089462 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

株式会社SEES.ii

株式会社SEES.ii

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2019.09.14
XML
ss一覧   短編01   短編02   ​短編03​   ​短編04
        《D》については短編の02と03を参照。番外としては​こちらから。


―――――

 10月1日――。

 愛知県名古屋市名城公園。
 名古屋城本丸御殿の近くのベンチに座りながら《ユニモール》の食品街コーナーの
チラシを眺めていると、正面から声をかけられた。
「こんにちは」僕は言う。
「田中さん?」明るく陽気な声で言ってみると、男は眉をピクリと動かした。
「……はい……スズキ、さん?」
「いやぁ、待ってましたよ」そう言って僕は笑う。
 ベンチの隣に座るようジェスチャーしてやる。眺めていたチラシを4つに折り畳み、
素早くスーツの内ポケットに入れる。本当はまだ眺めていたかったのだが、これから
想定外のことが起こるのかもしれなかったので、しかたない。
 田中が隣に座る。加齢臭と整髪料の不快な臭いが鼻腔に流れ込む。
「……お前が、スズキか?」
 人を見下すような口調で田中が言う。「スズキイチロー……どう考えても偽名……
だよな?」
『田中陽次』はスポーツマンのようにがっしりとした体格をしている。廉価なものだと
一目でわかるスーツに、ジムで鍛えたのだろう筋肉の隆起が見える。背は高いが、靴は
量販店の安物だ。既婚。45歳だということだが、それよりもずっと若く見える。頭髪
はキレイに整えられ、髭はない。瞬間、僕はこの男の性格を想像する。女にモテたいの
だろうけど、必要以上にカネは使いたくない。目立ちたがりなのだけど、遊び人のよう
には見られたくない……そんなところだろう。
「……僕のことなんてどうでもいいじゃあないですか」僕は微笑む。田中は笑わない。

「カネだ」
 僕の目的を田中が言う。「100万ある。それ持って消えろ。……それで、"アレ"は
無かったことになるんだろ?」
 田中は銀行の封筒を僕に手渡しながら僕を睨んでいる。微かに煙草の匂いがする。僕
は田中の"職業"と"悪行"を思い出す。田中が名古屋市役所に勤める公務員だということ。
田中が同じ職場の若い部下と不倫関係にあること。名古屋市役所の資料室や会議室や駐
車場やトイレや応接室や市議会議員の公用車であるセンチュリーの車内で不倫相手と"と
ある行為"をしていたことなどを思い出す。
 少ないな。そう思い至り、携帯電話を操作する。
 名城公園には光が満ちている。城の天守閣の瓦が眩しく輝いている。公園では修学旅行
と思われる中学生たちがはしゃぎ回っている。

 携帯電話を操作しながら隣に座る田中の顔を見る。「あなたに要求した金額は500万
でしたよね?」と、きく。
「……そんなカネはない」僕を睨みながら田中が続ける。「警察に突き出されないだけで
もマシだと思え」そう言って鼻を鳴らした。

 ……まいったなあ。全然わかってない。頭が悪すぎる。この程度のカネなら惜しみなく
出せると踏んでいたのに、めんどくさいな、と思いながら、僕は後頭部を指でかく。僕の
そんな動作にも田中はビクッとして身構える。

「……このカネはくれてやるから、明日からはマジメに働けよ」僕とは目を合わせずに
田中が言う。「まだ若そうだし……アンタもこんな……脅迫なんてヤメろよ」
「……そうですねえ。時間ももったいないですし、会社の休憩時間も残り少ないですし、
何よりも……お目当てのアレが売り切れちゃうかもしれないし……」
 そう言って僕は笑う。操作を終えた携帯電話をポケットに入れ、唇を尖らせる目付きの
悪い中年公務員を見つめる。

「……カネは置いていく。次に連絡して来たら、警察に通報する。……じゃあな」
 田中が封筒をベンチに置き、立ち上がろうとする。
「撮影した動画の一部をあなたの母親宛てに送信しました」
 僕が告げた瞬間――田中の時間が一瞬止まった。
「何だとっ? お前、約束が違うぞっ!」
 田中が怒鳴り僕を睨む。僕はニコニコと笑う。

「ケチくさいこと言わないでくださいよ。約束? 僕は何も約束なんてしちゃいません」
「カネは無いって言ってんだろっ!」
 男がまた怒鳴る。名古屋城を見学する学生たちがこちらに目をやる。
「……じゃあ、コレは?」
 僕は懐に隠し持っていた紙の束をベンチの下にぶちまける。田中の目が丸くなる。
 不倫相手との逢瀬の写真――だけではない。
 カラ残業による不適正給与の資料。白紙伝票による不正支出、及び自分名義の口座の
入金記録。経理の水増しによる裏金工作。経理上の不正操作によるプール金の横領。田中
本人のデスクに残っていた通帳の写真。自宅の金庫にしまっていたハズの現金の束の写真。
それらをぶちまける。田中が短い悲鳴を上げる。

「……どれも少額ですが、どれも立派な横領行為ですねえ。正直、このカネを何に使って
いるのかまではわかりませんでしたが……」
 僕は田中を見る。田中は足元にぶちまけられた写真や紙を必死になって拾い集めている。
僕は微笑む。田中は「ひいっ……ひいっ……」と短い悲鳴を繰り返す。
「キャッシュカードと通帳を預かります。そんなに心配しなくても、500万以上は貰い
ませんから……あなたは安心して、明日からの仕事――がんばってくださいね」

 見ると田中は嗚咽を漏らして跪き、わけのわからない言葉で呻いていた。
「……ああ……ああ……お許しください……フィラーハ様……聖女様……」
「……?」
 わけのわからない呻き声を聞きながら、僕は――川澄奈央人は、目の前の男の鞄から
カードと通帳を半ば強引にひっぱり出すと、ベンチから腰を上げた。
「……《岩手県三陸のウニ弁当》、まだ残っているとイイけど……楽しみだなあ」
 ユニモールの『駅弁フェア』に思いを馳せつつ、川澄は歩く。『スズキイチロー』とい
う偽名を使ったことなど、もはや微塵も思い返すことはしなかった。


 田中陽次は未だベンチにうなだれて座り込み、何かをブツブツと呟き続けている……。
 
―――――

 私が教室に入る。すると――それまでクラスメートたちの話し声や笑い声で賑やかだった
教室が、一瞬にして静まり返る。
 ――沈黙。
 それから視線。その後に――囁き声。
 私は俯いたまま、ランドセルを肩から外す。

 いつの頃からだろうか、私は覚えていない。たぶん、母が吹聴したホラ話がきっかけだと
は思う。そうに違いない。そうに違いなかった。

『私は処女受胎によって娘を生んだ』
 どうしてそんな話をしたのか、楢本ヒカルにはわからなかった。

 何となく……本当に何となく理解できたのは、ヒカルが中学生になった時だった。
 ヒカル、という名前は母が付けた。『フィラーハ様は光の化身であり、絶対神である』
という"教え"からの由来だった。
 フィラーハ様、というものがどんな存在であるのかを理解できたのは、ヒカルが15歳の
誕生日を迎えた日だった。
 母は先祖代々信仰していた密教のひとつ《F》の司祭であり、ヒカルを後継者として育て
た、と説明した。……けれど、当時の《F》の信徒や規模やシンボルも、何もかも、ヒカル
は知らない。教えてもらう前に、母は他界してしまった。自宅の押入れの奥には先祖代々が
守り、継承を続けた教本や資料があるような気もする。だけどもう、それほど興味もない。
今となってはもう、尋ねることもできない。

 処女受胎の話が母の嘘だと知ったのは、ヒカルが17歳の時だった。ガンを患った母が
病床でうわ言を呟いたのだ。

『……ああっ、トシオさん……トシオさん……愛してます……抱いて、私を、もっと……』
 
 母は私を愛してくれた、とは思う。シングルマザーで娘を育てるということは、並大抵の
努力と苦労が必要なくらいはわかる。

 私の記憶の中で、《F》の信徒は誰一人としていない。母の呟いた《トシオ》なる男の
姿も記憶にはなかった。そう。私はひとりだった。

 母が死に、父はおらず、頼りになる大人は誰もいなかった。学校でも、アルバイト先の
工場でも、わたしは常にひとりだった。ひとりきりだった。

 既に《F》のことを忘れかけていた、23歳の時――アルバイトに出勤する前、よく観て
いたテレビ番組があった。日本の皇室の方々の執務や活動の記録を放送する、『皇室日記』
という番組だ。
 テレビの中の皇族の方々は輝いていて、美しくて、知的で、上品で――当時はすごく、
ものすごく……羨ましいと思った。理由はわかりきっている。私はひとりきりだったから。

 誰かを好きになることもなかった。誰からも『好き』だと言ってもらうこともなかった。
食事に誘われることもなかった。ただの一度もなかった。
 私は誰からも必要とされなかった。けれど、私も誰かを必要としなかった。理由なんて
なかった。あったとしても、私はそれを孤独だとは思わなかった。

《F》のことなど忘却の彼方に消えていた25歳の頃も、私は『皇室日記』を観ていた。
成人式を迎える『伏見宮京子』様の振り袖姿を見つめると――不意に、唐突に、ヒカルの
胸はときめいた。キレイだな、素敵だな、と思った。けれど、それだけだった。
 他人の生活を見て羨ましいとは感じても、怒りや憎しみは湧かなかった。芸能人やアイ
ドルが遊んだり笑ったりした姿を見ても、妬みや嫉みは湧いてこなかった。

 わかっていたことではあったけど、私の生活は苦しかった。工場でのアルバイトは時給
も上がらないし、保険や年金や住民税を払い続けるのは苦しかった。それでも、ヒカルは
薄給のまま働き続けた。そう。お金の苦労を除けば、日々の生活は穏やかだった。

 何年かは何事もなく過ぎた。
 給料は相変わらず薄給のままだが、誰かに縛られることなく生活はできていたし、少ない
が貯蓄もできていた。いつかは国家資格を取得してきちんとした職に就職しようかとも考えて
いた。ひとりきりだ。けれど、生活は穏やかだった。このまま人生がずっと過ぎると思って
いた。そうであるべきだと信じていた。

 けれど――そんな平穏にも終わりがきた。勤めていた工場の閉鎖が決定したのだ。しかも
、私だけが、次の職場を紹介してももらえなかったのだ。
 貯蓄を切り崩しての生活を始める現実に――私は狼狽し、そして――母のことを思い出し
かけた。理由なんてわからない。あったとしたら……それが孤独というものなのだろう、
そんなことを思った……。


 就職先も決まらず、貯蓄の底が見え始めた3年前の春――私はキュウキュウと鳴くお腹
を抱えて眠りについた。瞼を閉じ、母の姿を思い浮かべようとした。そんな思いに心を巡ら
せるのは初めてのことだった。けれど――……

「絶対神、フィラーハ様……私に御身の加護を……」

 口に出して呟いたのは、"母"ではなく、"神の名"だった。

 そう。
 その日――私は"聖女"になった。

―――――

   『聖女の《F》と姫君の《D》!』 bに続きます。













久々のオススメはもちろん? ヨルシカ様……。

 ヨルシカ……。
 動画で惚れてそのままポチ買い。アルバム数こそ少ないけれど、どれも繊細かつ丁寧
かつ大胆な歌詞。メロディはややマンネリ、激しい高低差はないけれど、心に響く。



 ちなみにヨルシカのプロデューサーはn-buna(ナブナ)氏。生放送で生声を初めて
聞いたのだが……ノーコメントw



 ……全部購入済。


 雑記

 お久しぶりです。seesです。
 いやはや……本当にw 今さらだけど仕事が……仕事が……。
 まぁいつものテンプレ言い訳ですが、SNSすらほとんど触れることすらできなかった
現状――とてもぢゃないけど趣味の時間がほとんど取れなくて、数少ないseesのネット
友達やもっと少ないファンの方には本当に申し訳ないというか、弁解というか、謝罪と
いうか――すままへん<(_ _)>

 今話はリハビリの意味での書きなぐりです。ストーリーは序盤ということもあり平坦
かつわかりやすい構成。(とてもじゃないがSSはムリだ。ネタはあるけど作りきれない)
 設定が出来上がっている《D》で適当話作りつつ、元の筆力が取り戻せれば……いい
かな??

 プライベートでは少し出世できたけど(回りの社員が辞めたり、ヤラかした上司が
降格したり……seesのキャパをオーバー)、給料はあんまり上がらん(# ゚Д゚)
 救いは会社の決算報告でまずまずの結果。ボーナスの微増と慰安旅行の復活、有給
の取得or定期的な連休……くらいか?
 母さん、seesは松阪で元気に生きてます。また名古屋に帰省します。近いけどww

 さて――本編ですが、いつもの?厨二話ですw
 主人公は相変わらずの岩渕氏。
 変態役の川澄氏発端?のとある団体との因縁話です。京子様と岩渕と《D》が巻き
込まれてさぁ大変――。みたいな話。特に凄惨な場面はなし。が、極めて社会的な
背景と描写は使います。不快な方は見ないでね。
 今回は本当に本当に久しぶりの作成なので、ヘタクソです。seesの精神も不安定気味
なので、ぶっちゃけ――「キツイ、キビシイ、キモイ、そんなコメント」はやめてww

 seesに関しての情報はもっぱら​Twitter​を利用させてもらってますので、そちらでの
フォローもよろしくです。リプくれると嬉しいっすね。もちろんブログ内容での誹謗中傷、
辛辣なコメントも大大大歓迎で~す。リクエスト相談、ss無償提供、小説制作の雑談、いつ
でも何でも気軽に話しかけてくださいっス~。

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いたし
ます。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。
 seesより、愛を込めて💓



 久方ぶりのショートショート劇場 『受付嬢の悩み』

 受付嬢     「seesさん……ちょっと相談が……」
 sees    「なんやねん? ワシ忙しいねん」
 受付嬢     「……さっき支部長と面会していたB様のことですが……」
        ワシの都合は無視かい。このビッチっ!
 sees    「……B?(不動産関係のコンサル男。30? フツメン。色黒。男優ぽい)」
 受付嬢   「……実は、さっきB様にラインのアドレスの入ったメモを渡されて……」
 sees    「……ナンパか?」
 受付嬢   「はい。今度食事でも……と」
 sees    「その気がねえなら捨てちまえ。無視しろ」((`・ω・´)キリッ
 受付嬢   「無下な扱いをしてよろしいのですか? 社の取引先では?」
 sees    「丁寧な返事なんぞは必要ねえ。パワーバランス的にもこっちが上やで」
 受付嬢   「――了解で~す」
        受付嬢はメモをゴミ箱に捨て、まるで何事もなかったかのように微笑む。
        まぁ……タイプの男でもなかったんやろーが。ふぅ…めんどくせいぜw
        解決解決。おわり。めでたしめでたし。


 受付嬢   「――あっ、そういえば~朝に借りていたボールペン、お返ししますね」
        ……確かに、朝、デスクに嬢が来て『ペン貸して』と言われ、貸した。
        何でも《青色》のボールペンを紛失したとかで(黒や赤は常備してい
        る)、seesの4色ボールペンを……まさか、いや、まさか、な('◇')
 sees    「ちなみに……Bの野郎に、ワシのボールペン、使わせて……ないよな?」
 受付嬢   「?? いいえ――メモ書き(アドレス)するのに、使っていただきました」
 sees    「―――――っっ!!」

        け……汚された。ワシの……お気に入りの……400円もした……
        コクヨの4色が……汚された。ナンパカス野郎の手で……ワシの、
        大事な何かが……股間触って手も洗わないような(ド偏見)、ゲス
        野郎の手で……ああ……ああ、畜生っ!!! クソがぁぁぁっ!!!

 
       
                                    了💢





こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!! できれば感想も……。

人気ブログランキング        

 

 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2019.12.29 01:36:31
コメント(5) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.