を保つことにより、あなたは見えないモノが見えるようになるのです」

いやちょっと待て。

彼は考えた。

『僕が期待していたのは透視だったはず。透視ができていないじゃないか。だってほら、たとえばコインロッカーの中を開けずに見えたりとか、そんなことが出来ると思っていたのに』

今の映像は一体なんだったんだろうか。

考えても仕方ない。

今まさに眼前で起きたようなあの映像を記憶から消えないうちにメモしておこう。

義男はそう思い、勉強机に開きっぱなしになっていたノートに、今見た映像のことを記憶の限り殴り書きし始めた。

 

義男はその次の日も同じように瞑想にふけり、そして同じ映像を「見た」。

昨日の映像とほぼ同じであった。

昨日見た映像よりも鮮明にそして時系列的に見えるようにはなっていたが。

昨日と違う個所と言えば、母親の服装がワンピースから茶色のズボンになった程度のことくらいか。

母親の隣に立つのは幼馴染の五十嵐の母親という事がわかった。

映像は続く。そして、昨日怖くなって目を開けてしまったが、今日はその先が知りたくてそのまま目をつぶって事の成り行きを見ていようとしていたその矢先。

「義男ぉ、ごはんよ」

階下から母親の声がする。かなり大音量だ。

ハッと思い目を開けてしまう。

『あ、しまった』

また同じところで映像が終わってしまった。

…しかし、よく考えてみろ。

2日続けて、細かな違いはあるが同じ映像が瞼の裏に映る。

これはなんだ?

「いまいくー」

階下の母親に大声で叫んでから義男は、今見た映像の詳細を、急ぎ同じようにノートに書き殴った。

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至って普通の文章になってきているように思われ。

 

・・・

 

やっぱ官能小説は自分には無理なのかなぁ、などと殊勝なことを考えつつも。

まーがんばんべー

 

テーマが「ショートストーリー」となってますが。

これ以上カテゴリーを増やしたくない心理が働いて、こうなったまでです。